出版物の書店立地条件別での売上変化をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)

2011/11/08 05:03

先日【2011年版『出版物販売額の実態』を入手】で報告した通り、昨年【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】などで用いた、出版業界のデータを網羅した『出版物販売額の実態』の最新版「2011年版」を入手することができた。そこで【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】などのように、逐次「2010年版」で作成したデータの更新と、内容の再検証を行っている。今回は出版物の書店立地条件別での売上変化をグラフ化し内容を精査した記事の更新を行う事にする。なお最新版は昨年版と比べて過去のデータも再精査の上で修正が入っているため、昨年版を元にした記事内容やグラフと、違いが生じる可能性がある。

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まずは立地別の売上高前年比。「SC」とは「ショッピングセンター(Shopping Center)」のことを指す。郊外店の下げ方が無難な線で収まっているのは、いわゆる「複合店」が郊外に多いから? という推測も成り立つ。

↑ 立地別売上高前年比(2010年)
↑ 立地別売上高前年比(2010年)

2009年次と比べれば下げ幅は縮小しているものの、前年比で売上そのものがマイナスには違いない。そして「ビジネス街」の書店における下げ率がもっとも大きなものなのも2009年と同じ。

そこでその「ビジネス街」に限り、細かい分類別で確認をすると、ほとんどの項目で全体平均を上回る下げ幅を見せているのが分かる。

↑ 分類別売上高前年比(2010年、ビジネス街)
↑ 分類別売上高前年比(2010年、ビジネス街)

↑ 分類別売上高前年比(2010年)
↑ 分類別売上高前年比(2010年)(再録)

「ビジネス街」なのだからビジネス書が売れていると思いきや、前年比はマイナス11.5%で、全体のマイナス2.5%よりはるかに悪い。可処分所得の減少でお昼の食事代のやりくりが厳しくなる昨今、働き人にとっては仕事場近辺の本屋で本屋に立ち寄り、仕事に役立ちそうな本を買う余裕がますます減少しているのだろうか。かろうじて「新書」が全体平均よりもおだやかな下げに留まっている(全体はマイナス3.5%、ビジネス街はマイナス3.2%)のが救われる。案外ラノベやビジネス入門書の類を手にしているのかもしれない。

さて、その「ビジネス街」も含め、立地条件別における書店の動向はどのようなものなのか。書店では額面上大きな売上を占める3大分類「雑誌」「コミック」「文庫」(全体ではこの3区分で売上全体の約2/3に達する)、それに加えて「新書」の計4区分を抽出したのが次のグラフ。4区分に限っても、「郊外」店舗が健闘しているのが一目瞭然。

↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2010年)
↑ 分類別・立地別売上高前年比(一部、2010年)

それと同時に改めて「ビジネス街」店舗の大変さが分かる。分類別では一番大きな売上高を誇る「雑誌」(売上高全体の1/3超)で、唯一マイナス5%超の下げ幅を記録している。2010年では数少ない堅調項目の「コミック」も伸び率は一段落低く、直上で示した「新書」が”他と比べて”やや奮戦している程度だ。

また昨年は「駅前」の堅調さをコメントしたが、2010年にはそれに「SC」も加わらせることができる。やはり冒頭で言及したように、他種店舗との相互効果が期待できる「複合店」が郊外には多いからだろうか。



今回確認した「立地条件別の売り上げ動向」でもっとも注目すべきなのは、やはり昨年同様「ビジネス街」での動き。比較的ユーザーニーズが把握しやすく(≒ターゲットの絞り込みが容易、効率よく商品アピールができる)、商用地としても悪くないはずだが、もっとも売れそうなタイプの出版物「ビジネス」系が一番売れていない。これは本文中でも触れたように、働き人の可処分所得の減少で「衝動買いに近い出版物の購入」機会が大きく減っているものと考えて良い(あるいは衝動が走っても、購入を我慢しているのかもしれない)。その裏付け的傾向として、【携帯電話代と自分をみがく費用以外はガマンしなきゃ? サラリーマンのお小遣い事情】に挙げた、「こづかいの使い道として欠かせないもの」を再掲載しておこう。これは2010年における2009年との差異のグラフなので、今回計測対象となった2010年の動向を推し量るには一番都合が良いはずだ。

こづかいの使い道として欠かせないもの(2009-2010年)
こづかいの使い道として欠かせないもの(2009-2010年)(サラリーマン対象、再録)

見事に「雑誌・書籍代」が変移の上で最下位となっている。このようなマインド低下があれば、「ビジネス街」の書店の不調ぶりも理解できよう。

ちなみに同様の調査における2010年と2011年の差異は次の通り(【「自分の身近な楽しみを死守」傾向強まる…サラリーマンのお小遣い事情(2011年版)】から)。

こづかいの使い道として欠かせないもの(2010と2011年の差異)
こづかいの使い道として欠かせないもの(2010と2011年の差異)(再録)

「雑誌・書籍代」はまだマイナスのままだが、下げ幅が随分と大人しいものとなっている。2011年のビジネス街の印刷物販売動向は、今回の2010年分よりは幾分よい値を見ることができるに違いない。

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