テレビの駆け込み需要の反動続く…2011年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き低下

2011/11/10 06:30

内閣府は2011年11月9日、2011年10月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DIは水準値50を割り込む状態に違いは無いものの先月からは上昇、先行き判断DIは50未満を継続する形で先月からさらに減少した。結果として、現状上昇・先行き低下の傾向を示している。基調判断は「景気の現状は、円高の影響もあり、持ち直しのテンポが緩やかになっている」とし、回復基調が引き続き円高を起因とした足踏み状態が続いていることを示している(【発表ページ】)。

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円高に加えタイの水害の影響も
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年10月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス0.6ポイントの45.9。
 →3か月ぶりの上昇。「やや良くなっている」が減ったが、「やや悪くなっている」「悪くなっている」も減少し、「変わらない」が増加している。
 →家計ではテレビの駆け込み需要の反動は続いているが、気温低下による季節商材の堅調さで上昇。企業は円高の影響は継続中だが受注の増加を受けて上昇。雇用は円高で企業が慎重姿勢を示していることから低下。
・先行き判断DIは先月比でマイナス0.5ポイントの45.9。
 →生産活動が回復する一方で、消費者と企業の双方が先行き不透明感を持つこと、円高の影響、さらにはタイの水害の影響に対する懸念が広まり、企業・雇用部門でマイナス。
駆け込み需要の反動は【テレビ市場、大・縮・小】などにもある通り、むしろこれからが本番となるが、現時点ですら少なからぬ影響が出始めている。さらに「先行き不透明感」「根拠の無い期待感に対する、現実を認識した上での反動的失望」に、「急激な円高の継続」「タイの水害」が加わり、多方面で大きな影響を与えている。

企業は厳しい目で目の前と先を見据える
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分は上げ下げにばらつきがあり、まとまった傾向が見られない。敢えて表現すれば、企業動向は上げ下げも幅が小さく、事実上横ばいと評しても良い、というあたりか。ただし雇用関係の落ち込みぶりが少々大きく、唯一50超の項目にやや危機感が生じてきたのが気になる。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、「前回の」(つまり2001年当時の)下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、それ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた(2010年頭から2011年2月あたりまで)。

しかし今年3月において、東日本大地震・震災の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落する。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブを描き、7月分では震災直前の水準にまで戻す形となった。合計値で50を大きく超えたのは2007年夏の金融危機以来のことだが、これは震災による大急落のリバウンドの色合いが強いと解釈した方が、道理は通る。そして「リバウンド」が(ダイエット以外では)長続きしない世の常の通り、8月以降は失速し、再び50を割り込んでいる。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・震災前までの状況に
リバウンド的な回復したが、
早くも失速、低迷中。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

そして今回の東日本大地震の影響もまた、傾向的にはリーマンショック時の下げ方に近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「墜落」に近い状態といえる。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンが継続すれば、やはり同じパターンの動きを見せ、「その時点での」景気状況がしばらく続く可能性が高かった。しかし今回、東日本大地震・震災の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう。夏の「合計値50超」後の動きを見る限り、震災後の急降下に絡んだ大きなリバウンド的上昇が終わり、再び現実を見据えた動き(一言で表現すれば「低迷」)に移行したと判断してほぼ間違いない。

景気の先行き判断DIは先月動向から続いて減少している。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

「現状」のみならず「先行き指数」でも他の指数より上乗せされやすい雇用指数だが、震災後の反動で大きく上昇したが7月が天井で、先月に続き下落を見せている。一応唯一基準値の50を超えてはいるが、この動きが継続するのなら、「現状」同様に来月か再来月での50割れは想像するに難くない。また冒頭でも触れたように、家計動向はそれなりに安定しているものの、企業動向は円高への懸念が高まり、下げの雰囲気が継続している。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいはさらに下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の不安定感を極限まで増殖させ、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、それを天井とする動きを続けていた(この状況も「現状」とほとんど変わらない)。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなっている。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに超えたもの。下落による値の底値は、「リーマンショック」と「2001年の不況期の最下層」との中間程度となった。

そして今月は「現状」と同様の傾向を見せ、リバウンド的な回復は終焉を迎えたのが確定した形となった。特徴としては家庭動向はまだわずかながらも上げる項目があるが、企業では一様に下げており、強い警戒感が現れている。さらに雇用関連の値の下げも継続し、他の項目とのかい離が縮小しているのも目に留まる。雇用関連の値も大きく下値を見せるようならば、強い警戒をする必要がある(不景気の期間においては、雇用関連値が他の値を下回る傾向があるからだ)。

見た目回復、忍び寄る不安
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・客が購買意欲を抑えている印象はなく、数か月前と比較すると買物をしようとする意欲は高まっている(百貨店)。
・秋の旅行シーズンでもあり、団体旅行の件数、売上ともに前年を上回っているが、4-6月の穴埋めまではできていない(旅行代理店)。
・前月は残暑により衣料品を中心に秋物の動きが鈍かったが、今月は冷え込みとともに秋物が動き出している(百貨店)。
・新型車の発売効果により、店頭への来客数は増えている。しかし、客の財布のひもは固く、商談は苦戦している(乗用車販売店)。
・消費者の節約意識は更に強まっており、不要な物は安くても買わない傾向は一段と激しくなっている(スーパー)。
・テレビを中心に大幅な販売単価ダウンが全体の販売実績に大きな影響を与えている(家電量販店)。
・東日本大震災の影響もなくなりつつあり、個人旅行客を含めて回復傾向にある。一方、海外客は、中国や韓国からの旅行客が大幅に減少している(観光名所)。

■先行き
・気温も低下し重衣料などの動きが良くなる。また、お歳暮、年末に向けて来客数は増える(百貨店)。
・エコカー減税の終了に向けて駆け込み受注が見込まれ、販売台数は増加する。登録が間に合わなくなる車も出てくるため、先取り受注が見込まれる(乗用車販売店)。
・ウォームビズはクールビズのように大きな需要を喚起するまでに、客に浸透していない(百貨店)。
・円高での海外旅行需要の回復が続いているが、タイの洪水や欧州の信用不安などの影響で、今後の海外旅行需要の低下が懸念される(旅行代理店)。
・今冬の電力不足による節電や近い将来への増税議論など、景気回復につながる明るい材料が見当たらない(スーパー)。
・生産拠点であるタイの洪水被害で、既にデジタルカメラなどの入荷が遅れている(家電量販店)。
などとなっている。一部で景気の良い声も聞かれるが、その中にも多分に「将来は●×だから■▽になる」という、希望的観測型のものが見受けられ、実のある話はさほど多くない。一方で「ウォームビズの浸透度の低さ」「円高」「国内外の問題を起因とする需要、生産への(つかみどころの無い)不安」などにより、消費性向が抑えつけられているのが分かる。また生産周りでも取引先が海外に移転するなど、短期では無く中長期的なマイナス要因となる言及がちらほらと出ているのが気になる。さらに増税回りなど(事実上の)失策が、さらなる消費にブレーキをかけているのも見て取れる。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
再び回復の兆しは見られたが
東日本大地震で再び状況は悪化。
国内外の現状を反映し、
心境は再び失速。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調の兆し)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に東日本大地震前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「震災前における」今後の動向は不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とする、下値圏(=不景気圏)でのもみ合い」が続くのではないかとする予想だった。とりわけ原油をはじめとする資源価格の高騰がじわじわと市民生活に影響を及ぼしはじめており、(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消すかもしれなかった。

しかしながら今年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う大幅な数字の下落からも分かるように、東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、消費者の心理の上においても大きな衝撃となって現れている。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じる間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の国レベルでの施策への不信の加速化、電力供給不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」ような雰囲気を覚えさせる。端的には「マインドの保守化・防衛本能の発起」と表現できる。

「震災による中期的な不景気が発生しする可能性」は、もはや「可能性」ではなく「体現化した」と評しても良い。マインドの低迷は継続し、急激に過ぎる円高も輸出関連企業を中心に企業へダメージを与えている。各種データから「余震は完全に過ぎ去った」と断じることが難しい状況も、人々の不安感を駆り立て、「保守化」を後押ししている。さらに今回のコメントで先月以上にタイの洪水、欧米・中国の不安定要素など、国際的な要因における不安を口にする人が増えており、国内外の問題双方が、消費者を圧迫しているのが再確認できる。

いまだに徴候が見受けられる余震の動向を見極め、鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により、原発周りも含めたエネルギー政策の確立化を果たすのが、日本における最優先課題に他ならない。そしてこれ以上の状況悪化を防ぐ「前向きの」「正しい」「明日に期待できる」努力を、各自が最大限行う事が求められよう。

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