最大生産国はアメリカ合衆国で日産1898万バレル…世界各国の石油生産・輸入・輸出量の実情(最新)

2022/11/05 02:44

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2022-1023多様なエネルギー資源が開発されている現在でもなお、化石燃料の代表格で産業、経済、さらには人々の社会生活そのものを支える柱となっているのが石油(原油)。その石油の各国における生産量や輸出量・輸入量の動向は複数の調査機関や公的機関が精査し、公開している。今回は【アメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)】による【公開データベース】の提供値を基に、現在確認できる範囲の状況をチェックしていくことにする。

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生産量と消費量、そしてそれらを並べると


状況精査の掲載の前に、いくつか用語説明を。「1バレル」はよく耳にするであろう、石油・原油の量を測る単位。樽(たる)が語源で42ガロン・158.987294928リットル(約160リットルと覚えれば、日常生活では問題はない)。「確認埋蔵量」とは、現在の技術で経済的に採掘できる量。科学技術が進歩して、より深いところまで採取できるようになれば、これまで以上に「確認埋蔵量」が増える可能性もある。当然、計測ミスや再検証の結果、減る可能性もある。

また「石油」はいわゆる採掘直後の「原油」を指す場合もあるし、採掘した油からガスや水分、その他異物を大まかに取り除いた、精製前のものを指す場合もある(こちらはむしろ「原油(Crude oil)」と呼ぶ場合が多い)。さらには原油を精製したあとの重油や軽油、ガソリンを併せて呼ぶこともある。今回対象となるのは「原油」と表記しているものはそのまま「原油(Crude oil)」、石油生産量・消費量として掲載している「石油」は原油および原油から精製された精製物を指すこととする。

それではまず石油生産量トップ10。今項目は現時点で2021年までの値が取得可能なため、2021年の値で上位を抽出し、その順位で5年分の動向も併記した。

↑ 石油生産量トップ10(万バレル/日)
↑ 石油生産量トップ10(万バレル/日)

意外に見えるが、EIAの公開データの上では、現在石油生産量のトップを行くのはサウジアラビアでもロシアでもなく、アメリカ合衆国。しかもこの数年で大きな伸びを示している。これは言うまでもなく、同国によるシェールガス・シェールオイルの商業ベースでの量産技術開発とその普及に伴い、生産量が飛躍的に増加した結果。カナダもその恩恵を受けており、アメリカ合衆国ほどではないものの、伸びを示している。

続いてこの生産量トップ10の国それぞれにおける、自国内の石油消費量を併記する。単純な足し引きで概念レベルの考察となるが、生産量よりも消費量が多い場合には、どこかから輸入しなければならない。逆なら備蓄や輸出が可能になる。なお消費量は現時点で2019年分の値が最新値であることから、その値を適用する。

現実にはもっと複雑で、石油のうち具体的にどのような生成物なのかあるいは原油なのか、そして国内に精製施設のあるなしも考慮しなければならない。さらに精製品を直接輸出入する場合もある。もちろん原油ベースにおける品質の違いもあり、「生産量 > 消費量」でも輸入する場合も少なくない。あくまでも概念的、目安的なものと見てほしい。

↑ 1日あたりの石油の生産量トップ10(2021年時点)と、その国の石油消費量(2019年時点)(万バレル/日)
↑ 1日あたりの石油の生産量トップ10(2021年時点)と、その国の石油消費量(2019年時点)(万バレル/日)

アメリカ合衆国は大量の石油を産出しているものの、それでもなお石油消費量の方が多い。他方、石油輸出国として知られているサウジアラビアやロシアでは大幅に生産量が超過しており、その実情を改めて認識できる。イラクやUAE、イラン、クウェートも同様。他方中国は大幅に消費量が生産量を超えており、不足感が強い状態となっている。

輸出量と輸入量はどうだろうか


EIAには輸出・輸入のデータも収録されている。そこでそれらも確認する。

↑ 石油輸出量トップ10(万バレル/日)
↑ 石油輸出量トップ10(万バレル/日)

↑ 石油輸入量トップ10(万バレル/日)
↑ 石油輸入量トップ10(万バレル/日)

石油の輸出量トップはサウジアラビア、次いでロシア、続いてイラク、さらにカナダ。石油産出・輸出国として知られている国々が並ぶ中で、カナダが上位に入っているのを意外に思う人もいるかもしれないが、北米でのシェール革命に伴い、シェールオイルを輸出できるようなったのが増加の主要因。アメリカ合衆国も原油の輸出量は増えて、2018年時点では世界で第7位。

他方輸入量では、中国が最上位。年々増加の一途をたどっている。国内の経済成長に伴い、国内生産だけでは充足しきれなくなったため、輸入を増やしている次第である。次いでアメリカ合衆国だが、大量の原油を生産してもなお、国内消費をまかなうには不足しており、多くの原油を輸入している。最近ではシェールガス・オイルの恩恵を受けて国内生産で充足できる量が増えはいるが、それでも輸入量は増加傾向を継続している(直近年では前年比で落ちたが)。



石油の生産量では世界でトップのアメリカ合衆国が、それでもなお大量の原油を輸入し、消費しているのを見るに、いかに同国が巨大な経済力を有しているかが改めて認識できよう。

アメリカ合衆国の石油事情の変化は、本文中でも何度か触れているシェールガス・オイルの採掘に係わる技術革新と、その普及によるところが大きい。元々存在は確認されていたが、それが採算ベースで採掘できるようになったことで、同国のエネルギー戦略にも大きな影響・変化が生じている。

ちなみに石油消費量の上位陣は次の通り。

↑ 石油消費量トップ10(万バレル/日)
↑ 石油消費量トップ10(万バレル/日)

アメリカ合衆国、中国の上位は想像通りだが、インド、日本、ロシアはともかく、サウジアラビアも上位に入っているのに意外さを覚える人もいるかもしれない。また、日本の石油消費量の減少が目立つ形となっているのも覚えおくべきだろう。

なお埋蔵量に関しては国際石油資本BP社が毎年公式サイト上に公開する、エネルギー関連の白書「Statistical Review of World Energy」を基にした記事群【SRWE(EP)&図表エネルギー アーカイブ】から確認してほしい。


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