20余年間の広告費推移をグラフ化してみる(経済産業省データ・2011年版)(中)…ネット以外動向概況編

2012/02/15 06:45

新聞先の記事【新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる(月次・-2011年12月版)】において、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査のを元に、新聞とインターネットの広告費動向をグラフ化した。この時利用した長期データは、他にも多項目の広告費推移が盛り込まれている。今回はこれを元に、過去に掲載した記事(媒体別広告費の推移)(新聞やテレビ、雑誌やラジオなどの広告費の推移)のうち後者についてデータの更新を行うことにする。

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今件グラフは基本的に昨年の記事のものに2011年分を追加したもの。ただし2010年以前でも一部データの修正が行われているため、その修正を反映させたものとなる。まずは特に動きが激しい「紙媒体」、つまり新聞と雑誌について絶対金額をグラフ化する。

↑ 新聞と雑誌の広告費推移(億円)(1988年-2011年)
↑ 新聞と雑誌の広告費推移(億円)(1988年-2011年)

ここ数年右肩下がりなのは両紙共同じだが、特に新聞の下げは今世紀に入ってから生じているもので(【新聞の推定購読者数の推移をグラフ化してみる】などの話とも一致する)、インターネット云々以前からのものであったことが分かる。また直近では、2009年以降は下落具合が緩やかになっているのも確認できる。

今件をもう少し分かりやすくするため、データ掲載元で残っている一番古い年数の1988年の広告費を基準値の「1.0」とし、その後各媒体がどのような変遷を遂げたのかを計算したのが次のグラフ。例えば1988年に1000億円だったのが、1995年に2000億円にまで成長していれば、1995年の値は 2.0(2000÷1000=2.0)となる。これなら各媒体(新聞と雑誌以外に、テレビ、ラジオ、4マスとインターネット以外を合わせた「プロモーションメディア広告など」)の広告費市場の大きさの違いを気にせずに、個々の市場毎の変遷が把握可能となる。

↑ 1988年を1.0とした時の主要媒体の広告費推移(1988年-2011年)
↑ 1988年を1.0とした時の主要媒体の広告費推移(1988年-2011年)

「プロモーションメディア広告」は2006年以降「インターネット広告」が引かれていることを考慮してほしい。その上で考察すると、

・新聞はラジオと共に1990年中盤から、他メディアの成長過程に乗り遅れている。その後も両者の下げ方は非常に似通っている。
・雑誌やテレビはプロモーションメディアと共に前世紀末までは同じような成長過程を見せている。
・2000年-2001年、今世紀に入ってから「雑誌とテレビ」と「プロモーションメディア」との間には差ができるようになった。前者は成長を止め、なだらかな下落、後者は成長を続ける。
・2005年以降雑誌とテレビは明らかに減少カーブを描くようになる。しかしプロモーションメディアは景気全体が後退する2007年までは成長を続ける。
・2007年以降は景気後退のあおりを受け、どのメディアも下落。特に雑誌は下げ幅で先行する新聞やラジオに追いつくほどの勢いで急降下。
・2010-2011年の最新データでは、持ち直しの気配を見せるテレビやプロモーションメディアと、減少の末に低迷を続ける新聞、雑誌、ラジオとの間で動きが二分される状況がはっきりと認識できる(緑の丸部分)。

などの傾向が見て取れる。特に注目したいのは2つのターニングポイント。つまり「2000年-2001年」(赤丸部分)と「2004年-2005年」(青丸部分)。後者は、ライバルたるインターネット広告の登場が影響し、テレビや雑誌、特に好景気時に連動して上昇するはずのテレビが落ちたのは明らか(今データでインターネット広告が独自項目化した、つまり独立項目化するほどの影響力を持ったのも2006年からであることをお忘れなきように)。

携帯電話を掲げるもう一つ気になるのは前者「2000年-2001年」(赤丸部分)。景気後退期に突入するあたりで広告費が減るのは理解できるが、「テレビ」と「雑誌」の差異の理由づけには至らない。色々と理由は想定できるが、そのひとつが【携帯電話の普及率推移をグラフ化してみる(2011年版)】で説明している携帯電話(インターネット機能云々は抜きにした)の普及率。ちょうどこの時期に携帯電話の普及率が50%を超え、「二人に一人がケータイ保有」状態となっている。

「テレビは携帯電話との『ながら利用』ができるが、雑誌は難しい」「携帯電話が普及しはじめたから雑誌への注力時間、費用投入が減り、結果として購入者減少、媒体力低下、広告費の削減につながった」……と考えるのは、このデータのみでは確定するまでに至らない。しかし要因の一つとして携帯電話が何らかの影響を与えたとする仮説は、検討するに値する話ではある。



一人のひとに与えられた一日は24時間しかなく、可処分所得は変化しないどころか減退する傾向にある。携帯電話やインターネットに時間・お金を割くようになることで、それより優先順位が低いものへの注力が減らされるのは当たり前の話。広告費動向の順番としては「元々新聞やラジオは成長を止めていたが携帯電話・インターネットの普及で下落に加速がついた」「テレビや雑誌は携帯電話の普及で成長を止め、インターネットの普及で減退をはじめるようになった」の順と見てよいだろう。もっとも直近では、ややテレビに対する注力が増加しているようでもあるが、これは世代間の人口構成比も多分に影響していると考えられる。【テレビの視聴時間、若年層で減少中、でもその分高齢者が増えて…】の通り、高齢者一人あたりのテレビ視聴時間は伸び続けており、しかも高齢者数自身も増加中。

これらはあくまでも「広告費の売上」ベースでの話。例えば新聞なら新聞自身の売上などのように、他にも収益をあげる手段はいくらでも存在する。とはいえ、広告費をかけてまで広告を載せたい・打ちたいメディアには、それなりの集客力・媒体力がある。必然的に媒体そのもののセールスなどとも深い関係が考えられる。今回の「広告費推移」も、各個の媒体の勢いの動向と大きな差異はないものと見て良いだろう。

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