高齢者の「買い物弱者」問題をグラフ化してみる(最新)

2018/07/13 05:00

2018-07082018年6月19日付で内閣府は公式ウェブサイト上において、日本の高齢化の現状や今後の予想、さらにはそれらに対応する各種施策をまとめた白書「高齢社会白書」の最新版(2018年版)を公開した。今回はその白書に記載されているデータなどから、いわゆる「買い物弱者」「買い物難民」関連の現状にスポットライトを当てることにする(【高齢社会白書一覧ページ】)。

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以前の記事【「買い物弱者」を支える事業に2/3・上限1億円まで補助金】で詳細について解説しているが、「買い物弱者」「買い物難民」とは一般的には(経済産業省の【買物弱者対策支援について】など)次のように定義されている。

流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品などの日常の買い物が困難な状況に置かれている人々のこと。徐々にその増加の兆候は高齢者が多く暮らす過疎地や高度成長期に建てられた大規模団地などで見られ始める。経済産業省では、その数を700万人程度と推計。

また農林水産省の【食料品アクセス困難人口の推計結果の公表及び推計結果説明会の開催について】における、「買い物弱者」と同義の「食料品アクセス困難人口」の定義は次の通りで、経済産業省の推計より厳しい値を計上している。

直線距離で500m以上、かつ、65歳以上で自動車を利用できない人。店舗は生鮮食料品小売業、百貨店、総合スーパー、食料品スーパーおよびコンビニエンスストア。2015年時点の推計対象数は824万6000人。65歳以上全体の24.6%。

「流通機能や交通網の弱体化」とは、少子高齢化や過疎化など、社会環境情勢の変化に伴うもの。また【夫婦とも65歳以上のお年寄り世帯で「お医者さんまでは1キロ以上かかる」のは20.8%(2015年)(最新)】などにもあるように、高齢者世帯(一人暮らし含む)には居住地の周囲1キロ以内(農林水産省の定義ならば500メートル未満)に生活インフラが存在することが求められているものの、その環境の整備は(コストなどの関係で)なかなか難しい。移動巡回タイプのインフラを提供する方法もあるが、自治体だけでは手に負えない状態にあるのが現状。

特に2011年3月の東日本大地震・震災をきっかけに顕著化したこの問題に対し、流通各社では大手コンビニによる移動販売や、既存の流通システムに相乗りする形でのサービス提供(例えば【ローソン子会社、高齢者向け宅配弁当事業者のルートを使った商品宅配事業の実証実験を大阪府で開始】)をはじめ、多種多彩な試行を手掛け、本格的な地域サービスの一形態とすべく模索を続けている。

↑ 「イトーヨーカドーあんしんお届け便」(車両本体、3トントラック)(再録)
↑ 「イトーヨーカドーあんしんお届け便」(車両本体、3トントラック)(再録)

↑ ファミリーマートが展開している移動コンビニ「ファミマ号」の実際の稼動の様子(すでに実働している第1号車・宮城県気仙沼市立小泉中学校駐車場にて)(再録)
↑ ファミリーマートが展開している移動コンビニ「ファミマ号」の実際の稼動の様子(すでに実働している第1号車・宮城県気仙沼市立小泉中学校駐車場にて)(再録)

また一部の中堅スーパーやコンビニでは、買い物客に対し無料で、あるいは登録会員に対する特典として、一定量以上の購入商品の自宅への配送サービスを提供する動きが活性化している。リピーターの確保の観点もあり、導入事例が増えている。

白書では2015年発表分において今件問題に関連する事項として、60歳以上の人を対象にした「居住地域での不便さ・気になる点」を聞いた結果を挙げている。その一次データとなる「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」と同様の調査内容である内閣府の【高齢者の生活と意識 第8回国際比較調査】から、日本における60歳以上の人に「居住地域での不便さ・気になる点」を聞いた結果を経年変化で確認したのが次のグラフ。それによると「特に無い」以外では「日常の買い物に不便」とする項目への賛同意見がもっとも多く、今世紀に入ってからは増加する傾向を示しているのが分かる。「特に無い」の回答率が漸増しているのは幸いだが。

↑ あなたがお住まいの地域で、不便に思ったり、気になったりすることはありますか(60歳以上対象、複数回答、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査)
↑ あなたがお住まいの地域で、不便に思ったり、気になったりすることはありますか(60歳以上対象、複数回答、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査)

「夫婦とも65歳以上のお年寄り世帯で「お医者さんまでは1キロ以上かかる」のは20.8%」で提示されている「医療機関との行き来の不便さ」も上位にあるが、それにも増して「日常生活での買い物への不便さ」を覚える人が多い。

同じような環境(例えば居住地域周辺に店舗が無い場合)においては、当然高齢者以外にも買い物への不便さを覚える人はいるが、遠距離への移動が困難な場合が多い高齢者にとって、難儀さは若年層と比べてはるかに大きなものとなる。また高齢層では食事の準備も面倒さを覚えることも多くなる。当然、食品系の買い物の頻度は上がり、近場である必要性はさらに高くなる。若者には「1キロ先? 自転車で行けばいいのでは」だが、自転車に乗ることも困難な高齢者には、1キロ先の店舗ははるか先の場所となる。

実際、高齢者となると日常生活を営む上で必要な施設に対し、徒歩や自転車などで到達可能な領域内に存在することを望む割合は高くなる。【年齢で大きく変わる「近くに無いと困る」な施設】【コンビニ、スーパー、病院、郵便局…日々の生活の中で徒歩や自転車で行ける距離には何が必要だろうか】で詳しく解説しているが、スーパーなどの小売店、郵便局・銀行などの金融機関、そして病院への需要はひときわ高い。

↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、60代)(2015年8月)(再録)
↑ 日常生活を営む上で必要な施設(複数回答、60代)(2015年8月)(再録)

また、移動そのものが若年層と比べて難儀するため、移動ルートにはさまざまな配慮が求められるが、整備が不十分であったり施設そのものが無いなどの問題も多い。外出する際の障害として高齢者が認識している問題には、道路の階段や傾斜、歩道の狭さを筆頭に、中休みできる場所が少ない、自転車やバイク、自動車を使えないために用いることになる公共交通機関が少ないなど、多種多様なものが挙げられている。

↑ 外出時の障害(複数回答、60歳以上対象、高齢社会白書(2017年版))
↑ 外出時の障害(複数回答、60歳以上対象、高齢社会白書(2017年版))

多くはインフラの整備や公的機関が対応する内容。これらの需要に対応するためには、一層の公共リソースが必要となる。無論、高齢者だけでなく若年層や中年層など他の年齢階層の人にも有益な対応には違いないが、高齢者にとっては優先順位は極めて高い。

今後はさらに過疎化が進むに連れて、地方における生活インフラの不十分さを受け(過疎化が進めば面積あたりの税収や収益性が減るため、企業は店舗・サービス展開をしにくくなり、地方自治体は税収減少から公益事業の維持が難しくなる)、高齢者の高齢者への集中が進んでいく。【半世紀で首都圏では高齢者数が8割増・地域別高齢者人口推移をグラフ化してみる】にある通り、国土交通省では、沖縄県以外では首都圏・近畿圏で高齢者人口が増加すると推測している。

↑ 2050年における高齢者人口増加率(推計、2005年確定値との比較)(再録)
↑ 2050年における高齢者人口増加率(推計、2005年確定値との比較)(再録)

今年の白書では「買物困難者」に関する特記事項は無いものの、「生活環境」の項目内に日常生活での買い物の仕方についての言及が行われている。これは内閣府の【高齢者の経済・生活環境に関する調査(2016年実施、2017年3月発表)】によるものだが、これによると高齢者が買い物に行く時の主な手段としては、自分で自動車などを運転する機会が多い実態が挙げられている。そして居住している都市規模が大きいほど徒歩が多く、地方になるほど自動車などの運転が増える。地方ほど日常生活に必要な施設が居住地周辺には存在しないための結果だが、昨今の高齢者の運転による事故問題と照らし合わせ、考えさせられる実情ではある。

↑ 買物に行く時の主な手段(60歳位以上、択一回答、居住地都市規模別)(2016年)
↑ 買物に行く時の主な手段(60歳位以上、択一回答、居住地都市規模別)(2016年)

対応事例は多様なものがあり、コストや実用性、さらには収益性まで含めて試行錯誤が必要になる(例えばインターネット通販で代替させるとの手には、インフラ整備、利用側の技術向上、身体的な観点での対応が可能か否かなどの問題が発生する)。そして一律に同じシステムを当てはめるのでは無く、個々の環境の実情を確認し、臨機応変に適応していくことが肝要とされる。可能ならば上記グラフの買い物以外における「不便」「気になる」点も合わせて解消できるようなサービスを提供していくのが、賢い切り口では無いだろうか。


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