「徒歩4割強・自動車5割強」「自動車避難者の平均避難速度は時速9キロ」…国土交通省、津波被害調査報告第3弾発表

2012/01/02 19:30

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渋滞国土交通省は2011年12月26日、東日本大震災の津波被災現況調査(第3次報告)の要旨を発表した。【「木造より鉄筋コンクリート」「3階建以上はリスク大幅減」…国土交通省、津波被害調査報告第2弾発表】に続く中間報告で、今回は主に津波からの避難プロセスに関する状況の概要や問題点を提起している。避難手段は徒歩と自動車がほぼ半々だったものの、周囲に高台が多いリアス部では徒歩避難者が多い、自動車避難者の避難先までの平均移動速度は時速9.0キロだったことなど、「集計過程の途中報告」ではあるが、注目すべき内容となっている(【発表リリース】)。


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今調査は、青森県から千葉県までの6県62市町村の津波の浸水被害者を対象に津波からの避難実態調査について、2011年9月下旬から12月末にかけてヒアリング(自宅などへ訪問し聞き取り調査)を行ったもので、サンプル数は9574、現時点で約5000サンプルを集計中。今発表内容は「集計過程の途中報告」であることや、調査の性質上生存者における行動性向であることに留意しなければならない。

津波からの避難を開始するまで、どのような行動を取ったかについて聞いたところ、もっとも多かったのは「家族などの安否確認や様子見」で3割強の人が実施していた。大規模な地震の直後だっただけに、この行動は当然至極といえる。

↑ 津波(最大波)避難開始までの行動目的(全体、複数回答、対象は684人)
↑ 津波(最大波)避難開始までの行動目的(全体、複数回答、対象は684人)

同時にこれらの行動が直接・間接的に、避難開始までの遅滞原因となることも事実。一部自治体では配布が開始されている「避難済み」の用紙(住宅玄関先などに貼り、第三者が見て中の住民が避難を完了していることがすぐに確認できるようにする)の啓蒙などで、全体的な時間短縮を図るのも求められよう。

避難を開始する際の移動手段だが、状況によって多種多様ではあるものの、全体としては5割近くが徒歩、5割強が自動車となっている。

↑ 移動手段分布(津波・最大波到達直前の避難のみ)
↑ 移動手段分布(津波・最大波到達直前の避難のみ)

↑ 移動手段別避難距離(津波・最大波到達直前の避難のみ)(メートル)※自転車は回答者少数のため参考値
↑ 移動手段別避難距離(津波・最大波到達直前の避難のみ)(メートル)※自転車は回答者少数のため参考値

周辺に高台が多く、道路の整備が平野部ほどでは無いリアス部では、必然的に徒歩が多くなる。また、基本的に徒歩移動者ほど避難先までの距離は短く、自動車利用者ほど長い。通常場面では「遠くに避難する人ほど・避難所が遠くにあるため自動車を使う」という傾向が強くなる。

ただし本人、あるいは同伴者が徒歩での移動が困難な場合は、近距離でも自動車が必要となる。また避難開始までに手間取り、時間が惜しいために避難先が近場でも自動車を避難に使う人も出てくる。結果として、「避難所が遠距離だから自動車」とは言いきれず、避難先が近距離でも自動車を利用した人も少なくない。

↑ 避難距離(自動車による避難)(津波・最大波到達直前の避難のみ)
↑ 避難距離(自動車による避難)(津波・最大波到達直前の避難のみ)

現時点の集計結果では、自動車で避難した人の2割近くが500メートル以内、4割近くは1キロ以内の避難先に避難している。

比較的近場の避難所を目指した人が多く、自動車による加速の機会が少ないことも一因だが、自動車による避難においても移動平均速度はさほど高くない。徒歩が時速2.3キロなのに対し、自動車は9.0キロしか出ていない。

↑ 移動手段別避難速度(津波・最大波到達直前の避難のみ)(km/h)※自転車は回答者少数のため参考値
↑ 移動手段別避難速度(津波・最大波到達直前の避難のみ)(km/h)※自転車は回答者少数のため参考値

歩行困難者の避難や一刻も早く避難する理由で自動車を利用したため、近場までの移動となり、スピードが出なかったことも考えられるが、同時に避難の過程で渋滞に巻き込まれたり、スピードを出せるような状態で無かった事例も多かったのは事実。それが分かるのが次のグラフ。

↑ 避難路の問題点(地震発生-日没)(複数回答)
↑ 避難路の問題点(地震発生-日没)(複数回答)

自動車の走行を困難とする事由に多くの回答が寄せられているが、特に二番目の「渋滞して自動車が動けない状態」というのが注目に値する。「動きにくい」「通行しづらい」「混雑している」では無く「動けない」であり、遠因の一部は他の要素(信号が消えている、障害物で道がふさがれているなど)によるものだが、自動車での移動が台無しになってしまった事例。

報道映像や一般投稿者による投稿動画でも、自動車避難者による渋滞で身動きが取れなくなる状態が多数報告されており、特に平野部において顕著に見られる。周囲に高台が見当たらない、見つけにくい、避難所に指定されている場所が遠いなどもあるが、「普段の状態でもっとも高速に移動できる手段」が「非常時にも高速に移動できる手段」とは成り得ない場合もあること(平野部で人口密集地帯、自動車利用者が多い地域ほど、その可能性は高い)を知っておく必要がある。

以前の【「木造より鉄筋コンクリート」「3階建以上はリスク大幅減」…国土交通省、津波被害調査報告第2弾発表】でも触れているが、自動車が使えない、使い難い状態を想定し、近場の高層で頑丈な建造物を探しておき、その場所への避難をあらかじめ考察しておくことも、考察の価値がある選択肢といえよう。


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