【更新】「最強ジャンプ」が新規参入、第二の「Vジャンプ」になるか…少年・男性向けコミック誌部数動向(2011年10月-12月)

2012/02/10 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2012年2月9日、2011年10月から12月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向・実情を示すものとしては、各紙・各出版社が発表している「公称」部数より精度が高く、検証素材としても有益なものである。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者が興味をそそるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

登場する冊子数はいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明付きで、雑誌社側の「公称部数」ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載の終了・開始、折り込み付録、経営戦略の転換etc.)のため、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」がトップにあることに違いはない。

2011年7-9月期と最新データ(2011年10-12月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年7-9月期と最新データ(2011年10-12月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで284万5000部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は実績のもとに維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも、また事実。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由から「退場」した雑誌は無い。一方、新規参入分としては集英社の【最強ジャンプ】が挙げられる。

「最強ジャンプ」は小学生向けの月刊漫画誌で、毎月4日発売。2010年12月に「週刊少年ジャンプ」と「Vジャンプ」の共同増刊号として発刊後、2011年は季刊誌的な期間で刊行、そして2011年12月3日に独立月刊誌としてスタートしている。つまり今件データは、独立後の創刊第一号の値となる。内容としては「ジャンプ」系の作品のスピンオフ的作品、ゲームやおもちゃとの連動企画系の作品が多い。いわば「Vジャンプ」の漫画寄りな月刊漫画誌というところか。「Vジャンプ」との兼ね合わせもあわせ、今後の動向が気になる雑誌といえる。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2011年7-9月期と最新データ(2011年10-12月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年7-9月期と最新データ(2011年10-12月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

「ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」「ビックコミックオリジナル」の三強状態は継続中。また、【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたものの、今期でも両誌とも今期に至ってもデータの登録は無し。

一方、【隔週刊誌「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」の統合月2回刊誌、「グランドジャンプ(GRAND JUMP)」に決定】でお伝えしたように、「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」両誌は休刊となったため今回からデータ掲載誌としては除外。代わりに登場した雑誌「グランドジャンプ」と「グランドジャンププレミアム」のうち、前者のみが新規参入となった。「-プレミアム」は月刊誌で、創刊号は2011年12月21日発売のため、集計が間に合わなかった可能性もある。

その「グランドジャンプ」の初期印刷数は28万部。スーパージャンプ・ビジネスジャンプのそれぞれの前期値よりは多いが、両誌分を合わせた値よりは少ない。次期以降どのような動きを見せるか、「グランドジャンププレミアム」の登場の有無と共に注目していきたい。

また今期から新規参入した雑誌としてはもう一誌、集英社の【スーパーダッシュ&ゴー!】がある。説明に曰く「スーパーダッシュ文庫発メディアミックスコミック誌」とのことで、文庫本タイトルを積極的に漫画化し、相乗効果を狙うためのコミック誌といえる。初登場期は4.5万部。一定数のニーズが望める分野であるが、ライバル誌も少なくない。今後どのような切り盛りをしていくのかが気になる。

前期・前年同期比の比較をしてみよう
さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化を試みることにする。季節変動「など」を無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

今件は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかの割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年10-12月期、前期比)

今期は東日本大地震・震災による各種混乱の影響からほぼ脱した形となった上での結果。季節属性的には「冬休みによる雑誌購入機会の減退」「年末商戦に合わせ、購入時の資料として参考にするためゲーム系の雑誌が強い」などの動きが見受けられる。

実際の動きを見ると、「少年サンデー超(スーパー)」の減退ぶりは相変わらずだが、これは部数そのものが少なめ(今期で1.4万部)なため、少しの生産調整が「比率」としては大きな値となって算出されてしまう面が大きい。無論、印刷数が減っていることには変わりない。

他方、今期で唯一5%超のプラスを見せた「別冊コロコロコミックスペシャル」だが、隔月刊誌であり、今回対象期の発売は2誌。連動企画アイテムの人気ぶりから、実質1万部の上乗せがされたものと思われる。先に触れた「ゲーム系の雑誌が強い」の好例といえよう。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2011年10-12月期、前期比)

今回はプラス誌が2誌のみ、マイナス値を示す雑誌がほとんどだが、「誤差」を超えたものは2誌のみと、実質的には多くが「前期と変わらず」の状態にある。かねてからの傾向にある通り、くだんの「コミック乱三兄弟」(「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」「コミック乱」「コミック乱ツインズ」)の底力が改めて認識される。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出できるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2011年10-12月と、その1年前の2010年10-12月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年10-12月期、前年同期比)

前回チェックを入れた「コロコロコミックス」が、今回もマイナス22.8%と大きな減少幅を見せている。同誌は期単位では掲載作品や付録、取り扱うタイトルなどで10万部単位の調整を行っているが、通常変動域の範囲からはやや逸している。これは二期前から続く流れで、気になる動向として注目しておきたい。「月刊少年ライバル」は印刷部数そのものが数万単位なのでぶれが生じやすいのも要因が、先が不安視される減り方ではある(前期記事同様)。

そして今期では全誌がマイナスとなり、多くの雑誌で苦戦を強いられているのも前回から変わらない。業界全体の市場動向の深刻な不調が改めて確認できる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年約1割の売上減少は、容易ならざる事態……と、ここ数回にわたりほぼ同じ言い回しを使わねばならない状況。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2011年10-12月期、前年同期比)

前期分記事と比べると5%以上の下げ幅を示す雑誌における勢いに変化はほとんど無いものの、プラスを示す雑誌が減り、5%超のプラス誌が無くなったところを見ると、状況は思わしくない方向へ変化しているように見える。

今期では唯一マイナス20%超の動きを見せた「モーニング2」だが、印刷部数そのものは下げ止まりの動きを見せている(上のグラフを参照。前期比ではプラスマイナスゼロ)。同誌はインターネットとの連動で色々な模索を行ったり、読み切りや新人賞作品の掲載が多いなど、多分に実験的プラットフォームの感がある。そのため、今後の「切り口」次第では大きな切り返しを見せる可能性も持っている。



今期データは東日本大地震・震災の影響(直接の購入性向の減退に加え、インクや紙、付録用素材の不足)は多分に払しょくされており、通常の出版業界動向を反映したもの。多くの雑誌でマイナス値を継続している状況を見るに、全体として売上の減少傾向が継続している事実を認めざるを得ない。

特に「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返す雑誌が複数存在している状況は、雑誌そのものの休刊・デジタル化への移行や、今期「グランドジャンプ」として新生を果たした「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」両誌の統合のような、雑誌の再編が起きる可能性を多分に示唆している。

【1か月の購入金額は117円!? 週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(2011年11月版)】【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…購入世帯率や購入頻度の移り変わり(2011年版)】などで触れている通り、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」事態が進行している。雑誌販売の一番の窓口といえるコンビニでも【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2011年「出版物販売額の実態」版)】で示した通り、出版物販売額は減少のさなかにあり、「雑誌離れ」が進んでいるのが確認できる。

堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽は残されている。さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開、さらには電子出版による「雑誌」の展開も検証課題として挙げられる。今回から新規参入した「スーパーダッシュ&ゴー!」のように、他スタイルの紙媒体との連携も一つの手ではある。

携帯情報端末の浸透が、一般携帯電話からスマートフォン、そしてタブレット機などに移行することにより、雑誌の立ち位置はますます不安定なものとなっていく。紙媒体としての雑誌のスタイルを維持するにせよ、他メディアとの連動性を高めるにせよ、大胆なかじ取りが求められている。……とはいえ、「予兆」「傾向」は随分前からかなり明確な形で、多数見えていたし、準備すべき期間は十分あったはずなのだが。

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