年金や保険の「払い損」的な不公平感、世代間で大きな格差

2011/10/19 06:35

高齢者とお金イメージ厚生労働省は2011年8月23日、社会保障に関するアンケートの調査結果を発表した。「2011年版厚生労働白書」の資料素材として用いるデータ収集の一環で、先日【5割強は「負担増でも社会保障維持拡大」、「負担維持で保証引き下げ容認」は2割】などで伝えた同省発表による「2009年時点での社会保障における公的・私的サービスに関する意識調査」と類するテーマを対象にしている。今回はこの調査結果の中から、「自分自身が社会保障(医療や健康保険、年金、介護、妊娠・出産・育児支援、雇用などで受けられるサービス)面で一生涯において負担する額と受ける額、どちらが多いと思っているか」について確認していくことにする(【発表リリース】)。

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今調査は2011年2月10日から2月22日かけて居住地・年齢・性別による構成比に応じて2300人を無作為抽出し、郵送配布・郵送回収によって実施したもので、有効回答数は1342票。男女比は46対54、年齢階層比は20代146人・30代217人・40代230人・50代234人・60代297人・70代218人。

先に【「全世代の負担増」が多数意見、だが…年金や育児などの社会保障の負担の今後】でも記したように、社会保障全体の維持のためには、負担の増加はやむを得ないとする意見が多数を占めている。

↑ 社会保障負担について今後目指すべき方向性
↑ 社会保障負担について今後目指すべき方向性(再録)

一方で高齢化に伴い「負担する人は減り、受給する人は増える」というアンバランスな状態が進行し、負担者一人ひとりの負担が現状以上に増加することが懸念されている。社会保障は基本的に「各時点で『支える人が支えられる対象を支える』の繰り返し」であり、預貯金のように「自分のまかなった分がそのまま貯蔵されて後ほど戻ってくる」のではない(将来「支えられる」権利を得られるだけ)。当然、個人が歳を取る過程で、支える・支えられる関係に変化があれば、個人の視点で考慮した場合に不公平が生じるリスクはある(例えるなら一か月間レストランでアルバイトをして、そのレストランでの「一週間分のランチ無料券」を手に入れたとして、その無料券を使う時においても、自分がアルバイトをしていた時のランチメニューが出るとは限らないということだ)。

そこで「回答者自身が思っている、知っている範囲」で、社会保障の給付と負担について(「年金」に限定していない)自分本人の分を累計した場合、もらう分と負担する分のどらちが多くなると判断しているのか、それについて聞いたのが次のグラフ。

↑ 一生涯における社会保障の給付と負担のバランス
↑ 一生涯における社会保障の給付と負担のバランス

全体的には緑系統(個人ベースで給付が多い)は2割足らず、赤系統(個人ベースで負担が多い)は6割近く。男女別ではやや男性の方が「給付多し」層が多いが、大勢に変化はない。6割強の人が「自分は一生涯かけて負担する額の方が、受け取る額よりも多い。金銭的に損をしている計算になる」と考え得ることが分かる。

これを世代別に見ると、明らかに世代間格差の様相が見て取れる。

↑ 一生涯における社会保障の給付と負担のバランス(世代別)
↑ 一生涯における社会保障の給付と負担のバランス(世代別)

対象となる「社会保障」は年金だけでなく、冒頭で触れたように「医療や健康保険、年金、介護、妊娠・出産・育児支援、雇用などで受けられるサービス」全体を指すのだが、やはり「一生涯にかけて支払いをし、後に対価を受ける」計算となると、年金が頭に強くイメージされるようだ。さらに高齢化が進むにつれて、現在の若年層が高齢化した際に、自分の若年時代よりも支える人達が少なくなることは容易に想像がつくため、「今の高齢者がかつて若年層だった時と同じ負担を自分達がしても、歳をとったところで今の高齢者と同じ便益を受けるとは思えない」というあきらめに強い反発を持ちやすくなる。いわゆる「払い損では?」というものだ。

お金と不動産「払い損」意識は40代までに根深く浸透している。「給付と負担が同じくらい」とする意見も1割前後でしかなく、8割近くは「自分は社会保障に関しては、負担の方が大きい」という意見で占められている。年金給付が間近な50代になるとようやく「同じぐらい」と共に「給付の方が多い」が増え、年金生活者になると「給付が多い」と「同じ位」を足した割合が、「負担が多い」割合を超えるようになる。そして70代以降は完全に「給付の方が多い」意見が多数を占める。

個人ベースの貯蓄・蓄財と異なり、社会保障制度は「全体で全体を支える」仕組みなため、個々の損得で考えた場合、万人に平等な給付と負担を与えることは事実上困難。必ずどこかで不平等・不公平が生じ得る。その不公平感を出来るだけ軽減すると共に、給付得となってしまう層はその点を十分認識することが求められる。負担損、払い損と自認する層の不満が大きいのも、その認識が不十分なのが一因と容易に想像できるからだ。


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