年末商戦の堅調さ…2011年12月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き低下

2012/01/13 07:05

内閣府は2012年1月11日、2011年12月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは水準値50を割り込む状態に違いは無いものの、先月からは上昇した。一方先行き判断DIは、50未満を継続する形で先月から再び減少した。結果として、現状上昇・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気の現状は、円高の影響が続く中で、緩やかに持ち直している」とし、回復基調が円高を起因とし、ややポジティブながらも微妙な状況にあることを示している(【発表ページ】)。

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円高が落とす大きな影
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年12月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス2.0ポイントの47.0。
 →2か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」が増え、「やや悪くなっている」が減少している。
 →家計ではテレビの駆け込み需要の反動は続いているものの、気温が低めに推移したことで冬物商材の動きが順調になったこと、さらには年末商戦の堅調さを受けて、上昇。企業は震災からの持ち直しに加え、タイの洪水に伴う代替生産の動きはあったものの、円高の影響もあり、横ばい。雇用は円高で企業が慎重姿勢を示してるが、建設や福祉分野での求人が増えていることから増加。
・先行き判断DIは先月比でマイナス0.3ポイントの44.4。
 →タイ洪水の影響からの回復、震災の復興需要への期待から、企業で上昇。円高をはじめとするさまざまな先行き不透明感を受けて、家計部門で低下。
テレビの駆け込み需要の反動は【テレビ市場、大・縮・小】などにもある通り、来年以降が本番となるが、現時点ですら無視できない影響が出始めている。テレビは普及数が多く、単価が高い商品の販売も見込めるだけに、影響力も大きい。今月は特に「急激な円高の継続」が多方面で大きく足を引っ張っているのが目に留まる。

寒さで目の前は「冬支度」のプラス、先を見る目は…
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分は上げ下げにばらつきがあるが、全体値がプラスとなったことからも分かるように、ややプラスの項目が多い。マイナス項目も住宅関連がマイナス5.2とやや気になるものの、他はマイナス0.3とマイナス1.5に留まり、小売や飲食の大幅な上昇に打ち消される形となっている。気になる雇用関連は今回上昇したことで、多少なりとも50切れの懸念は遠のいた形。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし今年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブを描き、7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでおり、今回月もその傾向は継続中。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復したが、
間もなく失速、低迷継続。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

そして今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態といえる(このあたりの状況は「本震」後に何度か発生した、東証における株価の急落と雰囲気的に似ている)。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、震災後の急降下に対応する大きなリバウンド的上昇が終わり、再び現実を見据えた動き(一言で表現すれば「低迷」)に移行したと判断して間違いない。

景気の先行き判断DIは先月動向から続いて減少している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい雇用指数だが、震災後の反動で大きく上昇したが7月が天井。今月はかろうじて先月から上昇を見せているものの、わずか0.1ポイントに留まっている。「先行き判断DI」の中では唯一基準値の50を超えてはいるが、ちょっとした下げ方向での大きなぶれが生じるだけで、50割れが容易に起きうる状態にある。家計動向全般に先行き不安感を反映する形でマイナス値が連なり、企業は復興需要への期待からプラスを示しているが、円高の影響継続懸念や復興需要そのものへの疑いもあり、上げ幅は大きくない(円高の影響が大きく、製造業ではマイナスですらある)。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、それを天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほとんど変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。

そして今月は先月の動きとほぼ変わらず、リバウンド的な回復は終焉を迎え、緩やかな減退傾向への歩みが確定した形となった。特徴としては家庭動向は「将来へのつかみどころの無い不安」、企業動向は「将来への淡い期待」の一方で「急速な円高への恐れ」という、いずれも不確定要素の多い対象への想いが数字を左右している。

さらに雇用関連も今月こそわずかに上昇したものの、7月以降は総じて緩降下の動き。もし今後もこの流れが継続し、他の値に近づくようならば、強い警戒をする必要がある。不景気の期間においては、雇用関連値が他の値を下回る傾向があるからだ。

冬の寒さに救われて
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・年末年始やクリスマスなどイベントの日に在宅する頻度が多くなっているため、それに見合った商品を購入する客が増えてきている(コンビニ)。
・12月は気温が下がってきて、コートやジャケットなど重衣料の売上が増加した。11月の売上が12月にずれ込んだ形にはなるが、前年比では好調である(衣料品専門店)。
・エコポイント制度の終了とアナログ放送停波の影響で、対象商品を中心に8月以降、売上低迷が続いている(家電量販店)。
・金融機関からの借入れが難しくなってきている。業者向けの用地取得費用の融資はもちろん、消費者向けの住宅ローンも2、3か月前に比べると審査が厳しくなっている。特に、担保評価がかなりシビアである(住宅販売会社)。

■先行き
・来年度の予算増で恐らく東日本大震災の内需が出てくるため、2、3か月以内には多少良くなってくると期待している(商店街)。
・景気が上向きになる要素が見当たらない。半年程度は現在のような状況が続き、景気の悪化が進むのではないかとみている(家電量販店)。
・増税問題をはじめ、先行きが不透明なため、消費についても様子見の状態が続く(一般レストラン)。
・これといったイベントがなく、宿泊予約が少ない。海外からの旅行者が戻ってこない。円高や放射能汚染の影響がいまだに影響している(観光型ホテル)。
などとなっている。天候が冬らしくなったことで季節系商品の展開が堅調となり、それに連動する形でポジティブな様相も見受けられるものの、概して周囲環境は厳しい。将来的な予想の面でも、希望的観測としての意見が多く、積極的・確信的な景気回復感をうたう声が見当たらない。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
すぐに鎮静化。
先行き感は低迷中。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘している通り、2007年夏に始まった今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。東日本大地震・震災前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「震災前における」今後の動向は不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとする予想だった。原油をはじめとする資源価格の高騰が市民生活に影響を及ぼしはじめており(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、さらには小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消す可能性を秘めていた。

不安しかしながら今年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う大幅な数字の下落からも分かるように、東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上にも大きな衝撃をもたらした。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じる間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の国レベルでの施策への不信の加速化、電力供給不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」ような雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。

「震災による中期的な不景気が発生しする可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している。震災前から不景気だったため、気が付きにくいだけの話でしかない。マインドの低迷は継続し、急激に過ぎる円高も輸出関連企業を中心に企業へボディーブローのごとくダメージを与え続けている。各種データから「余震は完全に過ぎ去った」と断じることが難しい状況も、人々の不安感を駆り立て、「保守化」を後押ししている。

いまだに徴候が見受けられる余震の動向を見極め、鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題。そしてこれ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められよう。その道筋が正しければ、一人ひとりの不安も少しずつ和らぎ、心理的な景況感も改善していくに違いない。

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