出版物の種類別売上の変化をグラフ化してみる(前年比)(2011年「出版物販売額の実態」版)

2011/11/06 06:42

先日【2011年版『出版物販売額の実態』を入手】で報告したが、昨年【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】などで用いた、出版業界のデータを網羅した『出版物販売額の実態』の最新版「2011年版」を入手することができた。そこで【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】などのように、逐次「2010年版」で作成したデータの更新と、内容の再検証を行っている。今回は出版物の種類別売上の変化をグラフ化し精査した記事(前年比)の更新を行う事にする。なお最新版は昨年版と比べて過去のデータも再精査の上で修正が入っているため、昨年版を元にした記事内容やグラフと、違いが生じる可能性がある。

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まずは出版物の分類別、売上高の前年比。全項目が前年比マイナスだった2009年と比べ、2010年はいくつかでプラスを記録し、グラフとしてまともな形となっている。

↑ 分類別売上高前年比(2010年)
↑ 分類別売上高前年比(2010年)

今件も含め、一連の記事に共通することだが、2010年における出版物の分類で、2009年から一部変更があったことを記しておく。具体的には「学参」と「辞典」が「学参」に、「実用書」と「旅行地図」が「実用書」に集約されている。これは2004年から2005年に区分詳細化をそのまま逆行した形。また、辞典(上記「学参」には集計されない)・事典・日記・手帳・その他をまとめた「その他」は「総記」と名前を変えている。

【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】でも触れたように、出版物の売上高は漸減傾向にある。当然2009年と比べて2010年の売上高もマイナスだが、「出版物の分類によってその減少ぶりには違いがある」こと、そしてその一方で「ほとんどの分類でマイナス」なのが分かる。特にマイナス値が大きいのは「文芸」「専門」。一方、「雑誌」は世間一般に騒がれているほど、比率では減少率は高くないことが分かる。また「コミック」は大きく伸びているが、これは後ほどいくつかの記事で触れるように、ヒットセラーが相次いだことに起因する。

他方、書店の規模別を見ると、いくつかの特徴を見出すことができる。

↑ 店舗規模別売上高前年比(2010年)
↑ 店舗規模別売上高前年比(2010年)

もっとも注目したいのは「401-500坪」の区分。2009年版でももっとも下げ幅が低かったが、2010年版ではほぼゼロに近い所まで戻しており、他の区分とは一線を画している。各種売上でも単純に「面積が広いほど優位」では無く、「401-500坪まで広い面積ほど優位」「500坪を超えると再び減少」という傾向が複数個所で確認できる。この区分における面積が、一つの理想形なのかもしれない。

「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせると……
今年も去年同様に、「書店規模」と「分類別売上高前年比」を掛け合わせて傾向を見て行くことにする。大きく「大規模書店ほど好業績」「小規模書店ほど好業績」の2区分に該当する、出版物分類項目をそれぞれ抽出し、グラフ化を行う。

最初は「大規模店舗ほど好業績」の分類。「好業績」とはいえ、多くは「前年比マイナスの値が小さい」もの。表現としては「悪くない」「業績悪化度が小さい」とした方が妥当。ともあれ、スケールメリットが効いている領域。ちなみに今グラフには表記されない「コミック」は規模の差異とあまり関係なく、堅調な動きを見せている。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2010年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、大規模ほど好業績項目)(2010年)

ただし直前で触れたように「500坪超では反転」という動きがあることにも留意したい。

気になるのは2009年において「地域密着型」あるいは「学校用教材」と定義し、小規模書店ほど業績下落が小さかった「児童書」「学参」の類までもが、「市場包括型」に区分できる「文庫」「新書」と共に「大規模店舗ほど好業績」に該当してしまっていること。マイナス幅そのものは2009年より小ぶりだが、店舗規模別の比較として「小規模書店ほど売上減少率が大きい」ことも事実。小規模書店のメリット・長所がさらに狭まった雰囲気は否めない。

「小規模店舗ほど好業績」な分類もある。「好業績」というよりは「悪化度が小さめ」でしかないのだが。

↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2010年)
↑ 店舗規模別・分類別売上高前年比(一部、小規模ほど好業績項目)(2010年)

2009年における「小規模店舗ほど好業績」は子供向けの傾向が強かったが、2010年になると「中堅層以降向け」「狭く深い読者層向け」の感はある。いずれにせよ、市場としては大きなものではない。いずれにせよ昨年言及した「子供向けの定期月刊誌を近場の個人営業の書店で定期購読する」ようなスタイルが、崩れつつある気配を感じさせる。これは【「小学1年生」-「小学6年生」の部数変化をグラフ化してみる(2011年4-6月分反映版)】などの傾向と一致している。



2009年から2010年への推移概要としては「大型店舗の優位性の前進」がもっとも大きな動きといえる。とりわけ「児童書」「学参」が、個人営業と思われる小規模書店で減少し、大型書店で堅調な流れには強い注視を行いたい。これが2010年だけのものならばイレギュラー的動向だが、来年2011年以降も継続するのなら、(実店舗としての)書店の集約化・大型化の材料が、また一つ増えてしまうからだ。

規模別区分を見ると、単に「大きければよい」というものでも無いことが分かる。好業績を挙げるには大きさ以外に地域特性の見極め、隣接あるいは出店している本店舗(例えばデパートに出店している書店など)との連動性など、包括的な「市場対策」が求められる。これはどのような商売でも必要な要素なのだが、小規模書店では限界があり、大規模過ぎると小回りが利かずに他店舗との連動性を検討しにくいのかもしれない。

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