震災の直接的影響は沈静化か、下げ幅やや縮小へ(経産省広告売上推移:2011年9月発表分)

2011/09/09 06:54

経済産業省は2011年9月8日、特定サービス産業動態統計調査において、2011年7月分の速報データを発表した。それによると、2011年7月の主要メディアにおける広告費売上高は前年同月比でマイナス2.9%と減少を見せていることが明らかになった。主要項目別では「雑誌」がマイナス10.0%と、もっとも大きな減少率を記録している(【発表ページ】)。

スポンサードリンク


今記事のデータ取得元の詳細などは記事の一覧【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移(経済産業省発表・特定サービス産業動態統計調査から)】の中で解説している。そちらで確認してほしい。今記事はその2011年7月分データ(公開は2011年9月)の速報値を反映させたもの。なおそれより前のデータについては、速報値の後に発表される確定値で修正されたものを用いている。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2011年6-2011年7月)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年同月比(2012年6-7月)

比較しやすいように先月発表データと並列して図にしたが、東日本大地震・震災による影響から復調の兆しを見せた6月分と比べると、回復を続ける部門と再び落ち込みを見せる部門の二分化が見受けられる。プラスの値をつけた「テレビ」と「インターネット広告」以外は前年同月比でマイナスに違いはないものの、「雑誌」は前月より回復、「新聞」「ラジオ」は悪化の方向にある。また「テレビ」の回復やそれ以外の4マス「新聞」「ラジオ」「雑誌」が前年同月比でほぼマイナス1割前後という値は、同一期間を対象にした二大広告代理店のデータ【電通と博報堂の種目別売上高前年同月比をグラフ化してみる(2011年7月分)】とほぼ同じで、これも興味深い動き。

今回も該当月における各区分の具体的売上高をグラフ化しておく。電通や博報堂の区分とは違うため、該当同月の両社データとの違和感を覚えるところもあるだろうが、参考値の一つとしてとらえてほしい。

4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2011年7月、億円)
↑ 4大既存メディアとインターネット広告の広告費(2011年7月、億円)

以前の記事で”「テレビ」に続き「インターネット広告」が広告費第二位となり、「新聞」を追い抜く形となった”としたが、その後「新聞」は復権、今月も先月に続き第二位の座を維持している。今月はやや差が開いた形となったが、「テレビ」と比べれば両者の違いはさほど大きくなく、立ち位置が容易に変わりうる状態であることに違いは無い。

次に、公開されているデータの推移をグラフ化する。インターネット広告のデータが掲載されたのは2007年1月からなので、それ以降の値について生成したのが次の図。

月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2011年7月分まで)
↑ 月次における4大既存メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(2011年7月分まで)

大勢としては「インターネットは激しい起伏の中で2009年後半以降は回復、プラス圏を維持。この数か月は再び大きな伸びへ」「テレビは2010年あたりから戻しの雰囲気」「ラジオはマイナス圏で低迷-やや下げ幅を縮小、一部はプラスに」「雑誌はかなり厳しいレベルの下げ幅を継続していたが、ここしばらくは復調の雰囲気も」という傾向を見せてい”た”。そして東日本大地震・震災による影響で今年3月分から、グラフは大きなうねりを見せ始めている。特に回復の流れにあった「売上高合計」の太い赤線が、再びマイナス圏に移行してしまったのが目に留まる。今月発表分では「雑誌」「テレビ」など一部分野で回復の動きが確認できるが、「インターネット」以外は震災前の水準にはまだ程遠い。

元々紙媒体の電子媒体への一部移行と適正な住み分け(紙媒体のすべてが電子媒体に移行する・できるわけではない)、電波媒体の広告プラットフォームとしての立ち位置の適正化(今は一部で過大評価ともいえる)は、メディアの技術進歩や需給関係の変化と共に、漸次進行していた。日本の場合は諸外国と事情がやや異なり、「既得権益の打破」を事あるごとに語る報道メディアそのものが自らの既得権益を頑なに守る傾向が強く、「立ち位置の適正化」は遅延している。

一方東日本大地震とそれに伴う各種震災・人災、そしてその後自然発生した人々の心境変化は、広告出稿側のお財布事情の変化、地震報道などで見せた各媒体の「真の価値」に対する(視聴者・広告主における)意識の移り変わりをもたらし、広告業界でも一部軌道修正がされた上で、変化の「時計の針」を先に進めている。特に「インターネット広告」と、他の広告(4マス)とのかい離が目に留まる(直上のグラフを見る限り、「インターネット広告は金額が小さいので、多少の額でも変化率が大きく出る」という解説は通用しない)。

今後も電通・博報堂の月次レポートの分析と共に、特定サービス産業動態統計調査の結果の追跡に傾注し、メディアと広告の状況変化の「香り」を感じ取る必要が求められよう。

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー