3年で中卒者は5割強、高卒者は3割台後半が離職…学歴別・就職後の離職状況(最新)

2023/12/09 02:36

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2023-1201学校を卒業し無事に企業に就職できても、そのまま定年退職までその企業に就業し続けるとは限らない。企業側の事情で、あるいは就業者自身の考えで、数年のうちにその企業を離れてしまう場合も少なくない。今回は厚生労働省の発表資料を基に、学校を卒業した後、無事に就職を果たした後の企業からの離職率(見方を変えれば「職場定着率」)の推移について見て行くことにする。就職率、失業率とはまた別の視点で、若年層の就労実態を確認できる結果が出ている(【厚生労働省「新規学卒者の離職状況」】)。

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「定年まで一つの会社に継続勤務」「年功序列制」が日本の雇用体系の常でなくなってから久しいが、現時点でも「正社員」ならばその多くは通用しうる(ただしこれからもそれが続くか否かは分からない)。だが一方で無事に就職を果たせても、短期間で離職してしまう人も少なからずいる。

↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(再録)
↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(【30代前半の働き人、6割台は転職経験あり(最新)】から再録)

今件項目では学校を卒業した直後に就職した人に限定し、就職後3年間における離職率動向を提示している。各年3月時点における離職率に関して最新値を反映させた上で、中学校卒・高等学校卒・大学卒における「3年以内の離職率動向」を示したのが次のグラフ。縦軸(離職率)はあえて全学歴で縦軸の区切りを揃え、学歴による差異をつかみやすくしている。

↑ 在職期間別離職率(中学校卒業者)
↑ 在職期間別離職率(中学校卒業者)

↑ 在職期間別離職率(高等学校卒業者)
↑ 在職期間別離職率(高等学校卒業者)

↑ 在職期間別離職率(大学卒業者)
↑ 在職期間別離職率(大学卒業者)

現時点では2022年分は1年目、2021年分は1・2年分までしかデータが無い(調査タイミングを考えれば当然の話)。そのため右端部分がやや変則的な形となっている。大まかな全容としては

・離職率は 中学校卒>高等学校卒>大学卒 で、中学校卒の離職率が一番高い。

・大学卒は1年目、2年目、3年目における離職率にさほど差異は無いものの、中学校卒や高等学校卒は1年目における離職率が高い。

・中学校卒は1年目で4割台が辞めてしまう傾向。ここ数年は3割台に減少している。

・今世紀に入ってからの離職率は漸減傾向にあったが、2010年以降は高等学校卒で増加が確認できた。ただし2013年でピークとなり、それ以降はおおよそ漸減に転じている。大学卒も同様の動きを見せたが、2011年で早くも天井感。それ以降はほぼ横ばい。

・2011年は中学校卒で有意に上昇している。震災起因の離職が主に中学校卒業者で生じた可能性の示唆。ただし中学校卒業者は対象数が少ない(4けた台。他の学歴は6けた台)ことから、統計上のぶれの可能性がある。

などとまとめられる。各種別記事にある通り、おおよそ学歴が低いほど失業率は高く、そして就職できても正社員としての雇用率は低い傾向にある(【男性22.2%・女性53.3%は非正規…就業者の正規・非正規社員率(最新)】)。さらに離職率も高い今調査の結果を見る限り、学歴による就職回りのハードルの差異は非常に大きなものと考えてよい。

↑ 若年就業者における就業形態別割合(調査時点で在学していない人のみ、属性別)(2018年)(再録)
↑ 若年就業者における就業形態別割合(調査時点で在学していない人のみ、属性別)(2018年)(【若者労働者における正社員・非正社員率を学歴別・年齢階層別に(最新)】(現時点でこれが最新)から再録)

中学校卒、そして高等学校卒における1年目の離職率が高いのも、雇用する会社側から見て解雇しやすい非正規社員だからと考えれば、道理が通る(同時に、もう一つ別の要因も想定されるが、それは後ほど解説する)。「労働流動性の高さを反映したもの」と表現すれば聞こえはよいが、(無論自主的離職も少なくないものの)解雇される立場からすれば気分のよいものではない。

企業そのものの存続が前提になるが、中学校卒の3年定着率が4割強、高等学校卒でも6割強、大学卒ですら7割足らずとの実態は、覚えておく価値のある値ではある。ただしこれは単純な離職率からの逆算であり、会社側からの解雇だけでなく、就業者側の事情(心身の不具合や家庭の事情、よりよい就業先への転職など)による離職も含まれていることに注意が必要。例えば「中学校卒は入社してから3年間で約6割が会社によって解雇させられる」を意味しない。



参考として3年目までの離職者を総計した値に限り、すべての学校種類をまとめたグラフを作成しておく。

↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2021年は1年目と2年目、2022年は1年目のみ)
↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2021年は1年目と2年目、2022年は1年目のみ)

離職率は景気と反比例する傾向を見せている。特に直近の金融危機ぼっ発以降の動きが顕著である。これは「不景気≒再就職困難≒離職を断念する(離職検討理由を我慢する)」との流れによるもの。見方を変えれば「好景気≒再就職容易≒離職決意のハードルが下がる」と考えることができる。

ただし労働市場面での景気の悪化度合いが一定程度を超えると、本人は望んでいなくとも(実質的)会社都合による解雇・離職の事例が増えるため、離職率は上昇してしまう。2010年から2011年にかけて値が有意に上昇しているが、これはリーマンショック、過度の円高、そして震災と、畳み掛けるような企業経営に対するマイナス要因が生じた結果の動きと見られる。

試しに上記グラフに「不景気」と認識されている時代を合成する(薄い赤エリア)と、おおよそ該当時期には値が下がっているのが分かる。

↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2021年は1年目と2年目、2022年は1年目のみ)
↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2021年は1年目と2年目、2022年は1年目のみ)

もっとも、2003年あたりから金融危機が始まる2007年までは、景況感は必ずしも悪くないものの、減少傾向が確認できる。明確な理由は判断し難いが、【年齢階層別完全失業率の推移(最新)】などにある通り失業率はこの時期に大きな減少を示していること、【正規・非正規就業者数の詳細(最新)】で確認する限り、この時期に非正規率が上昇していることから、労働市場の構造変化が影響しているものと考えられる。

離職率は学生にとっては特に気になる指標でもある。来年以降の値がどのような変移を遂げるのか、大いに注目したいところだ。


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