日本の「恋愛結婚」「見合い結婚」の推移(最新)

2016/10/10 05:22

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国立社会保障・人口問題研究所は2016年9月15日、同研究所が日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量している「出生動向基本調査」の最新版となる「第15回出生動向基本調査」に関し、独身者対象の調査と夫婦対象調査の双方の調査結果を発表した。今回はその公開データを基に、日本の結婚に関わる問題として注目を集めている要素の一つ、恋愛結婚・見合い結婚の動向に関して確認していくことにする(発表リリース:【第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)】)。


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減るお見合い結婚の割合、増える恋愛結婚率


今調査は基本的に5年おきに実施されているもので、直近値となる2015年実施分は2015年6月に、同年6月1日時点の事実について調査したもので、調査対象は独身者調査で18歳以上50歳未満の独身者、夫婦調査は妻の年齢が50歳未満の夫婦(回答者は妻)。調査対象地域は2015年国民生活基礎調査の調査地区1106地区(2010年国勢調査区から層化無作為抽出)の中から選ばれた900地区。調査方法は配票自計、密封回収方式。配布数・回収数は独身者調査では1万1442票/9674票(記入状況の悪い920票は除外のため有効票数は8754票)、夫婦調査は7511票/6867票、無効票は269票で有効票数は6598票。

なお一連の発表調査結果においては、独身者調査は18歳から35歳未満、夫婦調査は夫と妻が共に初婚同士の夫婦に関する集計分析が成されている。従って独身者は35歳以上の、夫婦は再婚者の動向に関しては(特記が無ければ)反映がされていない。

初婚同士の夫婦世帯における婚姻様式に関して、その男女が出会ったきっかけとの視点での区分「見合い結婚」か「恋愛結婚」についてだが、その動向は次のグラフの通り。なお、両スタイルの仕切り分けの定義は次の通り。双方を合わせて100%に達しないのは、回答に「その他」「不詳」あるため。

●夫婦が出会ったきっかけに関する回答
・見合い結婚……見合いで、結婚相談所で

・恋愛結婚……学校で、職場や仕事の関係で、幼なじみ・隣人関係、学校以外のサークル活動やクラブ活動・習いごとで、友人や兄弟姉妹を通じて、街なかや旅行先で、アルバイト

↑ 結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚の構成比
↑ 結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚の構成比

初婚同士の夫婦における「お見合い結婚と恋愛結婚(の比率)が逆転したのは1960年代」「50年代はお見合い結婚は5割強」「80年代では2割前後」などが確認できる。さらに全体の流れとしては、年代の経過と共に婚姻数全体に対するお見合い結婚率が減り、恋愛結婚率が増えている。つまりお見合い結婚といった社会の仕組みが少しずつ希薄化し、恋愛結婚による婚姻率が増加したことになる。

さらに後述するが、恋愛(結婚)そのものが苦手な性質もあり、恋愛結婚比率の増加が、全婚姻数そのものを押し下げる結果となってしまっていることが推測できる。切り口を変えて考えれば、日本の戦後しばらくまでの婚姻率、そしてそこから連動する形での出生率の高さは、お見合い結婚によって維持された面が大きいと推定が可能になる。

出会いの形式別婚姻「件数」を推測する


「出生動向基本調査」に掲載されているのは見合い結婚・恋愛結婚の比率まで。具体的に「日本全体における」(調査母体内では無く)結婚事例数までは記載されていない。全体調査ではないのだから当然ではある。

そこで各年区分の比率に、その年に公的に確認できた婚姻件数の平均値を乗じ、概算平均としての年間婚姻件数を推定算出してグラフ化を試みる。戦後の婚姻件数については【日本の婚姻率・離婚率・初婚年齢の推移】で示した「人口動態統計の年間推計」。過去のデータは以前の記事から取得したものを流用した。

各調査期間の婚姻件数の平均値を算出し、それぞれの期間の「お見合い結婚」「恋愛結婚」比率を乗じ、各形式の年間婚姻数を概算する。なお上記で解説の通り「お見合い結婚」「恋愛結婚」以外に「その他」「不詳」もあり(例えば直近分なら6.8%が該当する)、両形式の婚姻数を足しても年間の平均婚姻数にはならないので注意が必要。

そして良い機会でもあるので、グラフには合計特殊出生率(該当期間の平均値)を重ね合わせ、さらに両形式の結婚形式における戦後直後の1945-1949年の値を基準値とした相対値の動向も別途グラフ化しておく。

↑ 結婚年次別にみた恋愛結婚・見合い結婚数(概算、万件)と合計特殊出生率(平均)
↑ 結婚年次別にみた恋愛結婚・見合い結婚数(概算、万件)と 合計特殊出生率(平均)

↑ 結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚数(概算)と合計特殊出生率(平均)(各項目で1945-1949年の値を1.00とした場合)
↑ 結婚年次別にみた、恋愛結婚・見合い結婚数(概算)と合計特殊出生率(平均)(各項目で1945-1949年の値を1.00とした場合)

1950年代前半に見合い結婚数の大きな減少、1970年代前半に恋愛結婚数の大きな上昇が確認できるが、前者は戦後の西洋文化様式の流入、戦争直後の混乱期からの脱却で社会が安定化したことにより、婚姻のスタイルに大きな変化の流れが起きたことが類推される。後者については【変わりつつある、「一番大切なもの」】でも指摘した「1970年代、高度成長期におけるパラダイム・シフト」によるものと思われる。

いずれにせよやや凸凹はあるものの、「お見合い結婚」「恋愛結婚」の構成比率グラフと大きな違いは無く、やはり1960年後半が転換点であったことが分かる。なお直近でいくぶん合計特殊出生率が持ち直しを見せているのは、高齢出産のケースが増加しているからに他ならない。



今回発表されたのは2015年調査分の最新のものだが、それらを盛り込み過去のデータも合わせてグラフの再構築と再精査を行うと、日本の社会性質上の問題などと合わせ、結婚のスタイルが「お見合い結婚」中心から「恋愛結婚」中心に変化している、そしてその傾向が強まっているのが確認できる。一方で若年人口数と婚姻数そのものの減少から、婚姻数全体に占める比率が増加している恋愛結婚件数ですら、1990年代後半をピークに減り続けているのが見て取れる。

これから逐次「第15回出生動向基本調査」の内容を盛り込んで以前の記事を更新していくことになるが、結婚や出産関連で日本が抱えている問題は、その多くが進行中であるとの認識を深めざるを得ない。婚姻問題は少子化問題とも深く結び付いている。思い付きと妄想と、周囲への八方美人的な、そしてその場しのぎの対応では無く、中長期的な戦略思考の上での国家的戦略が求められよう。


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