「防災」と「減災」、「線」と「面」の対策…岩手県、先行10地域海岸の堤防高設定

2011/10/03 19:30

各種想定岩手県は2011年9月26日、海岸堤防などの復旧を進めるにあたり、同県沿岸の24地域海岸のうち10地域海岸において、海岸堤防の高さを設定、これを9.7メートル-15.5メートルとすることを発表した。想定しうる津波を「頻度の高い津波」と「最大クラスの津波」、津波対策を大きく「防災」と「減災」に分類し、ソフト・ハードの両面と、コストパフォーマンスを考慮した現実性の高い対策を柱としている(【発表リリース】)。

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今件は岩手県が海岸堤防の復旧にあたり沿岸を24地域海岸に区分した上で、各地域ごとに堤防の高さを設定。その値に基づいた堤防の復旧建設をはじめとした、各種津波対策を記したもの。

堤防の高さの設定を含めた、津波に対する防災対策について資料を元に概論をまとめると、

↑ 岩手県沿岸・海岸堤防高設定案
↑ 岩手県沿岸・海岸堤防高設定案

●「防災」としての堤防推移設定(「頻度の高い津波」対策)
・数十年-百数十年頻度で発生している、しうる津波を対象とする。
・今後発生しうる地震、津波以外に過去の記録や「津波の痕跡の記録」の整理したもの(例えば869年の貞観地震)もデータとして検証する。
・堤防設計による「せり上がり」も考慮する。
・堤防で「人命・財産・産業・経済活動、そして国土を守る」のが目標=「防災」。

●「減災」としての堤防推移設定(「最大クラスの津波」対策)
・「頻度の高い津波」より発生頻度は低い。
・「最大クラスの津波」に合わせた津波対策用の堤防設定は、費用、環境への影響などから非現実的。
・住民の生命保守を最優先事項とし、住民の避難を軸に、土地利用、避難施設や防災施設の設計運用、さらには街づくり全体で対策する施策などを組合せ、ソフトハードの両面から対応する。
・堤防そのものは過度に依存した「防災」対策には限界があることを認めつつ、大規模な津波にも粘り強さを発揮する構造を検討する。
・ハード、ソフトの施策を組合せて総動員することで、「多重防御」による防災、「減災」対策を行う。また、「堤防」による「線」防御から、地域全体での「面」防御の発想を採用する。

●総合
・堤防裏側での洗掘による破損が多数見受けられたため、「頻度の高い津波」には十分対処しえる強度、「最大クラスの津波」にも「可能な限り」被害を減らせるような構造を模索する。

↑ 堤防裏側で洗掘が進んで破損した堤防
↑ 堤防裏側で洗掘が進んで破損した堤防

のようになる。

今件発表を読み説く限り、【減災に挑む人達の話「日本各地から集めた減災のための30のストーリー」】【防災と減災】、そして【さかのぼる高度半減・6分の時間稼ぎ・高さは4割減…釜石港の津波防波堤の効力試算発表】でも触れているように、「自然災害に対する完全な『防災』は不可能」という認識のもと、物理的に可能な「頻度の高い津波」への対策は極力「防災」施策、いわゆる「線防御」の考えを維持。その一方頻度の低い、そして物理的な完全なる対策は(様々な面で)不可能に近い「最大クラスの津波」には対処可能な範囲でハード面から対応しつつ、ソフト面も柔軟化かつ最大限に活用するという、「面防御」で対応するという「減災」施策を取り入れる(軍事的には線防御・水際作戦と縦深防御の関係に近い)ことが注目に値する。

またこれはリリース中でも言及されているが、「現実的に実現可能な施策」として、さらには「(計画と予算繰りさえつけば)早急にでも対応を始められる」もの、そして【「古文書等の史料の分析」も...中央防災会議 専門調査会報告】などでも中央防災会議が採用している件として紹介しているが、古文書上の情報も検証材料に加えている点など、留意すべき部分が多い。

今後、残りの14地域海岸についても同様の堤防高設定、さらには街づくり全体への反映、ソフト面での防災(津波対策)の策定などが進められることになるが、その内容は逐次同県から発表が行われるはず。防災と減災、ハードとソフトの組合せ、線と面による対策など、どこまで具体的なプランが設定されるか、非常に気になるところではある。

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