全体値のマイナスはひかえめ・震災影響の最悪期からは脱した、か?(電通・博報堂売上:2011年7月分)

2011/08/10 06:43

【博報堂DYホールディグス(2433)】は2011年8月9日、同社グループ主要3社の2011年7月における売上高速報を発表した。これで[電通(4324)]が同年8月5日に発表した単体売上高と合わせ、日本国内二大広告代理店の2011年7月次における売上データが出そろった事になる。今記事では両社の種目別売上高前年同月比をグラフ化し、広告全体及び両社それぞれの広告売上動向を眺めてみることにする。

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データ取得元の詳細、各項目の算出の上での留意事項は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】にまとめている。そちらで確認のこと。

二大広告代理店の2011年7月分種目別売上高前年同月比
↑ 二大広告代理店(電通・博報堂)の2011年7月分種目別売上高前年同月比

東日本大地震の影響がこの数か月に渡って現れているが、今月はその状況からはかなり脱したようにも見える。とはいえ、4マス(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が苦境に陥っていることに違いは無い。

また今月は先月から転じて「博報堂より電通の伸び率が良い(あるいは下げ率が低い)」項目が多数存在する状況となり、しかも影響力が大きい4マスでは、全項目で電通が優勢という結果となった。興味深い動きとして注目したい。

両社合わせると前年同月比でプラスなのは全部で5項目。具体的には「その他」以外では「インターネットメディア(電通)」「OOHメディア(電通)」「クリエーティブ(電通、博報堂)」という次第。いわゆる「4マス」が両社あわせてもプラスがゼロなのは、状況の軟調さを物語っている。

「雑誌」の下げ方が厳しいのは、【日本出版取次協会、出版物の店頭配布の遅延を発表】【ファミ通、薄っ通】などにあるように、震災以降、流通の混乱や紙・インクの不足などで出版そのものが間引きされたり印刷数が少なくなったり、部数は変わらなくとも1冊あたりのページ数が減ったことで広告も減少したのが原因と考えられる。さらに先日から【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2011年4月-6月データ)】などで雑誌の印刷部数の直近データを追いかけているが、そちらでも多くの雑誌で逓減状態が確認されており、マイナススパイラル状況にあるのが見て取れる。

4マスの中でテレビはもっとも早い復調が確認されている。ただ、金額が他の3メディアと1ケタ違うテレビの勢いが戻らないと(プラスにならないと)、4マス全体、しいては広告そのものの盛り上がりが欠ける状況が継続する感は否めない。一方具体的項目では4マスと共に注目を集める「インターネットメディア」だが、今月は電通が堅調、博報堂が不調という結果になった。

グラフの棒部分の長さが気になる「その他」項目だが、博報堂は元々額が小さめで比率の上では「ぶれ」が生じやすい(今月は3社あわせて7億円に達せず)ため。電通は72億円強と金額は大きく、ここまで大きく下落したのが気になる。そこで比較対象となる一年前を調べると、この月はワールドカップ効果によるものと思われる大躍進(2010年7月時点での「前年同月比」が400%近く)が起きていたことが分かる。つまり今回の「電通の『その他部門』の大幅下落は、1年前のワールドカップ効果の反動」であり、憂慮すべき範ちゅうの事象ではない、ようだ。

一部誤解される方がいるので改めて説明しておくが、上記グラフはあくまでも個々の会社の前年同月比に過ぎない。インターネット分野の額面は他の分野と比べればまだ小さめ、そして個々分野を会社毎に比較した額面上では電通の方が上。例えばインターネット分野なら、電通34.81億円、博報堂は21.10億円(3社合計)という数字である。

電通・博報堂HDの2011年7月における部門別売上高(億円、一部部門)
↑ 電通・博報堂HDの2011年7月における部門別売上高(億円、一部部門)

今回7月分は、東日本大地震の影響を丸ごと一か月受けた4か月目の月となる。震災の直接的な影響を受けた数字の変動はすでにピークを過ぎ、予定調和内の動きに戻りつつある。とはいえ、「4マスがさんさんたる有様」「ネットがかろうじてプラス」という状況に変わりは無く、今回の値が「ぶれ」「誤差」でないことが分かる。

電力供給不足は最低でも今夏、そして今冬以降も続く可能性が高い。以前懸念した「デジタルサイネージ」についても、【池袋駅のデジタルサイネージ、その後】で報告しているように地震直後のような「すべて全面オフ」という状況からは立ち直りつつあるものの、積極的な節電下における運用のためか、以前と比べていまいち勢いに欠ける感は否めない。表現を代えるのなら「申し訳なさそうな意思表示」という感じで、広告本来のありようとはやや違っている。ならば電力消費をほとんど伴わない、従来型野外広告にもう少し注目が集まってもよさそうなものだが、その気配は広告費動向からは「さほど」見受けられない。やはり心理的な面で、自粛ムードが浸透したままになっているのだろうか。

今後は東日本大地震前以上に、予算の上だけでなく電力消費の観点からも、(無意味な)慣習にとらわれることのない、コストパフォーマンスの高い広告手法が求められることになる。その分知恵を振り絞った、発想に優れた広告が待たれ、受け入れられ、消費者の目に留まることになるのはいうまでも無い。


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