【更新】「ウルトラジャンプ」は「ジョジョリオン」で大飛躍…少年・男性向けコミック誌部数動向(2011年4月-6月)

2011/08/08 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2011年8月3日、2011年4月から6月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向・実情を示すものとしてては、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに精度が高く、検証素材としても有益なものである。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者にとって興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

スポンサードリンク


データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

登場する冊子数はいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明付きのもので、雑誌社側の「公称部数」ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載の終了・開始、折り込み付録etc.)のため、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはない。

2011年1-3月期と最新データ(2011年4-6月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2011年1-3月期と最新データ(2011年4-6月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで282万5000部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも違いは無い。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由からデータが失われたものは無い。新規追加分も皆無。小学館の「ゲッサン」は今回で二期目となり、ようやく前期比も合わせて掲載できるようになった。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2011年1-3月期と最新データ(2011年4-6月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2011年1-3月期と最新データ(2011年4-6月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたが、両誌とも今期に至ってもデータの登録は無し。コンビニや本屋などでその姿も何度となく確認できている。このような条件下で枝分かれした場合、どちらが勢いを得るのかという観点でも興味深い実例なことから、早期のデータの開示を望みたいところ。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。季節変動「など」を無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。幸いにも今回は該当誌は無し。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年4-6月期、前期比)

今期は前期以上に東日本大地震による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の影響が出ている可能性が高く、マイナス値の多い雑誌が多いのも仕方が無い。しかし前回も解説したように、今件各数字は「期間中に発行された冊子すべての印刷部数総計」では無く、「期間内の1号あたりの平均印刷部数」のため、影響は最小限に留まっているものと想定できる。

まず「コロコロコミックス」の下落が目立つ。元々部数は90-100万部を維持しており、前期の90万部近くからの76万部強への下落はイレギュラー的なレベル。付録が多いため、震災による影響を強く受けた可能性は否定できないが、同時に新学期で購入層が増えるこの時期での大幅下落変動は、気になるところではある。

一方、部数としては小さめだが今期においては大きな伸び率を見せたのが「ウルトラジャンプ」。これは該当する期に発売された各号で確認した限りでは、『ウルトラジャンプ 2011年06月号』から連載を開始した、「ジョジョ」シリーズ第8部の「ジョジョリオン」がポジティブ要因になったと見て間違いない。特に連載開始号である6月号は表紙を飾っただけでなく、ポストカードの付録や記念企画など、同シリーズファンにはたまらない内容が満載のため、多くの人が買い求めたものと想像される。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2011年4-6月期、前期比)

今回はプラスを記録したものは2誌で、前期から1誌マイナス。しかもうち1誌は0.1%のみのプラスで、事実上プラスは1誌のみと評しても問題は無いほど。他方、5%以上の下げを見せたものが7誌確認でき、こちらは前期比プラス4誌で、状況は確実に悪化している。中でも10%以上のマイナスを見せた3誌の中期的な流れを見ると、「モーニング2」「スーパージャンプ」「ビジネスジャンプ」いずれも一様に減少を続けている。3誌とも早急な持ち直しのための施策が求められるが、うち2誌は後述するように、その「施策」が先日発表された。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2011年4-6月と、その1年前の2010年4-6月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年4-6月期、前年同期比)

1年単位での変移を見ると、前期の記事でスポットライトを当てた「ドラゴンエイジ」がトップ。直近期での印刷証明部数は3.2万部だが、記録が残っている限りでは一時落ち込んだものの、2007年-2008年度レベルの水準にまで回復している。「これはゾンビですか?」の例にもあるように、アニメ化などで話題となった作品への注力を推し進め、地道に立て直しを図っている雰囲気がある。

マイナス域では部数が多いにも関わらず減少率も大きな「コロコロコミックス」の存在が気になる。同誌は期単位では掲載作品や付録、取り扱うタイトルなどで10万部単位の調整を行っているが、通常変動域の範囲からはやや逸しているのは、前期比の部分で触れた通り。一方で「月刊少年ライバル」「月刊少年シリウス」両誌は数万単位なのでぶれが生じやすいこともあるが、印刷証明部数は一様に減少を続けており、先が非常に不安視される(前期記事同様)。

そしてほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのも前回から変わらない。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年約1割の売上減少は、容易ならざる事態……と、ここ数回にわたりほぼ同じ言い回しを使わねばならない状況。サンデー・マガジン両誌の発売日にコンビニへ足を運ぶと、前誌はひと山、後誌はふた山の平積みがされている場面を見ると、そのまま両誌の勢いを見ているようで、せつなさがこみあげてくる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2011年4-6月期、前年同期比)

前期分記事では全誌がマイナス圏だったが、今回は3誌がプラス。ただしマイナス圏でマイナス20%超の動きを見せるものが2誌も出るなど、二極化した雰囲気。プラス圏は「ガンダムエース」「ヤングアニマル」「コミック乱」などプラス領域でお馴染みの顔ぶれがそろっているところを見ても、その仮説の信ぴょう性は高いと評せざるを得ない。

なお下げ率最高値を見せた「スーパージャンプ」、そしてマイナス14.8%で第3位となった「ビジネスジャンプ」だが、先に【隔週刊誌の「ビジネスジャンプ」「スーパージャンプ」が今秋統合へ】で伝えているように、今秋をめどにした統合が発表されている。さらに月刊誌や季刊誌の創刊も予定されており、本格的な(本当の言葉の意味としての)リストラクチャリングが進められるとのことである。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては東日本大地震の影響(直接の購入性向の減退に加え、インクや紙、付録用素材の不足)が加味されており、マイナス値が出てしまうのは仕方ない部分もある。しかしそれを差し引いても、雑誌の売上そのものの減少傾向が継続していると断じざるを得ない。

特に(単純に印刷冊数≒販売冊数という観点で)男性向けコミック誌が相当危険な状態なのは一目瞭然。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのは明らか。直上で触れた「スーパージャンプ」、「ビジネスジャンプ」両誌の統合も、そのような状況に応じるための動きと見て良いだろう。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」事態が進行している。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものと考えられる。これは先日民間調査会社の調査結果を精査した【雑誌を読まない人3割近く、平均購読冊数は月1.25冊】でも裏付けされている。

逆に堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽が無いわけではない。例えば今回なら、「ジョジョリオン」のスタートで大きく飛躍した「ウルトラジャンプ」が好例である。さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開も検証課題として挙げられる。

携帯情報端末の浸透が、一般携帯電話からスマートフォンに移行することにより、雑誌の立ち位置はますます不安定なものとなっていく。雑誌のスタイルを維持するにせよ、他メディアとの連動性を高めるにせよ、大胆なかじ取りをしなければいけない時期に来ていることだけは、間違いあるまい。


■関連記事:
【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー