「投資から貯蓄へ」の加速化…種類別貯蓄現在高をグラフ化してみる(2010年分データ反映版)

2011/12/30 12:10

今年の12月22日に掲載した記事【年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる(2010年分データ反映版)】を第一本目とし、総務省統計局の【家計調査報告】の公開値をベースにした各種過去の記事について、最新のものとなる2010年分のデータ更新を反映させた上でグラフの再構築、内容の再精査などを行っている。今回は「二人以上世帯」という限定はあるものの、種類別貯蓄現在高をグラフ化して精査した記事の更新を行うことにする。要は「貯金や保険、有価証券など、どのような種類の貯蓄をしているのか、その推移」を見てみようというわけだ。

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今「家計調査」は全国のすべての世帯を対象として家計収支の調査を実施し、各種世帯の特性で区分された集計結果によって、日本国民生活の実態を毎月明らかにし、国の経済政策や社会政策の立案に役立てられる基礎資料を取得・蓄積することを目的としている。調査期間は原則毎月。対象は毎月6分の1ずつが差し替えられる。調査方法は調査票を用い、「調査員による質問」「記入された調査票の回収」などによって行われる。

基軸となるキーワード、「貯蓄」と「勤労者世帯」についてだが、

・「勤労者世帯」…世帯主が勤め人の世帯。社長などの役員は「勤労者以外」。
・「勤労者以外世帯」……世帯主が役員、個人営業世帯、無職世帯(年金生活で世帯主が働いていない場合も含む)など。

・「貯蓄」……負債を考慮しない、単なる貯蓄の額(預貯金、生保の掛け金、有価証券、社内貯金、共済などの貯蓄の合計によるもの。個人では無く、世帯全体の貯蓄)。例えば借金が1億円あっても100万円の貯金があれば、貯蓄額は100万円。

となる。「二人以上の世帯全体」とは、「勤労者世帯」と「勤労者以外世帯」の合計。「勤労者世帯」とはそのうち、「世帯主が勤労者の世帯だけ」を意味する。

さてまずは、二人以上の世帯全体を示したものをグラフ化する。各年の貯蓄現在高積み上げグラフと、各項目の推移を折れ線グラフで示したもの、双方を作成することにしよう。

↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯全体)(万円)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯全体)(万円)

↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯全体)(万円)(項目別・折れ線グラフ)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯全体)(万円)(項目別・折れ線グラフ)

・「保険見直し」の流れや運用利回りの低迷を背景に「生命保険など」は漸減継続
・「貯蓄から投資へ」の動きで2007年までは「有価証券」が増加。しかし2007年以降の金融危機で株価低迷による評価減と共に、リスク資産からの逃避もあり、大幅に減少中
・定期性預貯金は低利回りから漸減傾向。しかし普通銀行においては株価低迷の流れを受けか漸増傾向を見せている(ただし郵便貯金銀行は減少が続く)
・普通預金は横ばい、あるいは微増
・2010年では「投資から貯蓄へ」の動きが継続。定期・通常もあわせ普通銀行への預け入れが増える

などの傾向が見られる。2010年においては、普通銀行に対する定期性預貯金が大きく増加し、リスク軽減の動きが加速しているように見受けられる。昨年同様に、とりわけ「役員」「年金生活者」などが、ある程度大きな手持ちの資産を低リスクなポジションへ移行する様子がよく見える。

勤労者世帯に限定すると……
これを勤労者世帯に限定して、再構築したのが次のグラフ。つまり年金生活者や会社役員など、収入面でイレギュラー的要素を持ちやすい構成世帯を取り除いた母体による結果である。

↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)(万円)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)(万円)

↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)(万円)(項目別・折れ線グラフ)
↑ 貯蓄の種類別貯蓄現在高(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)(万円)(項目別・折れ線グラフ)

・「保険見直し」の流れや運用利回りの低迷を背景に「生命保険など」は漸減継続
・「貯蓄から投資へ」の動きで2007年までは「有価証券」が増加。しかし2007年以降の金融危機で株価低迷による評価減と共に、リスク資産からの逃避もあり、大幅に減少中
・定期性預貯金は低利回りが原因か、漸減傾向。
・普通預金は横ばい、あるいは微増
・2010年においては普通、定期性共に普通銀行への傾注増が確認できる。

貯蓄額総額(赤文字部分の数字)が「二人以上世帯全体」と比べて少ないのは、現役勤労世代から構成されているため。退職金はまだ支払われておらず、経年による積立がさほど無い世帯も多く、さらに住宅ローン返済中の世帯も多いなど、構成上の事情によるもの(貯蓄額をかさ上げする定年退職者・役員が含まれていない影響が大きい)。二人以上世帯全体同様に、普通・定期共に普通銀行の大幅増が気になる。



当サイトの性質上、一番注目すべきは「有価証券」の減少傾向。2009年における2008年からの下げ幅と比べればはるかにましだが、「二人以上世帯全体」ではマイナス3.6%、「勤労者世帯」にいたってはマイナス1.6%という値を示しており、投資から確実に遠のいている足跡が響く。

これが「リスクが高めな株式・株式投資信託から、低めの債券・公社債投資信託への動き」ならまだ救われるのだが、「二人以上世帯全体」では双方とも値を減らしており、明らかに銀行など貯蓄へのスライドが確認できる。市場環境の悪化が消費者の株式投資離れ・「投資から貯蓄へ」を加速化させている様子が良く分かる。そしてこの流れが結果として、昨今の日本市場における出来高減少の一因を作り上げているともいえよう。


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