冬物商材が鈍い…2011年11月景気ウォッチャー調査は現状・先行き共に低下

2011/12/09 12:00

内閣府は2011年12月8日、2011年11月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは水準値50を割り込む状態に違いは無く、先月からは下落、先行き判断DIも50未満を継続する形で先月から再び減少した。結果として、現状・先行き共に低下の傾向を示している。基調判断は「景気の現状は、円高の影響もあり、持ち直しのテンポが緩やかになっている」とし、回復基調が円高を背景に足踏み状態が続いていることを示している(【発表ページ】)。

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先行き不透明感と円高が圧力に
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年11月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス0.9ポイントの45.0。
 →2か月ぶりの下落。「やや良くなっている」が減り、「やや悪くなっている」が増加している。
 →家計ではテレビの駆け込み需要の反動は続き、気温が高めに推移したことで冬物商材の動きが鈍り、低下。企業は震災からの持ち直しに加え、タイの洪水に伴う代替生産の動きはあったものの、円高の影響、さらにタイ洪水による部品供給の遅れが影響して低下。雇用は円高で企業が慎重姿勢を示していることから低下。
・先行き判断DIは先月比でマイナス1.2ポイントの44.7。
 →タイ洪水の影響からの回復、震災の復興需要への期待から、企業で上昇。円高をはじめとするさまざまな先行き不透明感を受けて家計、雇用部門で低下。
テレビの駆け込み需要の反動は【テレビ市場、大・縮・小】などにもある通り、来年以降が本番となるが、現時点ですら無視できない影響が出始めている。さらに「先行き不透明感」「根拠の無い期待感に対する、現実を認識した上での反動的失望」に、「急激な円高の継続」「タイの水害」が加わり、多方面で大きな影響を与えている。

家計はつかみどころの無い不安、企業は淡い期待
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分は上げ下げにばらつきがあるが、敢えてまとめるとすれば「小売以外の家計動向はやや好調」「企業や雇用は低調」と表現できる。娯楽系以外の項目がマイナスとも読みとれよう。一応いまだに雇用関係の値は50超だが、少しずつ削り取られていく雰囲気。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、それ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし今年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブを描き、7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでおり、今回月もその傾向は継続中。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復したが、
早くも失速、低迷継続。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

そして今回の東日本大地震の影響もまた、傾向としてはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態といえる。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、震災後の急降下に連なる大きなリバウンド的上昇が終わり、再び現実を見据えた動き(一言で表現すれば「低迷」)に移行したと判断して間違いない。

景気の先行き判断DIは先月動向から続いて減少している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい雇用指数だが、震災後の反動で大きく上昇したが7月が天井で、先月に続き下落を見せている。一応唯一基準値の50を超えてはいるが、この動きが継続するのなら、「現状」同様に来月か再来月での50割れは想像するに難くない(余”値”はあと0.5ポイント)。家計動向全般に先行き不安感を反映する形でマイナス値が連なり、企業は復興需要への期待からプラスを示しているが、円高の影響継続懸念や復興需要そのものへの疑いもあり、上げ幅は大きくない。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、それを天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほとんど変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなった。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに凌駕している。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度。

そして今月は「現状」と同様の傾向を見せ、リバウンド的な回復は終焉を迎え、緩やかな減退傾向への歩みが確定した形となった。特徴としては家庭動向は「将来へのつかみどころの無い不安」、企業動向は「将来への淡い期待」という、いずれも不確定要素の多い対象への想いが数字を左右している。

さらに雇用関連の値の下げも継続中。雇用関連の値も大きく下値を見せ、他の値に近づくようならば、強い警戒をする必要がある(不景気の期間においては、雇用関連値が他の値を下回る傾向があるからだ)。

景気の良い話・悪い話の二極化
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・震災復興のための関係者の流入に加え、地元からの来客も多く、宿泊、レストラン、宴会部門共に前年実績を上回り、来客数と売上の好調が続いている(都市型ホテル)。
・年末に向けて各種会合が多くなり始めている。家族での食事回数も増えてきている(一般レストラン)。
・今月は来客数が少ない日が多く、購買意欲に慎重さが目立つ。基本的に高額商品は控える傾向にある(一般小売店[自然食品])。
・月前半は高気温により冬物重衣料が不調であった。後半の気温低下により回復を見せるものの、前半のマイナスを補てんできていない。クリスマス商戦の前哨戦は低調な出だしとなっている。高額品の動きも鈍くなっている(百貨店)。
・地上デジタル放送への移行終了の影響、家電エコポイントの反動が続き、売上が落ちている(家電量販店)。
・タイの洪水の影響で売上予定車の入荷が遅れ、売上が大幅に下がっている。今月と来月はこの状態が続き、売上は苦しくなる(乗用車販売店)。

■先行き
・復興予算が成立したので、今後、震災復興事業が本格的に執行されれば、当地域の景気は総合的に上向いていくと予想される。特に建設業が下支えとなり、今後数年間は上向きで推移するのではないか(コンビニ)。
・所得水準も上がらず、節約傾向はますます強くなると見ている。景気が好転する材料が見つからない(スーパー)。
・東日本大震災の被災地へ施工業者、特に建物解体業者が大量にシフトしているようで、すべての工種において施工単価が値上がりしており、コスト上昇が見込まれる(住宅販売会社)。
などとなっている。消費者全体に購入意欲の低下が見受けられるのが気になるところ。また、例えば(上記には記載していないが)企業動向周りでタイの水害に関してプラス・マイナス双方において大きな影響を受けた企業が確認できるなど(プラスは代替生産の依頼でパンク状態、マイナスは部品不足で生産が出来ない)、景気が二分されている雰囲気も見られる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
痛手は外需企業から内需企業へも。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
不安要素や失策、対外要因で
幾度となく状況悪化へ。
東日本大地震で急降下後は
反動で跳ね上がるも、
国内外の現状を反映し、
心境は再び失速。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に東日本大地震前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「震災前における」今後の動向は不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとする予想だった。とりわけ原油をはじめとする資源価格の高騰がじわじわと市民生活に影響を及ぼしはじめており、(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消すかもしれなかった。

努力イメージしかしながら今年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う大幅な数字の下落からも分かるように、東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上においても大きな衝撃となって現れている。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じる間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の国レベルでの施策への不信の加速化、電力供給不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」「委縮させる」ような雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」。

「震災による中期的な不景気が発生しする可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化」している(震災前から不景気だったため、気が付きにくいだけの話)。マインドの低迷は継続し、急激に過ぎる円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与えている。各種データから「余震は完全に過ぎ去った」と断じることが難しい状況も、人々の不安感を駆り立て、「保守化」を後押ししている。

いまだに徴候が見受けられる余震の動向を見極め、鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題といえる。そしてこれ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、自らの長所を活かす形で、最大限行う事が求められよう。

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