ネットがマイナス、テレビがプラス…いつもとは違う雰囲気(経産省広告売上推移:2012年1月発表分)

2012/01/15 07:00

経済産業省は2012年1月13日、特定サービス産業動態統計調査において、2011年11月分の速報データを発表した。それによると、2011年11月の主要メディアにおける広告費売上高は前年同月比でマイナス2.7%と減少していることが明らかになった。主要項目別では「新聞」がマイナス8.0%と、もっとも大きな減少率を記録している(【発表ページ】)。

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今記事のデータ取得元や選択項目の詳細などは記事の一覧【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】の中で解説している。そちらで確認してほしい。今記事はその2011年11月分データ(公開は2012年1月)の速報値を反映させたもの。なおそれより前のデータについては、速報値の後に発表される確定値で修正されたものを用いている。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2011年9-2011年11月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2011年10-11月)

比較しやすいように先月発表データと並列して図にしたが、「ラジオ」と「インターネット」は前月と比べて数字を戻したものの(とはいえマイナスに違いは無し)、その他の項目は悪化。売上そのものが前年同月比でプラスなのは、「テレビ」だけとなってしまっている。一時復調の兆しも見せた「新聞」は今回もマイナス。先月プラスを記録した「雑誌」も再びマイナス2.7%とマイナス圏に戻している。

紙媒体全体の不調、「ラジオ」がやや戻しの気配、「テレビ」がかろうじてプラス、「インターネット」がマイナス継続という動きは、数字そのものはともかく挙動として【電通と博報堂の種目別売上高前年同月比をグラフ化してみる(2011年11月分)】と類する部分が多い。電通や博報堂の動きが広告業界全体の動きと相関関係にあることが、改めて確認できる。

なお先月分でマイナス20.6%をつけた「インターネット広告」だが、今月はマイナス3.9%とマイナスを継続している。これは昨年同月がプラス29.6%と大きく伸びていたことの反動によるもの。気になる人も多いようなので、インターネット広告のみに限定し、2010年1月以降の「前年同月比の進捗」、そして2011年1月以降の「広告費絶対額」の推移をグラフ化しておく(絶対額が2011年1月以降なのは、2011年1月から調査対象の追加が行われたために、不連続が生じていることによる。公開されている進捗率はこの追加を調整しており、連続性は確保されている)。

インターネット広告費前年同月比推移(2010年1月-)
↑ インターネット広告費前年同月比推移(2010年1月-)

インターネット広告費(単位:億円)(2011年1月-)
↑ インターネット広告費推移(単位:億円)(2011年1月-)

そして今回も該当月における各区分の具体的売上高をグラフ化しておく。電通や博報堂の区分とは違うため、該当同月の両社データとの違和感を覚える部分もあるだろうが、参考値の一つとしてとらえてほしい。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2011年11月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2011年11月、億円)

昨今では何度か「新聞」を抜き、主要5項目では「テレビ」に次ぐポジションを得る機会を持つようになった「インターネット広告」だが、今月発表分もまた「新聞」には及ばなかった。とはいえ、メディア動向に大きな転換は確認できず、今後しばらくは追いつ追われつを繰り返しながら、次第に新たな立ち位置が確定的なものとなっていくと類推される。

次に、公開されているデータの推移をグラフ化する。インターネット広告のデータが掲載されたのは2007年1月からなので、それ以降の値について生成したのが次の図。

月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2011年11月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2011年11月分まで)

大勢としては「インターネットは激しい起伏の中で2009年後半以降は回復、プラス圏を維持」「テレビは2010年あたりから戻しの雰囲気」「ラジオはマイナス圏で低迷-やや下げ幅を縮小」「雑誌はかなり厳しいレベルの下げ幅を継続していたが、ここしばらくは復調の雰囲気も」という傾向を見せてい”た”。そして東日本大地震・震災による影響で2011年3月分から、グラフは大きなうねり・変移を起こしている。今月発表分は昨年同月がやや堅調な値を示していたこともあり、昨月同様各項目ともやや厳しい結果となってしまったようだ。

元々紙媒体の電子媒体への一部移行と適正な住み分け(紙媒体のすべてが電子媒体に移行する・できるわけではない)、電波媒体の広告プラットフォームとしての立ち位置の正当評価は、メディアの技術進歩や需給関係の変化と共に、漸次進行する。日本の場合は諸外国と事情が異なり、「既得権益を悪と決めつけ、それを打破しなければならない」と語る報道メディアそのものが大きな既得権益を握り、それを頑なに守る動きが各所で見られ、各メディアの「立ち位置の正常化」「世界の流れにそった歩み」は遅延している。

一方東日本大地震・震災とそれに伴う各種震災・人災、そしてその後の消費者の中に芽生えた心理変化は、広告出稿側のお財布事情の動き(多くは厳粛化)、地震報道などで一部ながらも露呈した各媒体の「真の価値」に対する(視聴者・広告主における)意識の移り変わりのきっかけとなり、広告業界ですらも一部軌道修正の上で、全体における変化の「時計の針」を押し進めている。

今後も電通・博報堂の月次レポートの分析と共に、特定サービス産業動態統計調査の結果の追跡に傾注し、メディアと広告の状況変化の移り変わりのチェックをお勧めしたい。単月ではつかみとれないことが、数か月、数年の流れの中で浮かび上がるはずだ。

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