両社とも「ラジオ」が下げ、「テレビ」が上げ(電通・博報堂売上:2011年12月分)

2012/01/14 06:15

[博報堂DYホールディングス(2433)]は2012年1月13日、同社グループ主要3社の2011年12月における売上高速報を発表した。これで[電通(4324)]が同年1月12日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2011年12月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めてみることにする。

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データ取得元の詳細や各項目に関する留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】で解説している。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2011年12月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2011年12月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震・震災による直接的な広告費のへの影響は、ほぼ終息したように見える。そしてそれ以前からの広告業界・メディアの流れ「4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っている」状況がそのまま復帰したような動きが見受けられる。

12月の特徴としては、「新聞」「雑誌」が代理店によって変動がまちまちな一方、両社とも「ラジオ」が下げ、「テレビ」が上げているのが目に留まる。テレビは上げ率こそさほどのものでないが、絶対額が大きいため、この伸び率は十分以上の健闘と評価できる(例えば電通の「テレビ」は5.4%のプラスだが、このプラス分だけでもラジオの同社今月全体額をはるかに上回る)。

前回両社とも前年同月比マイナスだったインターネットメディアは、今回は電通が大きくプラス、博報堂がマイナス。昨年同月における「その時点での」前年同月比が電通・博報堂それぞれプラス30.8%・72.8%と大幅プラスだったことを考慮すると、博報堂のマイナスは、その反動によるものと考えられる。他方電通は昨年3割以上プラスを出し、今年も「そこから」さらに1割強の伸びを見せるあたり、堅調さがうかがえる。

両社合わせると前年同月比でプラスなのは全部で12項目。前月の9項目から3項目増えており、先月からの持ち直しが確認できる。ただし具体的な表記は略するが、4マス内では8項目中4項目しか無く、今一つ勢いが感じられない。

今月は電通と博報堂でも「その他」部門の伸びをはじめ、いわゆる”「4マス(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)」と「インターネット」”以外の一般部門における好調ぶりが際立って見える。「アウトドアメディア」や「マーケティング・プロモーション」は内容がある程度把握できるが、「その他」は先月解説したように「雑多で色々なもの」の複合体。

●「その他」
電通……衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメントその他コンテンツなどの業務が含まれます。

博報堂……スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツ等に関する取引が含まれております。

(各社リリースなどから抜粋)

電通130億8800万円・博報堂は14億7300万円(三社合わせて)と、博報堂はともかく電通はかなり大きな額(電通内比較では「新聞」の106億すら超える)。上記項目のうち、どの項目が(あるいは複数が)「その他」総額をけん引したについて、好奇心をそそられるのも当然の話。

広告代理店が自社業務のラインを公開することは滅多にない。場合によっては公開した時点で「効果」が半減してしまうものもある。従ってどのような案件・対象メディアが「その他」項目の好成績に大きく貢献したのかは把握できない。もっとも「具体的案件の内容」という点では、「マーケティング・プロモーション」「アウトドアメディア」も同様で、先月11月同様に「電通・博報堂両社とも、4マスとインターネット以外で奮戦した」という表現にとどめざるを得ない。

ただし昨年同月の結果をもう一度見返すと、前年同月でも「4マスとネット」以外の項目は比較的良好な値を示している。そこからさらに上乗せしていることを考えれば、この時期(年末)は元々これら広告が伸びやすい時期と考えることもできる。

参考として2000年までさかのぼった上で、電通の「その他」項目における金額変移(11月と12月のみ)をグラフ化したものを作成しておく。

電通「その他」項目推移(億円、2000年以降、11・12月のみ)
↑ 電通「その他」項目推移(億円、2000年以降、11・12月のみ)

11月は全期に渡り50-100億円のレンジにとどまっているが、2007年の金融危機の影響を受けた下げと、2009年からの復調が確認できる。12月は2006年まで大きな成長をとげていたものの、2007年の金融危機の影響を大きく受けて急下降。さらにその後のリーマンショックでダメージを加速化。2009年以降ようやく復調のきざしが見えている。要は、「その他」項目では、11月も12月も景気の影響を受けやすい案件が多く扱われやすく、特に12月ではその傾向が強いため、変動も大きくなるものと考えられる。

なお今件記事の最初のグラフに関して改めて説明しておくが、これは「個々の会社の前年同月比」であり、額面の絶対額を意味しない。先の「その他」部門の項目でも分かるが、他に例えばインターネット分野の額面は、他の分野と比べればまだ小さめ。そして個々分野を会社毎に比較した額面上では、電通の方が上となる。例えばインターネット分野なら、電通61.49億円、博報堂は27.99億円(3社合計)という値。

電通・博報堂HDの2011年12月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2011年12月における部門別売上高(億円、一部部門)

震災の直接的な影響を受けた数字のマイナスへの動きはすでにほぼ終わり、各項目の値は予定調和内の動きに戻している。とはいえ繰り返しになるが、以前からの「4マスが泥沼化」「ネットが堅調」という中期的な流れに変わりは無い(今回はネットも今一つだったが)。

電力供給不足はどのような甘い試算をしても、今冬以降も続くと考えて間違いない。新スタイルの広告手法として注目されている「デジタルサイネージ」も、【池袋駅のデジタルサイネージ、その後】で報告しているように地震直後のような「すべて全面オフ」という状況からは立ち直りつつあるが、積極的な節電の「空気」は深く浸透し、以前ほどの活力は見られない。電力浪費による非難リスクを自然に避ける傾向が見受けられる。

そのような状況なら電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告にもう少し注目が集まるのは当然の話で、昨今の「その他」の動きも、一部はそれが該当しているものと考えられる。

今後は従来型・4マス・ネットそれぞれの良い所を上手く流用・活用・併用し、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、(広告効果的には無意味な)慣習にとらわれることのない、コストパフォーマンスの高い、そして同時に効果が分かりやすい広告手法が(今まで以上に)求められる。今後は発想に優れた広告に注目が集まり、採用され、トレンドとして消費者の目に留まる機会が増えてくることだろう。


■関連記事:
【冬場の時間単位での電力需給推移をグラフ化してみる】

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