コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(後編:全体編)(2011年「出版物販売額の実態」版)

2011/11/11 06:47

先日【2011年版『出版物販売額の実態』を入手】で報告したように、昨年2010年に【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】などで用いた、出版業界のデータを網羅した『出版物販売額の実態』の最新版「2011年版」を入手することができた。そこで【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】などの例にあるように、逐次「2010年版」で作成したデータの更新と、内容の再検証を行っている。今回はコンビニの出版物販売額をグラフ化して精査した記事の後編について更新を行う事にする。なお最新版は昨年版と比べて過去のデータも再精査の上で修正が入っているため、昨年版を元にした記事内容やグラフと、違いが生じる可能性がある。

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まずはコンビニ(コンビニエンスストア)における出版物売上高とコンビニ店舗数。店舗数を併記したのは、単に売上だけの推移では「店舗数の増減も売上と関係するため、コンビニにおける出版物のポジションの変化がつかみにくい」という問題をクリアするため。コンビニ店舗数が増加傾向にあるのは周知の通りだが、それに反してコンビニでの出版物の販売額は減少の一途をたどっている。これについては一部ではあるが【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】の最後で解説した通り。

↑ コンビニの店舗数とコンビニにおける出版物売上高
↑ コンビニの店舗数とコンビニにおける出版物売上高

店舗数増加傾向はこの1、2年で再び加速化を見せていた。2010年は【関西地区のam/pmもファミリーマートに転換へ】でも触れている通り、am/pmが最終的にファミリーマートに合併したなどの影響もあってか、やや数を減らしているものの、それでも2007年と比べれば店舗数は多い。一方で出版物の売上高は2003年以降は漸減、2006年以降は加速的な低下傾向を見せている。この原因について以前の記事では

・インターネットや携帯電話の本格的普及時期と重なるため、ハードルの低い時間つぶしが「コンビニでの雑誌(特にファッション誌や週刊誌、コミック廉価版など)」からネットやケータイに奪われた結果
・家計単位での雑誌販売額の減退によるもの(【新聞や雑誌の買われ方はこの10年でどのように変化したのか......週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(追補編)】)
・コンビニで販売される機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連など、関連雑誌業界そのものの不調
・コンビニでしか買えない雑誌の類の減少
・コンビニで販売されるタイプの雑誌における、付加価値や情報そのものの陳腐化(付録雑誌は増加しているが、縮小再生産の感は否めず)
・コンビニにおける利用客の消費性向の低迷(お弁当などと一緒の「ついで買い」をする余裕がなくなってきた)
・成人向け雑誌の販売スペース縮小、取扱の中止

などをその可能性として挙げた。いづれも「単独」の理由としてはやや弱めだが、複合するものであれば十分納得のいく話ではある。

ともあれ店舗数と総店舗の売上が出たので、これで単純計算ながらも「1店舗当たりの出版物売上高」を算出できる。

↑ コンビニの1店舗当たり出版物売上高(万円)
↑ コンビニの1店舗当たり出版物売上高(万円)

全体額同様、2003年以降は漸減、2006年あたりから減少幅を大きくしていることが改めて分かる。【コンビニ四天王の売上高などをグラフ化してみる(2010年版)】で記したように(2011年版は元のデータ更新が遅れているので随時最新版にする予定)、コンビニそのものの総売上(出版物以外の全物品・サービスを合わせた売上)は漸増しているので……

↑ コンビニ業界全体に占める上位4チェーンの売上高(兆円)(ローソンアニュアルレポートより)
↑ コンビニ業界全体に占める上位4チェーンの売上高(兆円)(ローソンアニュアルレポートより)(再録)

当然、全売上に占める出版物の売上比率も大きく下がることになる。全体額が増えて、対象額が減れば、全体比率が減少するのは当然の話。

↑ コンビニの総売上に占める出版物取扱い比率(売上)
↑ コンビニの総売上に占める出版物取扱い比率(売上)

雑誌そのものの媒体力、集客力が低下している事は否めず、場所の効率的利用が徹底されるコンビニにおいて、印刷物の取扱比率が減るのも仕方の無い話。それにしてもこの下落ぶりは驚くべきもの、としか評しようが無い。



昨年版で指摘した、「成人向け雑誌」が情勢の変化でその配置数を減らしたのがコンビニでの出版物販売額を大きく減らした一因ではないかとする件。前回の記事執筆後いくつかのコンビニ運営企業に問い合わせたものの、明瞭な回答を得ることはかなわなかった。しかし状況証拠や実店舗での動向を見る限り、最大要因かはともかくとして、小さからぬ要因であることに違いはあるまい(周辺地域への影響力が小さくないからこそ、規制なり反対運動が起きたと考えれば道理である)。

「ヒーローズ」一方で先日【セブン-イレブンだけの月刊コミック誌「ヒーローズ」創刊】で伝えたように、コンビニを地域社会と密着するトレンド発信地的な重要拠点と認識した上で、広報展開的な意味合いも持たせた雑誌を発売する動きも見られる。雑誌という媒体が、携帯電話やパソコンと比べて低いハードルを持つものの、「情報発信ツール」としての影響力を減らしつつある中、どこまで送り手側の期待に応えられるのか、興味深い動きといえる。

2010年データでは、コンビニの売上高の1/33にまで割合を減らしてしまった印刷物販売。週刊誌などの価格はむしろ上昇気味で、付録付き雑誌(もちろん価格はお高め)の増加も合わせて考えれば、「売上額」ではなく「冊数」では、上のグラフ以上の急降下を形成しているものと思われる。一方で「月刊ヒーローズ」のような新たな動きも見せる中、今後コンビニの中で出版物がどのような意味合い、存在価値を呈していくのか。非常に気になるところではある。

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