年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる(2010年分データ反映版)

2011/12/22 12:10

先に【3人までの世帯3/4超…構成人数別世帯数の推移をグラフ化してみる(2010年分反映版)】などで、世帯構成人数の変移やそれに伴う少子化問題について触れた際に、「少人数化は進んでいるが、世代間の金銭的な格差はどのような推移を見せているか」という疑問が頭をよぎった。そこで過去の記事を調べたところ、総務省統計局による【家計調査報告】を元にした、【年齢階層別の収入や負債の推移をグラフ化してみる(2009年分データ反映版)】に行きついた。現時点では2010年のデータが公開されていることもあり、今件も合わせて何回かに分け、この「家計調査報告」周りのデータを更新していくことにした。

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統計データなどは【家計調査報告(貯蓄・負債編)-平成22年平均結果速報-(二人以上の世帯)】から。なお「勤労者世帯」とは世帯主が勤め人である世帯。ただし社長などの役員は「勤労者以外」とする。つまり世帯主が役員、個人営業世帯、無職世帯(年金生活で世帯主が働いていない場合も含む)などは今件データには含まれない。

まずは年間収入の推移。

↑ 年間収入推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 年間収入推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

30歳未満の収入が少ないのは当然として、あとは年齢が上がるにつれて収入も増えていくのは、年功序列制度のたまものといえる。60歳以上になると一度定年退職をした後に(退職前よりは安い賃金にて)嘱託などで雇われた人、アルバイトなどで年金・退職金の補てんをする人なども含まれるので、平均的な収入は落ちることになる(それでも30代よりは多い)。一方、この7年の間に大きな違いは見られない。ただし2010年に限れば、60歳以上「以外」は減少傾向にあるのが目に留まる。

次に「現在貯蓄高」。これは負債を考慮しない、単なる貯蓄の額(預貯金、生保の掛け金、有価証券、社内貯金、共済などの貯蓄の合算。個人では無く、世帯全体の貯蓄を意味する)。例えば借金が1億円あっても100万円の貯金があれば、貯蓄額は100万円になる。この例は冗談のように聞こえるが、多額の住宅ローンを抱えていれば有り得ない話ではない。

↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 現貯蓄額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

60歳以上の平均値が2007年には急上昇している。これは、団塊の世代が定年退職を迎え、退職金を手に入れた該当年齢の人が急増したことによるものと思われる。最新の2010年にも似たような現象が起きているが(前年比プラス221万円)、起因も同じものだろう。

一方でその他の年齢層は2006年以降横ばい-下降の傾向を見せている。そして全体像としては、経年による蓄財の結果がそのまま数字に表れる形であることに違いは無い。つまり「歳を重ねるに連れて過去の蓄財が山積されて増える」、言い換えれば「若年層ほどその年数が少ないので貯蓄額も小さい」という次第。

負債額の推移を見ると、以前の記事で言及したように、2007年、そして2008年に至るまで、特に30歳未満・30歳代が負債を大きく増やしているのが確認できる。

↑ 現負債推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 現負債推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

2007年の全体的な貯蓄の減少・負債の増加は、景気の急激な悪化に対する影響が一端にあると見てよいだろう。そして2010年においては再び似たような状況が生じつつある。特に30-40代の負債額上昇は顕著で、住宅ローンのプレッシャーをはじめ、ますます首が回らない状況が見て取れる。それが確認できるのが次のグラフ。

↑ 住宅・土地のための負債額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 住宅・土地のための負債額推移(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

額こそ違えど「現負債推移」と「住宅・土地のための額推移」は、各年齢層毎の推移がほぼ一致しており、30歳未満-40代の層が2007年-2008年にかけて、少々背伸びをして住宅を購入したようすがうかがえる。逆にいえば、各世帯における負債のほとんどは住宅ローンで占められていると見てもよい。実際、年齢的にほとんど住宅ローンを返済し終えた60代世帯は、負債をあまり抱えていない。

また、2010年に焦点を当てると、30-40代がやはり「背伸び」現象を見せているのに対し、30歳未満はほとんどその動きが確認できない。自らの収入に合わせた、手の届く範囲の住宅取得に切り替えて「背伸び」をしなくなったのか、あるいは取得そのものをあきらめた様子が想像できる。

世帯による負債の大部分が住宅ローンであることから、当然に純貯蓄額(単純貯蓄残高-負債現在高)も、負債の負担が小さい、そして経年による蓄財の大きい高齢層の方が高い値を見せる(【40代までは住宅ローンで首が回らず…二人以上世帯の貯蓄・負債・純貯蓄高をグラフ化してみる】などで示されたデータの裏付けともいえる)。

↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち勤労者世帯)(単位:万円)

特に「背伸びをして住宅を購入した2007年-2008年の30歳未満・30歳代」は純貯蓄額がマイナスに落ち込んでいるのが分かる。住宅ローンは表現を変えれば「住宅という蓄財の証」でもあり、一概に負債としてネガティブにとらえるのは違和感もあるが、それでも毎年一定額をローン返済に回される限りにおいては、精神的・金銭的なプレッシャーは小さくない。



今回のデータでやや気になったのが、30歳未満・30歳代の傾向。特に30歳未満は貯蓄や住宅・土地のための負債額の動きで、近接世代とは異なる動きを見せている。そこで「二人以上の世帯のうち負債保有勤労者世帯」(≒住宅ローン保有者)から、全世代平均と若年層のみを抽出したのが次のグラフ。

↑ 住宅・土地のための負債額推移(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 住宅・土地のための負債額推移(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)

↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)
↑ 純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)(二人以上世帯のうち”負債保有”勤労者世帯)(単位:万円)

30代は(住宅)負債を増やし、貯蓄額が減少している。年収が減っているにも関わらず住宅ローンの水準を維持しようとしたのか、その分「背伸び」をし、ローン額が増えていることは容易に想像がつく。ところが30歳未満になると負債額は減少し、その分貯蓄がわずかながら回復の動きを見せている(それでもローンと差し引きするとマイナスであることに変わりは無い)。手取りが少なくなる中で、それでもローン額を積み増しして住宅を購入しようとする30代(以降)と、最小限のローンしか組まず(あるいは組ませてもらえず)、自分より上の世代と同じような「背伸び」をしない・できない30歳未満との間の、住宅取得に対する動きの違いが見えてくる。

もっともこれは2010年だけのイレギュラー的な動きかもしれない。2011年の発表値を確認した上で、再検証しなければなるまい。

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