育児系は「げんき」がまだ元気、他紙はお疲れ…諸種雑誌部数動向(2011年4-6月)

2011/08/11 06:48

先に【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2011年4月-6月データ)】などで【社団法人日本雑誌協会】が2011年8月3日に発表した、2011年4月から6月分の主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータを元に、いくつかのグラフを生成した。今データは定期的に更新され、当方でもいくつかの雑誌について丸一年以上のデータが取得できたため、季節属性にとらわれない「前年同期比」の値を出せるようになったことは、これまでの記事でお伝えした通り。今回は「いつもの番外編」として、当サイトで定点観測しているデータ以外のいくつかの雑誌について、「前年同期比」における部数推移をグラフ化してみることにした。雑誌不況はどこまで、どのジャンルに浸透しているのか、どこまで進行しているのか、それなりにつかみとれるハズだ。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは一般週刊誌。状況としては前期とあまり変わらず。

一般週刊誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
↑ 一般週刊誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

一般週刊誌印刷証明付き部数(2011年4-6月)(万部)
↑ 一般週刊誌印刷証明付き部数(2011年4-6月)(万部)

今回計測分では前期比(前年同期比では無い・グラフは略)でプラスに転じている雑誌は6誌に渡っている(前期発売の無かった「FRIDAYダイナマイト」は除く)。「週刊現代」は相変わらずの堅調(ただしこれまでの炸裂的な勢いにはようやくストップがかかったようだ)、「週刊ポスト」も去年の夏以降やや復調を見せており、この2誌が比較的手堅い動きをしている。

今期は前期と比べるとワースト3誌はますます下り方に加速がついた一方、他の雑誌は上昇幅も下降幅もやや落ち着いた雰囲気はある。情報面でも流通面でも雑誌印刷の素材面でも震災直後の混乱から立ち直り、(場合によっては人心を扇動させるような)センセーショナルな表紙や内容の採用という、カンフル剤の投与的な手法を用いて売上を伸ばした雑誌も確認でき、それが年ベースでの比較にも影響を与えているものと思われる。

マイナス10%超えを継続している「SPA!」や「FLASH!」などは、紙媒体による「写真週刊誌」という存在において、供給過多の感は否めない。数字の減退ぶりがそれを裏付けている。あるいはデジタル系をメインとし、本誌はそのデジタル系のプラットフォームとして割り切り、出版形態・構成を変えるぐらいの変革すら求められよう。

続いて育児系雑誌。

育児系雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
↑ 育児系雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

育児系雑誌は比較的手堅いジャンルだったはずだが、今期は前回掲載時と比べて状況は悪化。元気なのは雑誌名通りの「げんき」だけで、後はみな「おつかれ」状態。特に「edu(エデュー)」は前期同様、前年同期比で10%以上のマイナス値を示しており、今後の動向が気になるところ。

食・料理・レシピ系雑誌。内食・中食への注力が高まる一方の昨今、ニーズは強まるばかり、のはずだったのだが、全般的に伸び悩み状態なのは前期と変わらず。インターネットに読者を奪われているのかもしれない。

食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
↑ 食・料理・レシピ系雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

色々とデータを再精査・追加入力をした上で、どうにかラインアップを4誌に増やしてグラフの形を整えたものの、状況は芳しくないことに変わりは無い。「栗原はるみ-」はともかく、他誌が連続二期10%内外のマイナス値を示しており、根本的なテコ入れが求められているのが分かる。メインコンテンツである「レシピ」について、携帯電話やスマートフォン経由で検索されるレシピページ・サイトにニーズを奪われてしまったのが、低迷の主要要因だろう。

エリア情報誌。こちらも苦境は続く。

エリア情報雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
↑ エリア情報雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

「関西ウォーカー」が前年同期比でプラスの値を示しているが、前期比ではマイナス。前期比プラスなら、震災の影響も多少はあったのかもしれないが(関東から移動してきた人の、道案内的な資料としてニーズが高まるという仮説)、さすがにそこまでの動きは無かった。

特に「ぴあ」の下げ幅が目立つが、すでに【雑誌の首都圏版「ぴあ」7月21日発売号で休刊・39年の歴史に幕】でもお伝えしたように、今年7月21日発売号をもって休刊となった。同誌のデータ掲載も今回が最後となる。


【イヌとネコ、耳や鼻が良いのはどっち?…イヌとネコのトリビアたち】にもあるように、しばしば対で紹介される「犬猫」双方の専門誌、「いぬのきもち」と「ねこのきもち」。

犬猫雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
↑ 犬猫雑誌印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数(万部)
↑ 「いぬのきもち」「ねこのきもち」印刷証明付き部数推移(万部)

今回も前回同様、前年同期比では「ねこのきもち」の勝利(……とはいえ両紙ともマイナス)。ただし直近二期比較では両誌とも印刷部数を減らしており、出版業界全体の不調は犬猫業界にも影響している。ちなみに直近期の発行部数は「いぬのきもち」13.9万部・「ねこのきもち」10.5万部で、「いぬ」の勝ち。

最後に小学館の「小学●年生」シリーズ。以前【「小学五年生」「小学六年生」が休刊・来年春に学習まんが誌「GAKUMANPLUS」を創刊へ】で報じたように、「小学五年生」「小学六年生」は休刊しておりすでに無く、データとして提示できるのは「小学一年生」から「小学四年生」まで。

「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)
「小学●年生」シリーズ印刷実績変化率(2011年4-6月、前年同期比)

今回も該当雑誌すべてがマイナス。前期における「前年同期比でマイナス40-50%」という事態は避けられたものの、減退率の小さめな「小学一年生」以外はすべて-20%超えの減り方は、やはり根本的なセールスの改善策、あるいはビジネスモデルの再構築を迫られていると評せざるを得ない。

ちなみに「小学六年生」「小学五年生」の代わりに登場した隔月刊誌「GAKUMANPLUS」は2010年4月15日に創刊。今回のデータで2期目となる。まだ「前年同期」は無いのでグラフには反映されてはいないが、今期部数は2.05万部、前期は2.55万部。次期は頑張って欲しい。



以上ざっとではあるが、定点観測の対象外となっている各種雑誌について、前年同期比の印刷実績の推移をグラフにしてみた。ごく一部の例外をのぞき、ほとんどが前年同期で少なくとも1割前後の売れ行き減な状態が確認できる。

ニーズが高い(【教育費 生活苦でも 減らしません 苦しい時こそ 子への期待を】などで触れているが、子供にかける費用は削られない傾向がある)育児系雑誌・小学生向けの学習雑誌ですら大きく落ち込んでおり、雑誌業界そのものが例外なく荒波にもまれていることが分かる。今期は多分に震災の影響が考えられるが、雑誌の命運において「天災で売上が減少したから勘弁してネ」とばかりに損失を補てんできるはずもなく、状況に臨機応変に手を打たねばならないのは、ビジネス全般に言える事。

また、今回取り上げた専門誌の領域(比較的ハードルが低い、一般向け大衆紙)は、デジタル系ツールとの組合せで、逆に紙媒体としての魅力を活かしつつ、多くの人から注目を集められる可能性を十分に秘めている。例えばAR(Augmented Reality(拡張現実・強化現実))の常用活用を模索するなど、今だからこそ出来る挑戦もあるはずだ。

決して多いとは言えない残り時間が尽きる前に、打てる手立ては講じておくべきだろう。


■関連記事:
【新聞や雑誌の買われ方はこの10年でどのように変化したのか……週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる (追補編)】

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