油脂の上げと砂糖の下げが目立つ展開(2011年11月分世界食糧指数動向)

2011/12/10 12:00

国連食糧農業機関(FAO)が定期的に発表している【世界食料価格指数(FAO Food Price Index)】が高い水準を維持している。このデータは1990年以降にFAOが世界の食料価格の変化を監視・統計した上で指数として発表しているもので、各種商品市場の動向、さらにはそれと深いかかわり合いのある政治情勢を判断する際に、検証材料となりうるものである。そこで当サイトでは定期的、ほぼ毎月に渡りデータの更新・グラフの再構築を行うことにしている。今回はその2011年11月分の反映版となる。

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世界食料価格指数(FAO Food Price Index)の詳細や項目名の定義は【世界の食料価格の推移(FAO)】などを参照のこと。

まずは、収録されている全データを使った折れ線グラフを生成する。中長期的な食料価格の変移概要がつかめる、資料性の高いものだ。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(1990年-2011年11月)

砂糖は元々相場変動性の高い食料品のため変動が激しいものの、それ以外は2005年前後までは50-150の領域でほぼ留まっていたことが分かる。ところが先の「サブプライムローンショック」に始まる2007年以降の市場動乱を皮切りに大きなうねりを見せ、全体的に上昇傾向にある。特に「サブプライムローンショック」の急上昇とその後の大きな反動による下落の後に起きた「リーマンショック」(2008年9月)以降は、全体的に上昇する一方。ただしこの数か月はいくつかの項目で減少する動きも確認できる。

目に留まる点として一連の金融危機の前に起きた、2005年後半あたりの砂糖の高値がある(赤三角で示した部分)。これは干ばつによる砂糖の不作(ブラジルやタイなど)に合わせ、新興国での需要拡大が目覚ましいものになってきたこと(生活水準が向上すると甘いものの需要が増える)、さらには原油価格の上昇に伴いエタノール利用度が高まり、エタノールの原材料となるサトウキビへの需要が増加したのが原因。当時は「25年来の最高値」と大きな騒ぎとなったが、昨今はそれをはるかに上回る値を算出し続けており、そのような言い回しも無意味なものとなりつつある。

続いて、2007年以降に期間を絞り、直近の金融危機以降の動向が分かりやすいものに生成し直したものがこちら。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2011年11月)

砂糖の2010年初頭からの急落ぶりが目立つが、これは元々過熱感のあった相場に対し、豊作が伝えられたをきっかけにする反動の結果。しかし価格上昇の原因である需要の拡大(新興国、特に中国)に伴う需給バランスの不安定感が解決するはずも無く、再び上昇をはじめている。

今回計測月となる11月においては多くの値で10月同様に下げる動きを示している。11月の総合指数215.0(暫定値)は昨年10月(205.0)以来の低い基準。説明には「多くの項目でさほど変わった動きは無いが、砂糖の減少分が油脂の増加分を打ち消す形となった」とある。もっともこれでも昨年同月と比べれば高値に違いは無く、生活の不安要素を多少ながらも積上げる大きな要因となっている。

昨今の食料価格の上昇ぶりを確認するため、各指標の前年同月比・前月比を併記し、数字の変移が分かりやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2011年11月)
↑ 食料価格指数前年同月比/前月比(2011年11月)

直近月の前月比では直上で触れているように、多くの項目で横ばい・油脂の上げと砂糖の下げが打ち消し合いをしているのがはっきりと分かる。そして年ベースで見ると、食肉の上げが著しい。リリースでは今月の動きについて「今年6月以降総合値は下落を続けている」「穀物の下落はロシアでの豊作と在庫放出が原因」「油脂上昇は将来的な需給バランスへの懸念、中国など新興国での需要拡大、大豆油の減産、バイオディーゼル産業への転換などが起因」「砂糖の下落は各国の豊作によるもの」と説明している。

直近では昨年の秋口が価格のピークだったため、前年同月と比べても上昇幅がおとなしめ、直近ではむしろマイナスを示し続けており、価格上昇に「冷やし」が入っている可能性が高い。食品群の値下がりは調達を容易にするものだが、その原因が豊作や生産量の増大、在庫放出だけでなく「経済後退で需要が減ったから」でもあることから、素直に喜ぶわけにもいかない。あらためて需給バランスの難しさを確認させてくれる。



食料価格の上昇は新興国における需要の急速な拡大に加え、バイオエタノールの材料に転用される問題、天候不順や地力減退による不作、さらには商品先物市場への資金流入に伴う相場の過熱感と合わせ、価格が安くなる要素を見つけにくい。大きな需給関係のバランスを動かす事態が発生しない限り、中期的には値を上げ続けることになる。一方で直上でも触れているように、ここ数が月は先進諸国、そしてそれに連動する形で新興国の経済上の歩みの乱れが需要減・価格下落を導いており、数少ない「価格が安くなる要素」が発動している状況。

一連の記事からの繰り返しになるが、食事のベースとなる穀物価格、そして贅沢品のベースとなりやすい砂糖や油脂の高騰は、社会情勢を不安化させる要因となる。昨今の世界各地における情勢不安・差別化問題に対する運動拡大化も、要因の一つに食料価格の上昇があると考えるのが道理。それだけに食料価格を世界的な視点で眺められる世界食料価格指数には、十分な留意が求められる。

昨今に至りようやく峠を越えたと思われる、タイ周辺での水害が今件の食料価格指数、とりわけ砂糖の値にどのような影響を与えるか、今後の値動きが気になるところだ。

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