「オール投資」がわずかに伸び、あとはほぼ壊滅…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2011年7月-9月)

2011/11/16 06:46

【社団法人日本雑誌協会】は2011年11月10日、2011年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2011年の7-9月期とその前期、2011年4-6月期における印刷実績を見てみることにする。

2011年の7-9月期とその前期、2011年4-6月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2011年の7-9月期とその前期、2011年4-6月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2011年7月-9月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「プレジデント」が断トツで印刷部数が多い状況に変化はない。一方で全般的に、前期より下げている状況が、このグラフからも容易に確認できる。ビジネス誌は一般雑誌同様に、震災直後に(幾つかは半ば世情を「煽(あお)る」形で注目を集めた結果として)むしろ売上を伸ばしたが、今期はすでにその勢いも無く、ほぼ失速状態にある。特に後述するが、トップを走っている「プレジデント」の落ち方が著しい。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られないはず。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年7-9月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年7-9月、前期比)

前回大きな伸びを示した「COURRiER Japon」「PRESIDENT」も合わせ、ほぼ全誌がマイナス状態。かろうじて「オール投資」がプラスだが、これも実数値は2.5万部で、プラス0.5%は誤差の範囲に過ぎない。エンタメ色の強い雑誌は「4-6月期に震災の影響を受けて下落」「7-9月期は回復の気配で戻し」という動きを見せたが、ビジネス系は前述の通り逆に「4-6月期に震災関連の情報展開を活かして底上げ」「7-9月期は前期の『特需』も無くなり失速」という流れにあるようだ。

「\en SPA!」はいつもの下落ぶりなのでさておくとして、今回注目すべきなのは上記でも挙げた「プレジデント」。前期大きく伸ばしたことの反動の面も否めないが、その前の期(2011年1-3月期)と比べてもマイナス6%強の下落ぶり。特集内容も多岐に及び、単にお金に直結する話だけでなく、話し方や「怖い噂」の科学、運をつかむ習慣など、ビジネスマンの心をくすぐるような企画構成の号が該当期で発売されていただけに、この下げ方は気になる。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年7-9月、前年同期比)

今期は前年同期比において、該当誌すべてがマイナス。過渡期ということもあるのだろうが、マイナス20%超えが2誌もあるあたり、状況の深刻さを認識せざるを得ない。前期の言及とほぼ同じ言い回しだが、マイナス値が2倍になっているあたり、さらに深刻さが増しているのがお分かり頂けるはずだ。



2008年秋のいわゆる「リーマンショック」で多くの人が経済情報に注目した時期が直近における天井となる形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトへの(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加はゆるやかなものとなり、あるいは減少に転じている。しかしパソコン、そして携帯電話、スマートフォンなど各種モバイル端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速の真っただ中にある。

特に日々、どころか時間・分単位で情勢が変化する経済系のジャンルでは、記事の作成と読者への披露展開の間に時間差が生じる雑誌の不利さは他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)とは比べ物にならないくらい大きい。スピード感で例えれば、インターネット系媒体は紙媒体における「号外」を逐次配信しているような感すらある。昨今においては、即時対応ができる今ジャンルのインターネット上での情報展開は、ますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持することなく、現状を正しく認識・分析し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みとは何か」という基本原理に立ち返り、同時に「新しいメディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いか」といった模索をすること。その際に固定概念や既得権益にとらわれることなく、先を見据えて柔軟な発想を行うこと。さらにそれらの答えを見つけ出したら、躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が早急に求められている。そしてその進化は対象や環境こそ違えど、昔から常に、あらゆる場面で求められていたことに過ぎない。

環境の変化に対応・進化できない生物が種としてどのような結末を迎えるかは、これまでの歴史が十分すぎるほどに語っている。そしてそれらの動きにもっとも敏感な、今記事で対象となる雑誌達自身こそが一番よく知っているはずなのだが。

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