書店の売上高などをグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)

2011/11/04 07:04

先日【2011年版『出版物販売額の実態』を入手】で報告したように、昨年【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる】などで用いた、出版業界のデータを網羅した『出版物販売額の実態』の最新版「2011年版」を入手することができた。そこで【出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)】などのように、逐次「2010年版」で作成したデータの更新と、内容の再検証を行っている。今回は書店の売上高などをグラフ化した記事の更新を行う事にする。なお最新版は昨年版と比べて過去のデータも再精査の上で修正が入っているため、昨年版を元にした記事内容やグラフと、違いが生じる可能性がある。

スポンサードリンク


まず売上について上位20社のものをそのままグラフ化する。

↑ 書店売上高ランキング(億円)
↑ 書店売上高ランキング(億円)

前回のグラフで第二位に入っていた丸善だが、今回はランキング落ち……ではなく、除外されている。これは【連結子会社の会計方針の変更及び当社の連結業績予想の修正に関するお知らせ(PDF)】などにもある通り、2010年においては変則決算で、他会社との単純比較では齟齬が生じるため。また昨年問合せもあったが、ブックオフコーポレーションは(販売業態が他の「書店」とは異なるため)除外されている。

売上高上位の企業が軒並み業績を落としていた2009年と比べ、2010年は(あくまでも2009年比だが)それなりに健闘している書店も多い。この類の記事では必ず登場するヴィレッジヴァンガードコーポレーションも、当然のことながら売上増(ただし同社は2010年の新規出店数32店で第一位を見せており、店舗数の増加も売上増に寄与している)。さらには虎の穴、八重洲ブックセンターなど、一部地域・一部趣味趣向の人にはなじみ深い書店も確認できる。

続いて売上高について、前年比を計算し、その上で高い順から並べてみる。トップは未来屋書店、次いでキクヤ図書販売、そしてヴィレッジヴァンガードコーポレーション。

↑ 売上高前年比(2010年)
↑ 売上高前年比(2010年)

前回は決算期の変更に伴い、やや無理な算出方法で登場させた文教堂だが、今回は通常のスタイルで計算。それでも売上高前年比で、このポジションという状況に変化は無かった。

そして売上高動向を比較すると、規模の大きな書店がそのまま売上を伸ばしているとは限らないのが分かる。未来屋書店(新規出店数は9店で第3位)やヴィレッジヴァンガードコーポレーションは店舗数の増加が寄与するところも大きいが、それ以外、例えばキクヤ図書販売(喜久屋書店を運営。その成りたちから、ジュンク堂書店とは補完関係にある)を持つ書店が目に留まる。

次に、店舗数と売上高が確認できるので、その値から「店舗当たりの売り上げ」を単純計算したものをグラフ化する。書店によって業態は異なり、中には出版物以外の売り上げも含まれている書店もあるが、「複合店も合わせ書店として展開しているお店の売上」ということで認識すると共に、参考値のようなものとして見定めてほしい。

↑ 店舗当たり売上(2010年、億円)
↑ 店舗当たり売上(2010年、億円)

前述の通り会計周りから、前回記事で最上位の「丸善」が除外された以外は、大きな変化は無い。店舗内における出版物の販売比率などもあるが、大体店舗規模のイメージと売上高は比例している感がある。紀伊国屋書店、八重洲ブックセンターは大きく、ヴィレッジヴァンガードコーポレーションなどは小さめである。

最後に「売上高経常利益率」。これは以前【書店の売上高・経常利益率をグラフ化してみる(2010年1月更新版)】などで解説しているが、要は「その会社の本業と副業を合わせた業務の利益率」を意味する。例えばこの値が10%なら、1000円の商品を売ると100円の儲けが出ている計算になる(本当はもっと細かい計算があるのだがここでは省略)。この値が大きいほど、「賢い・割の良い商売」をしている。逆に言えば売上高経常利益率が低いほど、何らかのトラブルが生じた時に金銭的な対応が難しくなる。大きなお金が行き来しているのに、自分の手元に残るのはほんのわずかでしかないからだ。

↑ 売上高経常利益率(2010年、上位10位)
↑ 売上高経常利益率(2010年、上位10位)

ヴィレッジヴァンガードコーポレーションの利益率の高さは相変わらず。そしてオー・エンターテイメントだが、これはオークワのグループ会社の立ち位置にある、総合エンタメ店。本を扱うのはもちろんだが、その他にDVDやCD、さらには別事業体としてボーリング場、シネコンやスポーツクラブ、総合中古メディア取扱い店まで行っている。単なる書籍取扱い点と比べて利益率が高いのは、このエンタメ分野におけるカバー率の高さがポイントなのだろう。

また他グラフと合わせ、未来屋書店の健闘が目に留まる。同社はイオングループの企業の一つで、同グループ他社との連係プレー的な店舗運営が注目されている。



メインが出版物・文具の店舗では「規模の拡大(店舗数、1店舗当たりの売上)」で何とか経営を維持しているのに対し、「書籍・文具”も”取り扱う」企業は1店舗あたりの規模が小さくとも高い収益率を挙げているのが、今件データからも改めて確認できる(グループ他企業にその「も」を任せている典型的事例といえる未来屋書店も注目に値する)。

書店の業績不振云々という話について見直すと、元々出版物や文具の収益構造の根幹にある「規模が大きくないと儲けにくい」「他業種との兼業で無いと利益をあげにくい」という要素は前々から存在している。それが昨今においては目立ち始めただけの問題ともいえる。

また、規模の拡大などで昨今の難局を乗り切ろうとしている書店も、過去の類似記事と比較すると、その多くで収益率が減少しているのが分かる。これは【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でグラフ化しているように、出版物の種類数がやみくもに増えていくことで需要が分散、減退化し、回転率を上げなければビジネスにならなくなりつつある出版業界の現状の一端を見せている。

回転寿司書籍の種類は増え、お客のニーズを来店時に確実にとらえるためには、種類を豊富に取りそろえねばならないが、そのためには店舗を巨大化するしかない。来店した時に欲しい本が無ければ、昔は「それなら注文を」で済んだが、今は「それならネットで買う」「ならは買うの止めた」となる。対応できても、さらに増加する出版物を有限の面積内に収めるには、ニーズのない書籍はすぐにでも退場(≒返本)してもらい、回転率を上げるしかない。それらの書籍の姿はまるで、次から次へと新しいお皿に追いやられて、店内内部で「回収」される運命を待つ、回転寿司の上に載せられたお寿司達のような感すらある。

ここしばらくは読者の可処分所得は横ばいか減少を続けるに違いなく、雑誌そのものの「媒体力」も低下する傾向は否めない。さらにインターネット通販の利用率は増加を続ける一方。そしていわゆる「電子書籍」も急速にその影響力を増大しつつある。書籍や文具を販売物の一要素としてとらえているヴィレッジヴァンガードコーポレーション、グループ会社全体の店舗内に出店して「本屋」では無く「書籍販売コーナー」のような立ち位置を確保する場合が多い未来屋書店はともかく、その他の「書籍販売をメインとしている書店」は、今この時点で起きている環境の変化に、適切な対応、言い換えれば「進化」が求められているに違いない。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー