時間がかかる、店員が足りない…万引き犯補足時に届け出しない理由とは

2011/07/27 06:25

判断愛知県警は2011年6月21日に、同県内でのいわゆる「万引き」と呼ばれる行為に関する調査結果を発表した。万引き被疑者自身だけでなく、万引き被害者(販売店管理者など)をも対象としたもので、愛知県警管轄内の事象に限定されてはいるがサンプル数も多く、有意義、しかも最新のデータが盛り込まれたものとして、価値ある内容となっている。今回は被害者(販売店・管理人など)からの調査結果内容のうち、捕まえた万引き行為者を警察に届け出ない理由や、届け出をする・しないの基準にスポットライトを当てることにする(【該当リリース、PDF】)。

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調査対象母集団の内訳については【4割強は「交友関係ほとんどナシ」…万引き被疑者のプロフィールをグラフ化してみる】にて記した通り。確認はそちらの記事で行ってほしい。

「該当行為者」を捕まえた時に店側がどのような対応を取るかを尋ねた結果をグラフしたのが次の図。単純に万引き行為を確認した場合と比べ、警察に届け出る割合がかなり大きくなっている。全体では5割近くが「該当行為をした本人を補足した場合、警察に通報する」と回答している。

↑ 万引き犯を捕まえた時の届け出状況
↑ 万引き犯を捕まえた時の届け出状況(再録)

一方で何割かの割合で捕捉しておきながら届け出をしない事例も確認できる。その理由を聞いたのが次のグラフ。「時間がかかる」が62%、次いで「処理対応をする店員が不足している」が34%と続いている。

↑ 万引き犯補足時に届け出しない理由(複数回答)
↑ 万引き犯捕捉時に届け出しない理由(複数回答)

「時間的・人員数的」言い換えれば「マンパワー的」な不足で、特に中小店舗において届け出が出来ない件は、以前【約半数は「全件届け出」…万引き被害と当事者を捕まえた時の届け出状況をグラフ化してみる】で軽く触れている。今件グラフはそれを確定づけるものである。特に少人数経営が多い書店、店員一人当たりのコストが高めな家電量販店において、「処理対応店員の不足」が多いのが目に留まる。

なお「家電量販店」「ホームセンター」などで特に高い「その他」項目だが、リリースによると「未成年の場合は学校や親に連絡」「万引き被害か判然としない」が多いとある。【高齢者は2/3がスーパー、少年は3割が量販店で…万引きの実態・状況をグラフ化してみる】で解説しているように、少年区分では量販店での行動が多いことを考えれば、納得もいくというものだ。

↑ 犯行場所
↑ 犯行場所(再録)

では該当行為者の捕捉時に、警察に通報をする・しないの判断は、どのような基準で行われているのだろう。全体では「常習者に限る」とする回答がもっとも多く36.6%、次いで「(条件無しに)全件を通報する」が29.7%という結果となった。

↑ 万引き犯捕捉時の警察への通報基準(複数回答)
↑ 万引き犯捕捉時の警察への通報基準(複数回答)

「全件通報」は他の項目とは重なりえないので別として、「常習者」「犯行を認めない時」など店舗側の困り方がキツいものほど通報する比率が高いのが見て取れる。考え方を変えれば「店だけでは手に負えない」というところか。

このうち「常習者」「全件通報」、そして「成人だけ」の項目を抽出し、店種別にグラフを再構築したのが次の図。

↑ 万引き犯捕捉時の警察への通報基準(複数回答)(店舗別、一部)
↑ 万引き犯捕捉時の警察への通報基準(複数回答)(店舗別、一部)

「全件通報」がドラッグストアや家電量販店、スーパーなどで多いのは前述の記事の通り。一方で、ショッピングセンターやホームセンター、コンビニでは、「常習者」を通報基準としているところが多い。例えば「家電量販店は商品単価が高いので犯罪性が高く、再犯の際のリスクが大きくなるから、全件通報の比率が高い」「スーパーは全件通報の店舗も多いが、子供の案件で通報した後の噂話を危惧して『成人のみ』に留める店も多いのでは」「ドラッグストアは化粧品など商品単価が高く商品そのものが小さいものも多いし、広くて死角が出来やすいため、該当行為のリスクが高い。厳粛に対応しておかないと、常習者の温床になりかねない」など、それぞれの店舗の商品や対応人員事情などがすけて見えてくる。

以前別項目を対象とした記事でも触れているが、万引きへの防犯体制の整備や、該当行為者の補足の際の対応は、それぞれが店舗にとって大きな負担となる。そして当然、行為によって奪われた商品による損失は大きい。例えば【書店の売上高などをグラフ化してみる(2010年・「出版物販売額の実態」版)】にもあるが、大手書店ですらほとんどが売上高経常利益率は3%にも満たない。これは「100円の商品を売ると、利益が3円出る」という状態。つまり100円の商品が一つ万引きで失われると、約34個の同額商品を売った利益でようやく、その損失の補てんができる計算になる。

↑ 売上高経常利益率(2009年、上位10位)
↑ 売上高経常利益率(2009年、上位10位)(再録)

犯行動機のうち多数で「お金がもったいないので使いたくないから」と自分勝手な理由を挙げる状況においては(【3/4は「お金を使いたくない」…万引きの動機をグラフ化してみる】)、「相手のこと」、今件でなら「お店のこと」をもう少し理解できるよう、各方面で啓蒙を心掛けてほしいものだ。例えば商売や流通の仕組みや、店がどのようにお金をやり取りして経営されるのか、商品がどのような流通経路を通して自分らの手元に届くのか、である。それらをしっかりと認識していれば、もう少し状況は変わってくるに違いない。

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