高齢者の「買い物弱者」問題をグラフ化してみる(高齢社会白書:2016年)(最新)

2016/06/25 05:07

2016年5月20日付で内閣府は公式ウェブサイト上において、日本の高齢化の現状や今後の予想、さらにはそれらに対応する各種施策をまとめた白書「高齢社会白書」の最新版(2016年版)を公開した。今回はその白書に記載されていたデータなどを基に、いわゆる「買い物弱者」「買い物難民」関連の現状にスポットライトを当てることにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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以前の記事【「買い物弱者」を支える事業に2/3・上限1億円まで補助金】で詳細について解説しているが、「買い物弱者」「買い物難民」とは一般的には(経済産業省の【買い物弱者対策支援について】など)次のように定義されている。

流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々のこと。徐々にその増加の兆候は高齢者が多く暮らす過疎地や高度成長期に建てられた大規模団地などで見られ始める。経済産業省では、60歳以上を対象にした調査において買い物に困難を感じている人の割合に、60歳以上人口を掛け合わせ、その数を700万人程度と推計(※2016年時点)。

この「流通機能や交通網の弱体化」とは、少子高齢化や過疎化など、社会環境情勢の変化に伴うもの。また【夫婦とも65歳以上のお年寄り世帯で「お医者さんまでは1キロ以上かかる」のは20.8%(2015年)(最新)】などにもあるように、高齢者世帯(一人暮らし含む)には居住地の周囲1キロ以内に生活インフラが存在することが求められているものの、その環境の整備は(コストなどの関係で)なかなか難しい。移動巡回タイプのインフラを提供する方法もあるが、自治体だけでは手に負えない状態にあるのが現状。

特に2011年3月の東日本大地震・震災をきっかけに顕著化したこの問題に対し、流通各社では大手コンビニによる移動販売や、既存の流通システムに相乗りする形でのサービス提供(例えば【ローソン子会社、高齢者向け宅配弁当事業者のルートを使った商品宅配事業の実証実験を大阪府で開始】)をはじめ、多種多彩な試行を手掛け、本格的な地域サービスの一形態とすべく模索を続けている。

↑ 「イトーヨーカドーあんしんお届け便」(車両本体)(3トントラック)(再録)
↑ 「イトーヨーカドーあんしんお届け便」(車両本体)(3トントラック)(再録)

↑ ファミリーマートが展開している移動コンビニ「ファミマ号」の実際の稼動の様子(すでに実働している第1号車・宮城県気仙沼市立小泉中学校駐車場にて)(再録)
↑ ファミリーマートが展開している移動コンビニ「ファミマ号」の実際の稼動の様子(すでに実働している第1号車・宮城県気仙沼市立小泉中学校駐車場にて)(再録)

また一部の中堅スーパーやコンビニでは、買い物客に対し無料で、あるいは登録会員に対する特典として、一定量以上の購入商品の自宅への配送サービスを提供する動きが活性化している。リピーターの確保の観点もあり、導入事例が増えている。

白書では前年分において今件問題に関連する事項として、60歳以上の人を対象にした「居住地域での不便さ・気になる点」を聞いた結果を挙げている。それによると「特に無い」以外では「日常の買い物に不便」とする項目への賛同意見がもっとも多く、時代の経過と共に増加する傾向を示しているのが分かる。

↑ あなたがお住まいの地域で、不便に思ったり、気になったりすることはありますか(60歳以上対象)(複数回答)(高齢社会白書(2015年版))
↑ あなたがお住まいの地域で、不便に思ったり、気になったりすることはありますか(60歳以上対象)(複数回答)(高齢社会白書(2015年版))

「夫婦とも65歳以上のお年寄り世帯で「お医者さんまでは1キロ以上かかる」のは20.8%」で提示されている「医療機関との行き来の不便さ」も上位にあるが、それにも増して「日常生活での買い物への不便さ」を覚える人が多い。

同じような環境(例えば居住地域周辺に店舗が無い場合)においては、当然高齢者以外にも買い物への不便さを覚える人は居るが、遠距離への移動が困難な場合が多い高齢者にとって、難儀さは若年層と比べてはるかに大きなものとなる。また高齢層では食事の準備も面倒さを覚えることも多くなる。当然、食品系の買い物の頻度は上がり、近場である必要性はさらに高くなる。若者には「1キロ先? 自転車で行けばいいのでは」だが、自転車に乗ることも困難な高齢者には、1キロ先の店舗ははるか先の場所となる。

実際、歳を重ねると日常生活を営む上で必要な施設に対し、徒歩や自転車などで到達可能な領域内に存在することを望む割合は高くなる。【年齢で大きく変わる「近くに無いと困る」な施設】【コンビニ、スーパー、病院、郵便局…日々の生活の中で徒歩や自転車で行ける距離には何が必要だろうか】で詳しく解説しているが、スーパーなどの小売店、郵便局・銀行などの金融機関、そして病院への需要はひときわ高い。

↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(60代)(再録)
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、2015年8月)(60代)(再録)

また、移動そのものが若年層と比べて難儀するため、移動ルートにはさまざまな配慮が求められるが、整備が不十分であったり施設そのものが無いなどの問題も少なくない。外出する際の障害として高齢者が認識している問題には、道路の階段や傾斜、歩道の狭さを筆頭に、中休みできる場所が少ない、自転車やバイク、自動車を使えないために用いることになる公共交通機関が少ないなど、多種多様なものが挙げられている。

↑ 外出時の障害(複数回答、60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))
↑ 外出時の障害(複数回答、60歳以上対象、高齢社会白書(2016年版))

多くはインフラの整備や公的機関が対応する内容。これらの需要に対応するためには、一層の公共リソースが必要となる。無論、高齢者だけでなく若年層や中堅層など他の年齢階層の人にも有益な対応には違いないが、高齢者にとっては優先順位は極めて高い。

今後はさらに過疎化が進むに連れて、地方における生活インフラの不十分さを受け(過疎化が進めば面積当たりの税収や収益性が減るため、企業は店舗・サービス展開をしにくくなり、地方自治体は税収減少から公益事業の維持が難しくなる)、高齢者の高齢者への集中が進んでいく。【半世紀で首都圏では高齢者数が8割増・地域別高齢者人口推移をグラフ化してみる】にある通り、国土交通省では、沖縄県以外では首都圏・近畿圏で高齢者人口が増加すると推測している。

↑ 2050年における高齢者人口増加率(推計、2005年確定値との比較)(再録)
↑ 2050年における高齢者人口増加率(推計、2005年確定値との比較)(再録)

今年の白書では「買物困難者」に関する特記事項は無い。上記グラフに挙げた「外出時の障害」に関する記述がある程度。しかし以前の白書では多様な対応事例を紹介した上で、「本格的な高齢社会を迎えている我が国において、高齢者が安心して暮らせる地域社会を構築することが重要である」とまとめている。また上記に挙げた経産省「買い物弱者対策支援について」では多様な施策の実例とその進行状況が報告されており、現在も状況の変化に応じて情報がアップデートされている。

対応事例は多種多様なものがあり、コストや実用性、さらには収益性まで含めて試行錯誤が必要になる。そして一律に同じシステムを当てはめるのでは無く、個々の環境に照らし合わせ、臨機応変に適応していくことが肝要とされる。可能ならば上記グラフの買い物以外における「不便」「気になる」点も合わせて解消できるようなサービスを提供していくのが、賢い切り口ではないだろうか。


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