ソーシャルゲームが家庭用ゲーム機ソフトを超えた・コナミの直近四半期決算短信をグラフ化してみる

2011/08/07 12:00

「プロ野球ドリームナイン」総合ゲームメーカーの【コナミ(9766)】は2011年8月4日、2012年3月期(2011年4月-2012年3月)の第1四半期(1Q、以下同)における決算短信と、その説明資料を公開した。それらのデータからは、同社の収益構造、そしてゲーム業界全体の動向をかいま見ることのできる動きが確認できる。今回はいくつかの値を抽出してグラフを生成し、その動きの視覚化を試みることにする。

スポンサードリンク


コナミではこれまで売上を勘案する事業部門のうち、主軸である「デジタルエンタテイメント部門(※)」について「ゲームソフト」「アミューズメント」「カードゲーム」「オンライン」「その他」と区分していたが、2011年3月期の決算短信(資料)からは「コンシューマゲーム」「SNS」「eアミューズメント」「カードゲーム」「その他」とあらためている。「SNS」とは元々「ソーシャルネットワーキングサービス」のことだが、それから転じて「ソーシャルゲーム」のことを意味している。わざわざ一項目が創られたことで、他のジャンル(オンラインゲーム)に内包する領域を超えた成長を見せ始めたことを意味する。

※デジタルエンタテインメント事業部門以外には、ゲーミング&システム事業部門、遊戯機事業部門、健康サービス事業部門などがある

その2011年3月期通期決算の、デジタルエンタテインメント事業部門における売り上げの推移を、昨年の業績を同一区分に再計算した上で比較グラフ化したのが次の図。コンシューマゲーム(家庭用ゲーム機向けゲーム)もそれなりに伸びているが、それ以上にソーシャルゲームが大きな成長ぶりを見せているのが分かる。

↑ コナミ・2011年3月期通期決算・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年期併記)(億円)
↑ コナミ・2011年3月期通期決算・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年期併記)(億円)

昨年度においては売上額こそカードゲームにも及ばないが、堅調な伸び率なのは一目瞭然。

この勢いは次の期、つまり先日短信が発表された、現在進行年期における第1四半期で加速しているのが確認できる。上記グラフと同様の区分で売上について、昨年同期との比較の形で示したのが次のグラフ。

↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年同期併記)(億円)
↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年同期併記)(億円)

昨年同期は「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER(メタルギアソリッドピースウォーカー)」や「ラブプラス+(ラブプラスプラス)」をはじめ、数々のヒット作に恵まれたこともあり、大きく売上を伸ばしたコンシューマゲーム部門だが、今年もヒット作はいくつか見受けられるものの、売上は振るわず、ほぼ半分にまで落ち込んでしまう。一方でソーシャルゲームは躍進を続けており、グラフ中のコメントにもあるように、「ソーシャルゲームの売り上げが、家庭用ゲーム機ソフトの売上を超える」という図式が出来上がってしまった。家庭用ゲーム機ソフトのセールスの谷、ソーシャルゲームの加速度的な伸びという条件が重なった結果とはいえ、そして資料上は1億円の差異でしかないものの、少なからぬ衝撃を与える事実であることに違いは無い(コナミで「ソーシャルゲーム」区分を創生して売上を公表してからは初めての出来事となる)。

この状態について別のスタイルでグラフを生成すると、その動向がさらに良く分かる。

↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上構成比率(前年同期併記)(「その他」省略の上計算)
↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上構成比率(前年同期併記)(「その他」省略の上計算)

「その他」部門は額面がごく少ないこと、該当期はマイナスを示していることから考慮外とした上で構成比を再計算したものだが、家庭用ゲーム機向けの売上の減退分をほぼソーシャルゲームが補ってしまった(入れ替わった)ことが分かる。これは決算短信本編にも反映されており、これまで「デジタルエンタテインメント事業」の業績報告説明文ではゲームソフト部門の説明が最初に行われていたのに対し、2012年3月期・1Q四半期では

(デジタルエンタテインメント事業)
ソーシャルゲームでは、昨年9月よりGREE(グリー)にて配信を開始した「ドラゴンコレクション」の登録者数が300万人を突破し、全体ゲームランキングでも37週連続総合1位を獲得しました。また、6月にはスマートフォン向けの配信を開始し、フィーチャーフォン版との対戦や協力プレー、機種変更時のデータ引継による継続プレーも可能とする等、さらなる人気の獲得に向けた展開をしております。また、昨年12月よりモバゲーにて配信を開始した武将ソーシャルゲーム「戦国コレクション」も、登録者数が150万人を突破しランキングの上位を維持する等、好評を博しております。さらに、4月よりGREEにて配信を開始した社団法人日本野球機構の公式ライセンスを受けた「プロ野球ドリームナイン」の登録者数も100万人を突破し、全体ゲームランキングでも「ドラゴンコレクション」に続く2位を11週連続で維持する等、ソーシャルゲーム市場へのコンテンツ展開を強化しております。

ゲームソフトでは、リアル系野球ゲーム「プロ野球スピリッツ2011」をプロ野球の開幕にあわせて発売したほか、「ウイニングイレブン」(欧米名「Pro Evolution Soccer」)シリーズが引き続き堅調なリピート販売を続け、全世界累計販売本数が7,000万本を突破しました。

とあり、ソーシャルゲームに関する解説が最初に語られている。売上高の順、といえばそれまでだが、やはり「状況の変化」を感じざるを得ない。

「売上が大きくとも利益が得られなければ」という疑問もある。資料では個々の項目別の利益・利益率までは記載されていないものの、デジタルエンタテインメント事業部門単位での売上以外に営業利益、営業利益率が掲載されている(営業利益とは【カプコンの事業区分別営業利益率の推移をグラフ化してみる】にもあるように、売上から、原価と販売管理費などをのぞいた、本業での儲けのこと)。そしてこの営業利益と、営業利益を売上高で割った結果「営業利益率」(その事業部でのお仕事の利益率、儲けやすさ)をグラフに反映させたのが次の図。

↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年同期併記)(億円)(売上高合計と営業利益)
↑ 2012年3月期・第1四半期・デジタルエンタテインメント事業部門における売上(前年同期併記)(億円)(売上高合計と営業利益)

利益はほぼ3倍近く。営業利益率も3倍近くにまで伸びている。もちろんこの伸びのすべてがソーシャルゲーム起因というわけではないが、他の項目(eアミューズメントやカードゲーム)と比べてソーシャルゲームの売上の伸び率が大きいことを考えれば、多分にソーシャルゲームが利益の底上げに貢献していることは容易に想像ができる。



家庭用ゲーム機ソフトと比べればソーシャルゲームは、物理的な原材料費やパッケージ生産に絡む諸経費はほとんどかからない(運用費、サーバー設置代、各種パテント料などは必要)。その分利益率が高くなり、利用者の増加に伴う利益への貢献は家庭用ゲーム機ソフトの比では無いことは、容易に想像がつく。

もちろん人気が出ずに運用の早期閉鎖を求められたり、赤字や低利益での運営継続を求められるリスクは存在する。しかしそのリスクはパッケージソフトでも例えば「開発終了したがほとんど発注が無かった」「開発費を回収できるほど売れなかった」という形でありうる話で、ソーシャルゲーム特有のものではない。

実際、資料に目を通すと、現行サービス提供タイトル以外に、今後も続々と新規のサービスが提供される予定。ラインアップはそれぞれ魅力的な内容を期待できるものとなっている。

↑ 直近短信資料による、ソーシャルゲームの提供(予定)一覧
↑ 直近短信資料による、ソーシャルゲームの提供(予定)一覧

ソーシャルゲームにはソーシャルゲームなりのビジネス上の難しさ(会員数が増加した際のバランス調整や、パソコンのオンラインゲームが直面した「プレイ中はプレイヤーの時間を拘束する」ため、普及タイトル数が増えれば増えるほど、1ゲームあたりの参加者・アクティブプレイヤーは減退していく傾向にある、など)もあるものの、現時点ではパッケージソフトの販売と比べ、はるかに「魅力ある」事業部門となっているのは間違いない。

今後コナミの動向はもちろんだが、大手他社がどのようなかじ取りをしていくのか、気になるところではある。


■関連記事:
【ソフト・ハード共に昨年以上の不振…2010年の家庭用ゲーム総出荷額は1兆7975億円】

スポンサードリンク




▲ページの先頭に戻る    « 前記事|次記事 »

(C)2005-2017 ガベージニュース/JGNN|お問い合わせ|サイトマップ|プライバシーポリシー