コア層色が強いものが上位に、反動による下落紙も…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2011年4月-6月)

2011/08/09 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2011年8月3日、2011年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さの観点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それでは早速、まずは2011年の4-6月期と2011年1-3月期における印刷実績を見ることにする。

2011年の1-3月期と2011年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2011年の1-3月期と2011年4-6月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回は残念ながら一誌が、具体的には「月刊アスキードットテクノロジーズ」が脱落。【月刊アスキードットテクノロジーズも休刊、か......】で伝えているように、7月24日売り号で休刊が決定している。6月分までの印刷部数データはあるはずだが、休刊が決まっている雑誌のデータを公開しても意味が無い、と判断したのだろう。

状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は2年以上継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」といえる。

ただし今回計測期では、東日本大地震・震災による影響を大きく受けたのか、多くの雑誌で前期と比べて値を減らしているようすがひと目でわかる。とりわけ少年向けコミック誌項目ではばく進している本家の「ジャンプ」とあわせ、「ジャンプ二冠王体制」の構成要素たる「Vジャンプ」の落ち込みが目に留まる。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年4-6月期、前期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年4-6月期、前期比)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。さらに今回は東日本大地震・震災の直接・間接的影響(紙やインク不足、さらには節電周りによる生産調整)も考慮する必要がある。

突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが3誌、ポジティブが2誌となる。前期がネガティブ4・ポジティブ0だから、状況はむしろ改善したようにも見える。しかしマイナス値を示している雑誌はいずれも数%の下げを示している点を見ると、決して楽観視はできない。

東日本大地震による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の可能性・影響も考慮する必要はある。前回「むしろ次期、つまり4月-6月の方が、東日本大地震による影響は大きなものとなるだろう」と表記したのもそのためだ。マイナス中堅層、つまり数%の下げ方を記録している雑誌は、多分に地震の影響によるものだろう。しかし大きなマイナス値を示している2誌ほど、具体的には「Vジャンプ」「ファミ通DS+Wii」は前期でも同様に2ケタ台の減少値を出していて、注目せざるを得ない(「ファミ通DS+Wii」は二期前には2割超のプラスを記録しているが、その反動にしては長期間過ぎる)。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる(もっとも今回の場合、地震の影響は避けられないが)。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2011年4-6月期、前年同期比)

「PASH!」は久々に大きなマイナスを計上しているが、一時的なぶれの範囲内と見てよい(部数そのものが3万部未満なので)。「アニメージュ」や「声優アニメディア」がプラス、「ニュータイプTHE LIVE」「アニメディア」など、どちらかといえばコア層色が強いものが、上位に多く位置している(「声グラ」のように、少々残念な位置にいるのもあるが)。これらは読者として設定している層への積極的かつニーズに応えた雑誌構成や付録提供が、現状維持・堅調化という結果に表れていると見てよいだろう。

一方で10%超えのマイナス値を示す雑誌にはやや奇妙な動きが見られる。「ファミ通DS+Wii」や「ハイパーホビー」「アスキー・ドット・ピーシー」などの常連に食い込む形で、印刷部数そのものの雄として取り上げられることの多い「Vジャンプ」が、3割超のマイナスをはじき出してしまっている。同誌は印刷部数も大きい(今回期は29.0万部)が、同時に特集・付録内容とそれらに対する需要を考慮し、数万部単位での調整を行っているので、「誤差の範囲」との解釈もできる。しかし前年同期比3割超は、単なる「調整」の幅を超えている感はある(一年前の同期を確認する限り、遊戯王関係のカード応募者全員サービスが行われていた時期で、その反動の可能性も否定できないが)。

「ファミ通DS+Wii」も相変わらずだが、先日の「3DS大幅値下げ」で公知されたように、3DSのセールスが不調なのも遠因といえる。今回の値下げでどこまで雑誌の売上に貢献するか、気になるところだ。



前回記事同様、印刷部数が漸減している雑誌がずらりと並んでおり、市場全体の不安程感は否定できない。震災の影響を考慮しても、環境の悪化は否めない(さらに「震災で雑誌の売上が落ちたので、営業成績悪化は無かったことにする」という都合の良い話はどこにもなく、影響もまた現実として受け止めねばならない)。一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動した読者層のニーズを適切につかみ、それに応えるコンテンツの提供」が際立つ傾向があり、それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている。

不景気で可処分所得が減少し(主要購読者層たる若年層は特に減退中)、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心も薄れているのが現在のエンタメ界隈の現状。とりわけスマートフォンの登場と普及は、「機動性の高い娯楽」(例えば雑誌、携帯ゲーム機)に大きな打撃を与えている

お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を、創り手側は送りださねばならない。店頭に並べられた商品の価値が、購入予備軍の視点から「無料で閲覧できるのとさほど変わらない質でしかない」と判断されるものなら、売上が落ちても仕方の無い話。

もちろん「読者のニーズを適切に、深く追求する」というのをがむしゃらに信じ込んではいけない。同人誌やサークル誌と違い、一定数量を販売する(=一定数の不特定多数から成る人達に支持される)商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない。印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、プラスへの歩みを続けているに違いない。


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