「本の詳しい情報が知りたい」そのきっかけは何だろう?

2011/11/18 06:46

このエントリーをはてなブックマークに追加
調べ物をする女性日本書籍出版協会が総務省の「新ICT利活用サービス創出支援事業(電子出版の環境整備)」に提出して採択され、公知されている【「次世代書誌情報の共通化に向けた環境整備」プロジェクト】の公開情報には、出版市場の現状を探る多様なデータや調査結果が盛り込まれている。今回はその中から、「書誌情報」(書籍やコミックなどの、名前や値段、出版社など各種情報)の必要性などについて調べた項目を抽出し、眺めてみることにした。


スポンサードリンク


今調査は2011年1月24日-28日までインターネット経由による事前調査(本調査の調査母体を「読者をする人」のみとするための対象者スクリーニング)、31日-2月2日まで本調査が行われ、事前調査の有効回答数は5480人・本調査での有効回答数は2000人。本調査の男女比は1対1、年齢階層比は10代と20代・30代・40代・50代・60歳以上で均等割り当て。

本屋やコンビニに立ち寄った際に目に留めた本を手に取る、定期購読で入手する、インターネット上で薦められてそのまま購入するなど、「この本が欲しい」との思いをそのまま現実化できる場合はともかく、何らかの「きっかけ」で本が欲しくなることは良くある話。しかしその本が特定できなければ注文は不可能。また本が特定できても「欲しい」という想いを、そのまま実行に移して良いかの検討が必要になる(「欲しい」本を即時購入しては、書籍代がいくらあっても足りない)。あるいは「欲しい」衝動も詳しい情報に目を通した上で考え直すと、その思いがしぼんでしまうことも多い。

今調査では「書誌情報が必要なケース」を尋ねているが、それによると本の購入につながりやすい「書誌情報が欲しい」との欲求のきっかけになる、もっとも大きな要因は「好きな著者の新刊が出る」で6割近くに達していた。

↑ 書誌情報が必要なケース(複数回答)
↑ 書誌情報が必要なケース(複数回答)

小説・文庫、漫画にしても、その作家の作風にほれ込む人は多い。「この先生の作品なら、別出版社からのものでも、テーマが別のものでも、きっと自分の好みの作品に違いない」という強い期待が持てるわけだ。特定の作家の作品を集めたファンサイト、書店の同一作家発刊のコーナー区切りがいかに有効か、書籍購入者の需要を満たしているかが分かる。

次いで多いのは「新聞・雑誌に書評が出た」。調査母体の世代区分も一因だろうが、新聞や雑誌で紹介された本に関心を抱き「ちょっと気になるので詳細を知りたい、買ってみようか」というパターンは案外多い。新聞一面、経済面などの下部分の広告が今だに盛況なのも、成果が上がっている現れ。

やや意外に思えるのが「本屋・車内などのPOPを見た」。本屋のPOPは工夫次第で売上を何倍にも伸ばすという話はよく耳にする(【書店で手書きの宣伝文が注目、売上に影響を与えるカリスマ店員も登場】【目を通す人は76.3%…お店のPOP広告、目を通してる? 効果ある??】などを参照)。また電車やバスの新刊公知のポスターもしばしば目に留まるが、それらの影響力も軽視できない。

「ブログやSNSで評判」「アマゾン等の書籍サイトでオススメ表示」は比較的値が低い。これは直上にもあるように調査母体の世代区分の他、これらインターネット上の情報は「その場で必要な書誌情報がすでに公知されている」場合が多く、さらに追加情報を求めなくても済むのが主要因と思われる。

さて「書誌情報が必要だ」という思いが生じた場合、具体的にはどのような情報が求められているのか。圧倒的に多いのは「タイトル」と「著者名」。

↑ 必要とされる書誌情報(複数回答)
↑ 必要とされる書誌情報(複数回答)

極端な話、この2項目が判明すれば本屋で探し、あるいは注文することが出来る。インターネット上でも該当する本の特定は容易となる。学校内で例えれば、学年・クラスと名前が分かれば、ほぼすぐに一人の生徒が特定できるようなもの。

一方で「内容要約」や「金額」が上位についてる。これは、チェックした本が果たして購入に値するか否かの判断に必要となるもの。「内容は最高、タイトルや出版社も確認できた。しかし価格が高過ぎて、自分の手には負えない」「好きな作者の作品で価格も相応、でも内容的には自分の趣味趣向とは別ジャンルで買うほどのものではない」などの例のように「気になるが買うか否かの判断」を下す場合、重要な要素となる。

視点を変えて考えれば、最低限「タイトル」「著者名」「内容要約」「金額」まで情報が用意してあれば、相当数の「本が欲しい」と思っている人の需要に応えられることになる。無論最終的には「出版社」「発売日」などの情報も必要になる場合も多いが、意志決定の際にはさほど重要視されないようだ。



本文中でも触れたが「書誌情報が必要なケース」と「必要とされる書誌情報」の上位を組み合わせると、書店やウェブサイト上で書籍を上手に紹介し、多くの本好きの需要に応える体制を創ることが可能となる。その方面で盛況な本屋、サイトを今件項目の視点で見直すと、「なるほど」と思う点も多いはずだ。

最後に余談となるが、「書誌情報が必要」の項目で「新聞・雑誌に書評が出た」と回答した者が読んでいる新聞は次の通り。

↑ 書誌情報が必要なケースで「新聞・雑誌に書評が出た」回答者の購読新聞(複数回答)
↑ 書誌情報が必要なケースで「新聞・雑誌に書評が出た」回答者の購読新聞(複数回答)

「クオリティーペーパー」を自負する朝日新聞が全国紙ではトップだが、それと同じ比率(回答数ではわずかに上)で地方紙が最上位についている。これは出版社の立場で見れば「広告効果の高低」をも意味する値となる。ここでもあらためて、地方紙の力強さが再確認できるというものだ。


スポンサードリンク


関連記事


このエントリーをはてなブックマークに追加
▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2024 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー|Twitter|FacebookPage|Mail|RSS