平日・土日の差異が縮小化、原因は?…東北・東京・中部電力需要推移(2011年7月31日まで)

2011/08/03 12:10

震災による電力需給のひっ迫を受け、東北・東京・中部電力の一日単位の最大電力需要推移をグラフ化して精査した記事(2011年5月12日まで反映した版)をスタートとし、定期的(現状では月一)に東北・東京・中部の各電力管轄における、一日単位での最大電力需要推移をチェックし、適切な情報解析と電力需給状況の確認をしている。今回はその2011年7月31日までを反映した版である。

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まずは純粋に3月1日以降、収録最新データの7月31日までの推移を東北・東京・中部で並列表記したものを生成する。

↑ 東北・東京・中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東北・東京・中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

細かいギザギサを刻んでいるのは、曜日特性によるもの(土日は多くの企業が休むため、全体としての電力需要が減る)。東北・東京電力は本震の3月11日の翌日12日に大きく値を落とし、その後はそれ以前と比べて低水準で推移しているのが分かる。

一方中部電力は、東北・東京電力と比べれば本震直後の減少が少ない一方で、全体的に少しずつ減退していった様子が確認できる。これは季節的なものもあるが、製造業中心の中部電力管轄において、それらの電力消費が減っていることも要因として考えられる(【産業の活力が分かる、大口電力使用量をグラフ化してみる(2011年4月分)】でもその片鱗が確認できる)。もっとも6月以降は、むしろ増加の動きが見て取れる。そして中部電力が製造業中心云々というのは、後述する「販売電力量、電灯・電力需要実績」などで確認できる。

さらに今回の記事で追加された7月以降のみに注目すると、「平日・土日の差異が小さくなった」「下旬に大きな下落」の2点が分かる。前者は【大口需要家への電力制限の緩和や除外対象など、詳細発表】でも説明した「電力使用制限令」により(平日に大量の電力を消費する)大口契約者の制限がかかったため、平日と土日の差異が小さくなったこと。後者は気温の低下で冷房の需要が減ったことによる動きといえる。

続いてもう少し分かりやすい形で、それぞれの電力会社別にグラフを再構築する。昨年の同月同日と併記する形で生成したのが次のグラフ。曜日調整はしていないが、大体の状況は把握できる。

↑ 東北電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東北電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

↑ 東京電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東京電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

↑ 中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

”6月以降は誤解を生む可能性があるのでデータの修正そのものはしないものの、「非常に暑かった去年と比較した値」ということを念頭に置いておく必要があろう”とは以前の記事での言い回しだが、7月終盤の気温動向を思い返してもらえばお分かりの通り、数日に渡って非常に涼しい日々が続くこととなった(先月とまったく逆のパターン)。このため曜日修正を施していない今グラフではあるが、7月下旬の区域で東京・中部電力両管轄において、赤と青の線の距離が、非常に大きく離れる状況が確認できる。

中部電力のグラフは東北・東京電力と比べると、異様なまでに大きな変動(最大電力の絶対値ではなく、変動率という意味)なのがひと目で分かる。これは【中部電力の各種データをグラフ化してみる】でも解説したように、中部電力管轄では他の管轄と比べて工業(製造業)による電力消費の割合が大きく、土日の工場停止時には全体の電力消費の減退率も大きくなるため。

それを確認するため、「でんきの情報広場」内の【電力需給実績】で、年ベースの直近データ2010年度分を用い、3電力管轄における販売電力量実績を基に、販売電力(需要電力)の構成比をグラフ化しておく。問題視されているのは「需要ピーク時における電力」で「電力量」ではない(「水道管の太さ」と「一日にその水道管を通った水の量」のようなもの)。しかし電力と電力量には相関関係があるため、比率把握のグラフ用データとしては有益なものと判断した。

↑ 販売電力量、電灯・電力需要実績(比率、2010年度分)
↑ 販売電力量、電灯・電力需要実績(比率、2010年度分)(再録)

「電灯」は一般家庭や小規模商店、「電力」は業務用の電力(三相200V)。「特定規模(業務用)」「特定規模(産業用)」は、高圧受電・特別高圧受電のもので、それぞれオフィスビルや商業施設、中・大規模工場向けのもの。中部電力管轄は工場需要が大きく、平日と休日の差異が出やすいことがあらためて理解できる。

そしてその工業(製造業)においても、7月からその変動幅が小さく、そしてやや不規則な動きに転じているのが分かる。これは「電力使用制限令」で東北・東京電力管轄内における法的拘束力のある節電が大口需要家に対して求められているのに伴い、中部電力でも「要請」という形でそれに近い節電が要求されているのに合わせて行われた節電効果によるところが大きい。

最後に2010年と2011年での電力需要の差異を、比率でグラフ化したものを展開する。電力需要は曜日による属性変化が大きいことは先に触れた通りだが、2010年と2011年では同じ月日だと曜日が一日ずれる計算になるので、それを修正している。なお中部電力の値はプラスマイナスゼロを行き来してい「た」ので、分かりやすいように赤の点線をゼロ部分に追加した。

↑ 東北電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 東北電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

↑ 東京電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 東京電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

↑ 中部電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 中部電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

現在確認できるのは7月31日までのデータ。グラフ中吹き出しでも示したように、ゴールデンウィーク中の祝祭日前後でやや特異な動きを見せているが、全般的に電力供給不足、そしてそれによる節電が叫ばれている東北・東京両管轄内では本震後マイナス圏を推移している。

そして今回追加された期間内では7月上旬-中旬における異様な暑さの影響で、東京・東北両電力管轄で大きな上昇が把握できる。両管轄はすでに「電力使用制限令」下にあり、この大きな上昇期間以外は(特に下旬の気温の下がり方に合わせ)本震直後に近い、あるいはそれ以上の下げ率を記録している。

なお東電管轄で7月21日から23日にかけて異様な前年比のマイナス値が確認できるが、これは昨年の該当日において、気温の上昇から電力消費が大きな跳ね上がりを見せており(昨年7月21日-23日の東京地方の最高気温はそれぞれ36.3度・36.1度・35.5度)、今年は逆に気温が低い事(23.6度・24.0度・27.0度)で電力消費が少なくて済んだのが原因。東北電力の同時期の下げも、原因は同じ。

中部電力では【中部電力の需給計画を見て】でも触れているが、超法規的要請により浜岡原発が停止。供給予備力が非常に危ういレベルに達したことで、5月以降は節電対策が求められている(東京電力管轄への電力の融通も当然止められた)。【中部電力、夏季の電力不足を予想し節電協力を公知】にもあるようにイレギュラー的な事象が発生しなければ、ギリギリ需給関係のバランスは保てる状況まで供給力をかさ上げできているものの、不安はぬぐえず、上にもあるように法的拘束力のない「要請」という形で、準「電力使用制限令」状態にある。これが幸いしてか、7月に入ってからは気温が高い時期のイレギュラーな動きはあるものの、それ以前の時期よりは前年比でマイナス値を示す日々が多くなっているのが分かる。



一連の記事で取り上げている3電力管轄では、「電力使用制限令」という法的拘束力のある命令による節電のおかげで、7月以降は東京・東北両管轄で大きくマイナス側に振れた動きが確認できる。平日の需要増加が大人しくなったのも、ひとえにこれによるもの。中部電力では直接命令下には無いが、似たような努力をしているようすがうかがえる。

もっとも7月上旬の動きでも分かるように、多分に気象状況に左右されてしまうのも事実。昨年の7月下旬、あるいは先月7月の上旬のような猛暑が続けば、「電力使用制限令」下でも油断はできない。

一方、【関西電力姫路第二発電所(火力)で故障発生、60万kW分の供給力低下】などで解説しているように原発周りの問題がクリアできない限り、電力不足の根本的な解決は短期レベルでは不可能。【火力発電所2基故障で電力不足、中部→関西へ緊急融通電力】【鹿島火力発電所4号機、トラブルで運転停止・60万kW減】などにもあるように、既存の発電所も通常稼働状態で起きうるトラブルに加え、電力需給のひっ迫から多分に無理な稼働をしているところもあり、イレギュラー的な電力供給減が相次いでいる。

この数日の涼しさで、電力需給にやや余裕があるところを見て「足りているから大丈夫では」と強気にとる発言もちらほらと見受けられる。しかし、それが関係者の努力によるものであるのと同時に、「たまたま」の結果であって、今後も継続的にその状態が維持される保証はどこにもないことを、肝に銘じねばならない。

そして「来年の事を語ると鬼が笑う」ではないが、今夏を無事に乗り越えても、今冬、そして来年以降も、電力需給がひっ迫しうる夏と冬は必ずやってくる。今夏に向けて応急処置的に増設されている電力供給源のうち、少なからずのものは「期間限定」「コストパフォーマンスが非常に悪い」ものであり、常用・中長期の利用は困難(事実上不可能)。応急処置的な展開だけでなく、同時に中長期の戦略にのっとった、そして夢想話や世論を扇動する山師らによる幼稚な計画では無く、国全体にとってプラスとなる計画の策定が設実に、しかも早急に求められているのは言うまでも無い。

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