「ファミ通DS+Wii」で年末定番タイトル特需発生…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2011年10月-12月)

2012/02/12 06:50

【社団法人日本雑誌協会】は2012年2月9日、2011年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さの観点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付き。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたもので、雑誌社側の公称(自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる場合もあるが、その際は個別で説明する。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2011年の10-12月期とその直前期2011年7-9月期における印刷実績を見ることにする。

2011年の7-9月期と2011年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2011年の7-9月期と2011年10-12月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回もっとも大きな変移としては、脱落誌が4誌にも及んでしまったことが挙げられる。具体的には「マック・ピープル」「アスキー・ドット・ピーシー」「電撃PlayStation」「週刊アスキー」で、いずれもアスキー・メディアワークスからの発行のもの。すべてが今もなお通常通り刊行されていることから、会社単位での情報公開に関する方針変更があったものと考えられる。公開義務は無いとはいえ、このような動きは少々残念と表せざるを得ない。

それ以外で目立つものといえば、やはり「Vジャンプがずば抜けた売上」「アニメ系ではニュータイプがトップ」の二つ。また、前期比グラフからも「Vジャンプ」と共に「ファミ通DS+Wii」が大きく躍進した状況が確認できる。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年10-12月期、前期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年10-12月期、前期比)

部数で長らく漸減、前期比グラフでマイナス域の常連だった「ファミ通DS+Wii」が、ここぞとばかりに大きく飛躍している。これは【ニンテンドー3DS本体の販売動向をグラフ化してみる(2011年度第3四半期決算短信反映版)】や毎週の「ゲームランキング」記事でも解説しているように、年末年始の「任天堂効果」によるところが大きい。この時期はゲーム業界では「定番アイテム」を求める動きが強く、今回はその対象にニンテンドー3DSとそのソフト群が挙げられ、当然のごとく関連誌の「ファミ通DS+Wii」も需要を大きく伸ばした次第(ちなみに去年の同時期も似たような「任天堂効果」による、部数上昇が確認できる)。

「Vジャンプ」も状況としてはほぼ同じ。年末年始の「任天堂効果」、さらにはゲーム系全般への購入意欲の高まり、その上個別アイテムとして例えば2011年10月21日発売の『Vジャンプ2011年12月号』における「遊戯王OCGカード全員プレゼント」(有料)など、魅力的な付録による結果ともいえる。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2011年9-12月期、前年同期比)

プラス誌は3誌、マイナス誌は8誌。誤差範囲のプラスマイナス5%内を除けば、プラスはゼロ、マイナスは7誌となる。かなり厳しい状況。先の前期比グラフでは大いに伸びた「ファミ通DS+Wii」がマイナス陣の先頭に立っているが、これは前年同期も今期同様、「任天堂効果」が生じていたことも小さくない。見方を変えれば「季節属性による恩恵そのものが減退している」「雑誌自身の勢いがかんばしくない」などが考えられる。「3DS大幅値下げ」の効果が、今期は相当なボリュームであったことを考えると、多分に後者の事由が割合として大きいと考えるのが道理といえる。

一方、前回記事でも注目した「アニメージュ」や「声優アニメディア」など、どちらかといえばコア層色が強いものは、今回も上位に多く位置している。これらは読者として設定している層への積極的かつニーズに応えた雑誌構成や付録提供が、現状維持・堅調化に表れていると見てよい(主なアニメ系雑誌の動向については【「ゾッ」とするかな...? 三大アニメ誌の動向】も参照のこと)。

印刷部数では最上位の「Vジャンプ」も、今グラフでは「赤組」。同誌は印刷部数も大きい(今回期は29.7万部)が、同時に特集・付録内容とそれらに対する需要を考慮し、数万部単位での調整を行っているので、「誤差の範囲」との解釈もできる。しかし2010年第4四半期(10-12月)以降、増減の上下幅を5万-10万部単位で下方修正した気配も感じられる。今期では直近期と比較してわずかながら値を上げているか、ボックス圏そのものの回復とは程遠い。この推論はほぼ決定的なものと見てよいはず。



震災の影響から立ち直りを見せる面もあるが、前回記事同様、印刷部数が漸減している雑誌が数多く確認され、市場全体の不安程感は否定できない。一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動した読者層のニーズを適切につかみ、それに応えるコンテンツの提供」「自社、自雑誌の『資産』の有効活用」が際立つ傾向があり(例えば声優系専門誌)、それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている。

不景気で可処分所得が減少し(主要購読者層たる若年層は不景気のあおりを受けやすく、特に減退中)、さらにスマートフォン・携帯電話のようなモバイル情報端末や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心必要性も薄れている。とりわけスマートフォンの登場と普及は、「機動性の高い娯楽」(例えば雑誌、携帯ゲーム機)に大きな打撃を与えている。スマートフォンの浸透が主に若年層から進んでいることを考えれば、エンタメ市場に与える影響は、加速度的といえる。

お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く、「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を創らねばならない。

もちろん「読者の需要を適切に、深く追求する」だけを求め、同人誌やサークル誌のノリを突き進むのも問題。一定数量を販売する(=一定数の不特定多数から成る人達に支持される)商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない(その「ノリ」が通じる「市場」が、雑誌を支えるのに十分な力を持っているのなら話は別だが)。

印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、プラスへの歩みを続けている。上位陣の雑誌をくまなく読み解くことで、不調著しい雑誌業界における状況改善策のヒントが見いだせるに違いない。

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