すべての個別項目が上昇、要注意な状態(2012年1月分世界食糧指数動向)

2012/02/11 19:30

国連食糧農業機関(FAO)が同公式サイトにおいて定期的に更新・発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持し続けている。この値は1990年以降にFAOが世界の食料価格の月ごとの変化を精査したものだが、この値が高いことは、すなわち世界全体の食料価格が高めに推移していることを意味する。食料価格の高騰は各種商品市場の動向や政治情勢を判断する際に、検証すべき要素の一つである。そこで当サイトでは定期的にデータの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2012年1月分の反映版である。

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今記事のデータ取得元および用語の解説については、一連の記事のまとめページ【世界の食料価格の推移(FAO発表)】で詳しく解説・説明を行っている。そちらでチェックをしてほしい。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2012年1月)

砂糖は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいものの、それ以外は2005年前後までは50-150の領域でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的には上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」時の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方。ただし昨年後半期からは種類によって下げ率に違いはあるものの、食肉を除き一時的に減少する動きを見せている。

目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘味の需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなった。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年1月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。昨今では高い領域での上げ下げを繰り返している状態。

今回計測月となる2012年1月においては多くの値で、前月から多少ながらも上昇する動きを示している。1月の総合指数214.0(暫定値)は昨年12月(210.3)からはやや高い値を示している(後述するが前年同月比ではマイナス7.4%となるが)。リリースではこの微増について「総合指数を構成するすべての個別項目が上昇、特に油脂の価格上昇が寄与した」と説明している。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年1月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2012年1月)

直近月の前月比では直上で触れているように、わずかながらではあるが全項目、特に油脂の価格が上昇しているのが分かる。前年の同月が異様な高さを示していたため、特に砂糖においては前年同月比で著しいマイナス値なものの、先月から全項目が一斉に値を上げる動きを示したのは気になるところ。

リリースでは今月の動きについて「トウモロコシ価格の急上昇、南アメリカの需要増加と収穫見込みへの懸念、小麦のロシアでの不作懸念が穀物の値を押し上げた」「前年同月比では大きく下げているが、油脂価格は高値のまま。パーム油の季節変動による供給下落分は、ヤシや大豆油の輸出安定が補完した」「粉ミルクなどの価格は安定していたが、バターやチーズなどの乳製品価格の上昇は、供給懸念やアメリカの備蓄量低下と共に、乳製品価格上昇の起因となった」などと説明している。

冒頭にもある通り、直近では食肉を除くと昨年後半からやや値の減少=値下がりが確認できていた。しかし昨月あたりで底を打ち、今回発表月では再び上昇に転じる動きを見せている。昨年後半の減少が豊作や生産量の増大、在庫放出だけでなく、多分に「経済後退で需要が減ったから」でもあることを考えれば、値の上昇は需要側のお財布事情の改善をも意味するもので、その点ではポジティブな話。しかし一方で食料価格の上昇は後述するように、一般市民の社会生活へのプレッシャーとなり、さらに価格の急変は生産・販売側の経済事情をも大きく変動させうることから、素直に喜ぶわけにもいかない。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大に加え、バイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と、多種多様な要素が揃っている。このため、価格が安くなる要素を見つけにくい。需給関係のバランスを大きく動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続けることになる。

ここ数が月は先進諸国、そしてそれに連動する形で新興国の経済上の歩みの乱れが需要減を、そして幸いにも複数種の作物における豊作を起因とする供給増が、価格下落を導いていた。数少ない「価格が安くなる要素」が発動していたわけだが、これが今月分で鎮静化し、再び上昇への流れに乗る気配が感じられる。

一連の記事からの繰り返しになるが、日常生活で何度となく繰り返される食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の高騰は、社会情勢を不安化させる要因となる。昨今の世界各地で頻発する情勢不安・差別化問題に対する運動拡大化も、要因の一つに食料価格の上昇があると考えるのが道理。それだけに食料価格を世界的な視点で眺められる世界食料価格指数には、十分な留意が求められよう。

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