円高の悪影響懸念は続く…2012年1月景気ウォッチャー調査は現状-10.8P低下・先行き+2.7P上昇

2012/02/09 07:00

内閣府は2012年2月8日、2012年1月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは水準値50を割り込む状態に違いは無く、先月からは低下した。一方先行き判断DIは、50未満を継続する形ではあるが、7か月ぶりに上昇した。結果として、現状低下・先行き上昇の傾向を示している。基調判断は「景気の現状は、円高の影響が続く中で、緩やかに持ち直している」とし、回復基調がややポジティブながらも円高により、微妙な状況にあることを示している(【発表ページ】)。

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続く円高、先行き不透明感
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2012年1月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス2.9ポイントの44.1。
 →2か月ぶりの低下。「やや悪くなっている」が増え、「やや良くなっている」「変わらない」が減少している。
 →家計では正月商戦が堅調だったものの、テレビの駆け込み需要の反動は続き、さらに天候不順がマイナスに起因したことを受けて低下。企業は円高の影響もあり低下。雇用は円高で企業が慎重姿勢を示してるが、福祉分野での求人が増えていることから増加。
・先行き判断DIは先月比でプラス2.7ポイントの47.1。
 →先行き不透明感、円高の悪影響懸念は続くが、復興需要や新年度への期待から上昇。
テレビの駆け込み需要の反動は【テレビ市場、大・縮・小】などにもある通り、むしろこれからが本番となるが、現時点でもすでに無視できない影響が出ている。テレビは普及数が多く、単価が高い商品の販売も見込めるだけに、影響力も大きい。今月も先月同様に「急激な円高の継続」が多方面で大きく足を引っ張っているのが目に留まる。

見通しが明るいのは「希望的」観測
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分は上げ下げにばらつきがあるが、全体値がマイナスとなったことからも分かるように、マイナス項目が多い。プラス項目の住宅関連は先月のマイナス5.2からの反動の面が強く、しっかりとした好転の流れとは受け止めにくい。気になる雇用関連は小幅ながらも今回も再び上昇したことで、多少なりとも50切れの懸念は遠のいた形。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし2011年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブとなり、7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでおり、今回月もその傾向は継続中。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復したが、
間もなく失速、低迷継続。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、直近の金融危機以降リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態(このあたりの状況は「本震」後に何度か発生した、東証における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、震災後の急降下に対応する大きなリバウンド的上昇が終わり、再び現実を見据えた動き(一言で表現すれば「低迷」)に移行したと判断できる。

景気の先行き判断DIは先月動向から転じて増加している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい雇用指数だが、震災後の反動で大きく上昇したが7月が天井。今月はかろうじて先月に続きわずかな上昇を見せているものの、わずか0.1ポイントに留まっている。「先行き判断DI」の中では唯一基準値の50を超えてはいるが、ほんの少しの下げ方向での大きなぶれが生じるだけで、50割れが容易に起きうる状態にある。

先月から転じて全項目でプラスとなり、見た目は言葉通り「景気がよさげ」に見える。だが前述にもある通り「復興需要への期待」「新年度への期待」という不確定要素を多分に含むポジティブ感が、円高という現実的なネガティブ感を打ち消している状況が気になる。もう少し「期待」の確証度が高ければよいのだが。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、それを天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほとんど変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。

そして今月は先月から転じてやや持ち直しの動きを見せたものの、全体的な流れである低迷基調に大きな変化は無い。希望的観測が現実のものとなれば(、確証が持てるだけの実態感を伴えば)、先行きにも確固たる期待・希望が持てるだろう。

また雇用関連の値にも注力をしておくべき。今月もわずかに上昇したものの、7月以降は総じて緩降下の動き。もし今後もこの流れが継続し、他の値に近づくようならば、強い警戒をする必要がある。不景気の期間においては、雇用関連値が他の値を下回る傾向があるからだ。

一部セクターは「春が来た」
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・年初のバーゲンは連日前年を上回り、好調なスタートとなっている。近隣の百貨店やショッピングセンターの大部分でも前年を上回っている(百貨店)。
・小型HV車の新発売、補助金の復活やエコカー減税の継続が見込まれるなど、自動車業界を取り巻く環境は良い状況になっている。販売促進のための大型イベントは計画以上の受注が確保できた(乗用車販売店)。
・クリスマス、年末、正月と行事は各家庭で行ったようで、物日商材はよく売れたが、行事でお金を使った反動でまた財布のひもを締め直したようである(スーパー)。
・前年の地上デジタル放送への完全移行後、薄型テレビの不振が続いており、年が明けても回復には程遠い状況にある。厳しい売上が続いている(家電量販店)。
・今月は半ば過ぎから雪の影響や厳しい寒さが続いているため、客足が鈍くなっている(一般小売店[和菓子])。

■先行き
・東日本大震災の影響も薄れ、東南アジアからの観光客も戻りつつあるため、今後は外国人観光客による利用増加が期待できる(観光名所)。
・今から就職、進学等で人の動きが活発になってくる時期であるので、必要に迫られての需要が多少増える。今と比べて販売量、売上は良くなる(商店街)。
・ヨーロッパに端を発した世界経済の不調から、消費者心理の冷え込みは今後も加速していく。債務や円高の問題についても、景気回復の重しとなり、なかなか回復の兆しは見えてこない。また、国内でも増税や社会保障に関する議論が具体的になってきており、消費者の財布のひもは今後も緩むことは当分ない(百貨店)。
・増税の議論や各種料金の値上げなど景気回復に水を差すようなことが多い。特に電気料金の値上げは、燃料調整費の値上げまで含めれば当社では28%にもなり、経営をかなり圧迫する(スーパー)。
などとなっている。業態によって浮き沈みが激しく、中には「春到来」的な状況を楽しんでいるセクターもある。しかし概して現状を冷静に認識している・せざるを得ない雰囲気がただよっている。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
淡い期待が見えるが…
2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「震災前における」未来動向予測は、不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとするものだった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしはじめており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

しかしながら大幅な数字の下落からも分かるように、2011年3月の東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じる間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の国レベルでの施策への不信の加速・体現化、電力供給不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」ような雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。

「震災による中期的な不景気が発生しうる可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している。震災前から不景気の状態だったため、気が付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、急激に過ぎる円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与え続けている。各種データから「余震は完全に過ぎ去った」と断じることが難しい状況も、人々の不安感を駆り立て、「保守化」を後押ししている。

一時期と比べれば多少は落ち着いたものの、いまだに徴候が見受けられる余震の動向を見極め、鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題。そしてこれ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求めらる。その道筋が正しければ、明日に希望が見えるのなら、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していくに違いない。

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