「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」共に休刊で最後に…少年・男性向けコミック誌部数動向(2011年7月-9月)

2011/11/11 12:10

【社団法人日本雑誌協会】は2011年11月10日、2011年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向・実情を示すものとしては、各紙・各出版社が発表している「公称」部数より精度が高く、検証素材としても有益なものである。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説や、「印刷証明付部数」など文中に登場する用語の説明は、一連の記事まとめ記事【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明が行われている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。「週刊少年ジャンプ」がトップにあることに違いはない。

2011年4-6月期と最新データ(2011年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年4-6月期と最新データ(2011年7-9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで284万1700部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は実績のもとに維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも違いは無い。

今回も前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由からデータが失われたものは無い。新規追加分も皆無。小学館の「ゲッサン」は今回で三期目となり、今回も前期比込みでの掲載。ただ、掲載開始時期から数字が上向くことなく漸減しているのが気になる。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2011年4-6月期と最新データ(2011年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
↑ 2011年4-6月期と最新データ(2011年7-9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売された。しかし、両誌とも今期に至ってもデータの登録は無し。このような条件下で枝分かれした場合、どちらが勢いを得るのか(読者の支持を集めるのか)、その観点でも興味深い実例であり、早期のデータの開示を望みたい。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化を試みることにする。季節変動「など」を無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

今件は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかの割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも該当誌は無し。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年7-9月期、前期比)

今期は、東日本大地震・震災による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の影響が出た前期の反動もあり、中堅層雑誌の下げ幅がやや大人しいものとなっている。一方で前期『ウルトラジャンプ 2011年06月号』から連載を開始した、「ジョジョ」シリーズ第8部の「ジョジョリオン」によるロケットスタートで大きく部数を伸ばした「ウルトラジャンプ」は、ほぼ平常の部数に戻り、前期の上昇分の反動が出た形となった。また、下げ幅上位の常連「月刊少年ライバル」は相変わらずの下げ方で、この2年で部数はほぼ半減。そろそろ状況好転の動きを見せて欲しいところ。

「ジャンプスクエア」は今期では目立つ形の上昇。インターネットなどで青年層の口コミ効果が良く現れる作品が多数掲載されていることも、他紙と比べて堅調さを見せる要因といえる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2011年7-9月期、前期比)

今回は該当紙の約半数が前期比プラス。マイナスを示しているものもその比率は小さく(マイナス5%以上の「赤棒」が今期は皆無)、前期において震災の影響が大きく出ていたことがうかがえる。また唯一プラス5%超を見せた「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」をはじめ、「コミック乱」「コミック乱ツインズ」共に、「コミック乱三兄弟」は揃ってプラス。雑誌購読者の壮齢化の影響もすけて見えてくる。

スーパージャンプとビジネスジャンプ最終号なお【隔週刊誌「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」の統合月2回刊誌、「グランドジャンプ(GRAND JUMP)」に決定】などで伝えている通り、「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」は共に今年10月でそれぞれ休刊。次回の定期更新記事からその姿は消えることになる。一方で両誌連載陣などを再構築した上で、11月16日には「グランドジャンプ」が月2回刊誌として、12月には「グランドジャンプPREMIUM」が月刊誌として再出発する。出版社の方針次第だが、「印刷証明付き部数」へのデータ反映もじきに行われることだろう。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2011年7-9月と、その1年前の2010年7-9月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年7-9月期、前年同期比)

1年単位での変移を見ると、以前注目誌としてスポットライトを当てた「ドラゴンエイジ」がトップ。直近期での印刷証明部数は3.1万部だが、記録が残っている限りでは一時落ち込んだものの、2007年-2008年度レベルの水準を維持している。「これはゾンビですか?」の例にもあるように、アニメ化などで話題となった作品への注力を推し進め、地道に立て直しを図っている雰囲気が強い。

マイナス域では部数が多いにも関わらず減少率も大きな「コロコロコミックス」の存在が気になる。同誌は期単位では掲載作品や付録、取り扱うタイトルなどで10万部単位の調整を行っているが、通常変動域の範囲からはやや逸している。これは前期から続く流れで、少々気になる動向として注目しておきたい。一方で「月刊少年ライバル」は数万単位なのでぶれが生じやすいこともあるが、印刷証明部数は一様に減少を続けており、先が非常に不安視される(前期記事同様)。

そしてほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのも前回から変わらない。震災の影響が大きかった前期と比べても、前年同期比での下げ幅にさほど変化がない点を見る限り、業界全体の市場動向の深刻な不調が改めて確認できる。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年約1割の売上減少は、容易ならざる事態……と、ここ数回にわたりほぼ同じ言い回しを使わねばならない状況。サンデー・マガジン両誌の発売日にコンビニへ足を運んで「市場調査」とばかりに現状を確認するに、前誌はひと山、後誌はふた山の平積みがされている場面を見ると、そのまま両誌の勢いを見ているようで、胸が痛む。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2011年7-9月期、前年同期比)

前期分記事と比べると5%以上の下げ幅を示す雑誌における勢いに変化はほとんど無いものの、上向きな雑誌や下げ幅が少なめの雑誌が増えていることから、前期と比べて状況がやや良くなっているのが分かる。やはり震災の影響から立ち直った分が加算されているだろう。ただしマイナス圏でマイナス20%超の動きを見せるものが2誌も出るなど、二極化した雰囲気。プラス圏は「ガンダムエース」「ヤングアニマル」「コミック乱」シリーズなどプラス領域でお馴染みの顔ぶれがそろっている点からも、「二極化」の仮説に対する信ぴょう性は高い。

なお下げ率上位にある「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」は上記で触れている通りすでに休刊し、融合・再構築の上リニューアル誌として新創刊される。一方「モーニング2」などの継続的な不調ぶりも目に留まる。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては東日本大地震の影響(直接の購入性向の減退に加え、インクや紙、付録用素材の不足)が加味された前期からの比較であり、表向きは多少の持ち直しの気配も感じられる。しかしその底上げ分があってなお、多くの雑誌でマイナス値を継続している状況を見るに、全体として売上の減少傾向が継続している事実を認めざるを得ない。

特に「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返す雑誌が複数存在している状況は、今後さらに。直上で触れた「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」両誌の統合のような、雑誌の再編が起きる可能性を示唆している。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れている通り、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」事態が進行している。雑誌販売の一番の窓口といえるコンビニでも【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2011年「出版物販売額の実態」版)】で示した通り、出版物販売額は減少のさなかにあり、「雑誌離れ」が進んでいるのが分かる。

逆に堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽が無いわけではない。さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開、さらには電子出版による「雑誌」の展開も検証課題として挙げられる。

携帯情報端末の浸透が、一般携帯電話からスマートフォンに移行することにより、雑誌の立ち位置はますます不安定なものとなっていく。紙媒体としての雑誌のスタイルを維持するにせよ、他メディアとの連動性を高めるにせよ、大胆なかじ取りが今、すぐにでも、求められている。足元の床が崩れ落ちてから、靴のヒモを縛ったのでは間に合わないのだから。

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