出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化してみる(2011年「出版物販売額の実態」版)

2011/10/31 12:00

先日【2011年版『出版物販売額の実態』を入手】で報告したように、以前、出版物の売り場毎の販売額推移をグラフ化して精査した記事などで用いた、出版業界のデータを網羅した『出版物販売額の実態』の最新版「2011年版」を入手することができた。そこで今回から何回かに分けて、以前「2010年版」で作成したデータの更新と、内容の再検証を行っていくことにする。データを一目した限りでは、昨年版と比べて過去のデータにおいても再精査の上で修正が入っており、いくつかの相違が確認できる。従って「2010年版」における記事内容やグラフと、違いが生じる可能性があることをあらかじめ記しておく。

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まずは出版物の流れ・流通の仕組みだが、概念的には次の通り。

↑ 出版流通の仕組み(取引形態)
↑ 出版流通の仕組み(取引形態)

これは10年ほど前に経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課がまとめた【出版産業の現状と課題(PDF)】によるもの。約10年前のものなので数字部分は大きく変動しているはずだが、基本的な流れに変わりはない。今回グラフ化するのは、この「書店」の部分、つまり「取次」と「消費者」の間に挟まっている、小売の部分を指す。

もちろん昨今では電子書籍の流通も進んでいるが、「現状では」電子書籍においてもその大半が取次を経由しており、一般書籍とさほど変化は見られない。そして2010年において日本国内の電子書籍市場規模は【2010年度の電子書籍市場規模は前年比13.2%増の約650億円】にもあるように650億円程度と推定されている(額面だけなら「駅売店ルート」を超えている)。今件一連のデータはあくまでも「出版物」を対象としているため、数字には反映されていないが(インターネットルートも定義は「インターネット専業店を経由して販売された出版物推定販売額」であるため、電子書籍は該当しない)、今後さらに市場拡大が予想されるため、何らかの対応が求められよう。

さてそれでは早速、主要販売ルート別の推定出版物販売額。元データはもっと細かい部分まで出ているが、億円以下は四捨五入で掲載。書店ルートがトップなのは当然だが、コンビニが第二位のポジションについているのが分かる。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2010年)(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2010年)(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2010年)(比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(2009-2010年)(比率)

以前【「駅の売店では新聞・雑誌が売れないらしい」を確かめてみる】で挙げた駅売店は金額ベースでは第四位(「2010年版」と比べると数字の大規模な修正が入っている)。インターネットルート(アマゾンジャパンや楽天ブックスなども、把握できる範囲で含む)は1285億円。インターネット経由の書籍販売は、成長率こそ著しいものの、現状では出版物販売全体のシェアを食い荒らすほどのものではないことが分かる。立ち位置としては広告業界の既存媒体広告と、インターネット広告のような関係と言えよう。

単年度だけでは推移が分からないので、データとして収録されている過去10年分を、積み上げグラフと比率グラフにしたものを生成する(前述したように過去データも大規模な再計算が行われているため、「2010年版」のデータは一切反映せず。そのため2001年以降のものであることに注意)。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(億円)

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(主要項目における全体額に対する比率)

なお2006年まではインターネット経由の数字は「その他」項目に区分されていたが、2007年以降は別個の項目として新設されている。また比率グラフの方はいくつかの項目をまとめて「その他」としている。

販売額数のトータルが減少している事実には、改めて驚かざるを得ない。以前【新刊書籍・雑誌出版点数や返本率推移をグラフ化してみる】でも表したように、新刊の書籍・雑誌種類数は増加の傾向を示しているからだ。出版種類数以上に「返本率」の増加が販売総額を落とす結果になっているのか、「返本率」が高い状況なので種類数を山ほど出して売上をカバーしようとしているのか(、それでも減少に歯止めはかからず)、どちらが先行事由なのかは分からない。

そして、書店数が減少しているにも関わらず、書店における比率(全出版物販売額比)は増加の一途をたどっている。これは販売「額」を見ればお分かりの通りで、書店の販売「額」は減少しているものの、それ以上に他の区分、とりわけコンビニの販売額が減少しているのが要因。一言で表現すれば「書店以上に他の小売で出版物の売れ行きが減り、相対的に書店での販売額比率が増加している」ことになる。書店数、そして連動する形で販売機会の減少が声高に叫ばれているが、事態はそれ以外のところでもっと深刻化していることになる。



やや余談になるが、気になる区分について、販売額の前年比を折れ線グラフにしてみたのが次の図。「2011年版」では「駅売店」も再精査され連続性を持つデータとなったので、今回はこれも反映させる。

↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)
↑ 販売ルート別推定出版物販売額(前年比)

書店は逓減、インターネットは急増、そしてコンビニが2006年あたりから急激に減少する傾向が確認できる。これについて資料では何の解説もなく、前回の記事執筆後幾つか心当たりに尋ねたものの明確な回答を得られず、理由を断定できない。可能性としては【コンビニでは本が売れなくなってきているようだ】でも一部指摘しているが、

・インターネットや携帯電話の本格的普及時期と重なるため、ハードルの低い時間つぶしが「コンビニでの雑誌(特にファッション誌や週刊誌、コミック廉価版など)」からネットやケータイに奪われた結果
・家計単位での雑誌販売額の減退によるもの(【新聞や雑誌の買われ方はこの10年でどのように変化したのか......週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(追補編)】)
・コンビニで販売される機会が多い雑誌、ビジネスやマネー誌、HowTo関連など、関連雑誌業界そのものの不調
・コンビニでしか買えない雑誌の類の減少
・コンビニで販売されるタイプの雑誌における、付加価値や情報そのものの陳腐化(付録雑誌は増加しているが、縮小再生産の感は否めず)
・コンビニにおける利用客の消費性向の低迷(お弁当などと一緒の「ついで買い」をする余裕がなくなってきた)
・成人向け雑誌の販売スペース縮小、取扱の中止

などが想定される。この2005-2006年という時期をターニングポイントとする動きは、例えば広告費の動向などにも表れた共通のものであり、社会全体の流れが動きを見せた時期と見ることもできる。

ともあれ、書店数の減少そのものは事実であるものの(直近データについては詳細は別途記事化する)、それが出版業界そのものの低迷に直接起因する第一要因と考えるのは、少々無理がありそう。そして今や日常生活にもっとも密着している小売店のコンビニで、出版物の販売額が減退しているあたりに、ニーズの変化もあわせ、ヒントがある気がしてならない。

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