20代前半の完全失業率は4.8%…若年層の労働・就職状況(最新)

2022/11/29 02:58

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2022-1114内閣府は2022年6月14日付で2022年版となる「子供・若者白書」を発表した。主に若年層に関する公的資料を取りまとめた白書だが、今回はその中から、若年層の労働・就労状況に係わる値を抽出し、あるいは一次ソースをたどり、グラフの再構築とともに現状の精査を行うことにする。先進諸国共通の雇用市場の課題でもある若年層の失業問題は、日本ではどのような状況なのだろうか(【子供・若者白書について】)。

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リーマンショックで悪化後は改善、新型コロナで悪化の兆し


平均寿命の伸長化・高齢社会化・定年の延長化、さらには技術の発達に伴う労働工程の効率化に伴い、若年層の労働条件・就職環境が悪化するのは先進国共通の社会問題。この現象は「先進国病」の一つであるとも言われている。日本でも他の先進諸国同様に若年層の完全失業率は高く、全体平均と比べて高水準を維持している。

↑ 若者層失業率(年齢階層別)
↑ 若者層失業率(年齢階層別)

↑ 若者層失業率(年齢階層別)(直近5年間)
↑ 若者層失業率(年齢階層別)(直近5年間)

バブル崩壊後は景気悪化に伴い完全失業率は増加。その後21世紀に入ってからは派遣などの非正規雇用の促進化もあり、一時的に完全失業率は改善の動きを見せている。そして景気の回復も大きな改善要因だった。ところが2007年夏以降の金融危機、さらにはリーマンショックに伴う景気悪化で、完全失業率も上昇していく。景気動向に左右されやすい(勤続年数が短いことや、非正規雇用率が高いことから、解雇されやすい。さらに新規雇用枠増減の影響を受けやすい)若年層ほど、急激に完全失業率の値を積み増しているのが分かる。

昨今では景況感の回復基調に伴う労働市場の変化もあり、全体平均とともに若年層の完全失業率も低下傾向にあった。特に15-19歳における値が急速に低下していたのは喜ばしい限り。これは高等専門学校、専修学校などの学生が即戦力として企業から注目を集めていたのが一因。しかしながら今なお全年齢階層の合計値と比べて、若年層の完全失業率は高い水準。

他方2020年以降では全年齢階層で完全失業率は前年比において上昇、特に15-19歳の上昇ぶりが著しい(直近2021年では前年比でやや落ちたが)。これは新型コロナウイルスの流行による経済の急速な悪化によるもので、中でも非正規の解雇が進んだのが主要因と思われる。

増加から減少に転じた若年層の非正規雇用率


他方、特に若年層間で問題視されることの多い「雇用形態」、具体的には正規雇用・非正規雇用の相違についてだが、次のグラフにある通り「正規の職員・従業員」以外の雇用者比率は若年層においては25-34歳層で2007年までは一定の上昇幅で、それ以降は緩やかな漸増状態にあったが、2014年をピークに減少に転じた。一方、15-24歳層では2005年の34.3%をピークとし、多少の落ち込みを経て3割前後を行き来したが、この数年ほどは減少傾向となり、2009年以来再び3割を切る形となった。

↑ 「正規の職員・従業員」以外の雇用者比率(在学者を除く、年齢階層別)
↑ 「正規の職員・従業員」以外の雇用者比率(在学者を除く、年齢階層別)

↑ 「正規の職員・従業員」以外の雇用者比率(在学者を除く、年齢階層別)(直近5年間)
↑ 「正規の職員・従業員」以外の雇用者比率(在学者を除く、年齢階層別)(直近5年間)

25-34歳層の値が一時的に増加の動きを示したのは、世帯に入り出産を経た女性が、パートやアルバイトなどで家計を支える状態にあるからだと考えられる(いわゆる兼業主婦)。男女間の就労事情の違いは、【男性就業者の65.0%は正規職員・従業員…年齢階層別就業地位区分(2022年)(最新)】【人口動向も含めた正規・非正規就業者数などの詳細(最新)】でも確認できる。

↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別・年齢階層別)(2020年)(再録)
↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別・年齢階層別)(2020年)(再録)

よって問題視されるべきは、男女ともさほど非雇用者比率が変わらない15-24歳の区分となる。最初のグラフにもある通り、この年齢階層は失業率も高い。学歴で多分に差異は生じるが、それでも若年層の就労状況が厳しいことに違いはない。

全体では正規以外の雇用者比率は上昇する傾向があったが、若年層の値は減少の動きを示していた。これは定年退職を経た高齢者による再雇用が多分に非正規であるのに加え、労働市場の状況改善で若年層への正規雇用の門戸が一層開かれている状況の表れといえる。特に25-34歳層の2015年以降における減少ぶりは注目に値する動きに違いない。

一方、2020年以降では15-24歳(在学者を除く)、25-34歳ともに前年比で大きな低下を示し、全体でも前年比で低下となった。これは上記でも触れているが、新型コロナウイルスの流行で経済が低迷し、雇用整理のために非正規が優先的に解雇されたことにより、相対的に正規の比率が上がったからに過ぎない。



仕事そのものが辛く厳しくても、それが積み重ねによるステップアップのためのプロセスならば納得がいく。若年層に対する「苦労は対価を払ってでもしろ」との言葉にも説得力がある。しかしそのステップアップすら期待しにくい非正規雇用に甘んじなければならなかったり(自分の意志でその立ち位置についた人も多分にいるが)、失業状態でその機会すら得られないとなれば、これを問題視しないわけにはいかない。

進む社会構造の高齢化の中で、今の若年層にはこれまで以上に大きな負荷がかかっている。その負荷を支える資力のもととなる有効な労働機会を若年層に優先して与えることも、高齢化社会の問題解消への1ステップと見なしてよいはずだ。


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