猛暑や節電に伴う商品購入がプラス…2011年6月景気ウォッチャー調査は現状・先行き共に上昇

2011/07/09 19:30

内閣府は2011年7月8日、2011年6月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、現状判断DI・先行き判断DIは共に水準の50を割り込んでいる状況には変化はないものの、現状・先行き共に前月より上昇した。これは東日本大地震とそれに伴う各種震災が原因で下げた3月から、反動や自粛マインドの弱まりによって上昇した先月4月次・5月次と、同じ要因による動きと考えられる。基調判断は「景気の現状は、東日本大震災の影響による厳しさが残るものの、持ち直しの動きがみられる」と大幅に低い水準を維持していた状況が、多分に回復したことを示している(【発表ページ】)。

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数字上の回復は進む
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年6月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス7.7ポイントの49.6。
 →3か月連続の増加。「悪くなっている」「やや悪くなっている」が大幅に減り、「変わらない」「やや良くなっている」が増加している。
 →家計では消費マインドの回復、猛暑や節電に伴う商品購入がプラスに働き上昇。企業はコスト高の影響はあるが原材料の供給不足遅延が解消されつつあることから上昇、雇用は求人増加で上昇。
・先行き判断DIは先月比でプラス4.1ポイントの49.0。
 →復旧需要への期待、消費マインドへの回復期待で上昇。
主に震災からの時間経過による自粛マインドの低下、復興需要への期待から数字は上昇している。原材料や機材の不足、遅延、コスト高など現実的な条件悪化もある程度回復を見せており、少なくとも現状判断は通常値に近いところまで復活している。しかし先行き判断では期待感による所が大きいのが気になるところ。

雇用指数の気になる動き
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表分も全部門がプラス。伸び方の勢いも先月以上のもの。50を超したものも、サービス関連と雇用関連の2項目で確認できるなど、目覚ましいものがある。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後でようやく下落傾向が落ち着く状態となった。その後は大きく戻しを見せたものの基準値50までには戻らず、それ以降は50を天井とする形で小さな上下変動を見せていた。

しかし今年3月において、東日本大地震の影響を受けて全項目が単月では、リーマンショックを超える勢いで下落することとなった。幸いにもその後の回復ぶりも記録的な上昇カーブを描き、6月分では震災直前の水準近くにまで戻す形となった。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・もみ合いをこなしながら
回復をうかがう状況だった。
・東日本大地震による震災が
すべてを吹き飛ばし
急降下状態に。
・三か月目の戻し。
震災前までの状況にほぼ回復。
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、リーマンショック時の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。その後は「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態だった。

そして今回の東日本大地震の影響もまた、傾向的にはリーマンショック時のそれに近い。一か月で2001年前後の不景気の最悪期と同じ水準にまで一挙に落ちたのだから、「急降下」よりは「垂直落下」に近い状態といえる。

地震直前の流れとしては、雇用指数とその他の指数の差が大きくなりつつあり、これは2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもあった。このパターンを踏襲するとなると、「その時点での」景気がしばらく継続する可能性が高いことを示していた。しかし今回、東日本大地震の影響がすべてのパターン動向の可能性を打ち消してしまう形となってしまった。まさに五里霧中の状態。

今月の戻しの動きは、雇用指数の急激な上昇ともあわせ、震災前の状態への復帰の気配を感じさせるものがある。このままの流れが続けば、先月懸念した「他の指数より雇用指数が大きく下回るのは全体的な水準が低迷=不景気の時の共通事項」が杞憂で終わることになるのだが、節電や震災の傷跡は確実に、それこそ傷が化膿するかのごとく浸透しているのも否定できず、油断は禁物ともいえる。

景気の先行き判断DIも上昇を見せた。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

雇用指数は先月と比べると伸び率が鈍化しているものの、さらに上昇。基準ラインの50を突破した。他にもサービス関連も50を超えており、現状・先行き共にこの項目における見通しが、他項目と比べてやや明るめであることを示唆している。一方で住宅関連の指数は早くも失速。現状判断でも伸び率がもっとも低かっただけに、気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいは下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

その後はリーマンショックから立ち直ったものの、不安定な状況を反映するかのように、基準値50を上回ることなく、それを天井とする動きを続けていた。そして今回の震災による大幅な下落はリーマンショックのそれと同じ、「すべての項目が一斉に下げ」たものとなっている。しかも落下角度はリーマンショックをはるかに超えたもの。下落による値の低さは、リーマンショックと2001年の不況期の最下層との中間程度となった。

そして今月は先月に続き、震災の落ち込みからの回復を見せた形の上昇。特に雇用指数が50を超えたのが目立っている。「不景気時には雇用指数が他の指数より大きく下振れする」という傾向からは脱却した形となり、ひと安心。しかし上でも触れているように、「これからの期待に寄るところが大きい」こともあり、希望的観測が多分に含まれていることに留意しておかねばなるまい。

地震の影響
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・地上デジタル放送への完全移行を目前にして、小型テレビの販売台数が増加するとともに、気温上昇と節電への意識から、季節商材なかでも扇風機が品切れするほど販売量が増加している(家電量販店)。
・3月の売上に比べれば大幅に良くなっているが、前年並みにまでは戻っていない(旅行代理店)。
・東日本大震災から3か月が経過して、消費マインドが落ち着いてきており、季節商材に対する動きは少しずつ上向いてきている(商店街)。
・省エネ関連やエコ関連、クールビズ関連の商材は動きが良い。また、不要不急の消費を抑える動きに変化はないが、消費を自粛する雰囲気はなくなっている(百貨店)。
・今月下旬の急激な気温の上昇により、冷感・涼感商材が活発に売れ出している。特に、節電要請後は、扇風機や涼感機能肌着、制汗剤などが売れている(スーパー)。
・メーカーからの車の供給が回復してくるに連れて売上が回復基調になってきている(乗用車販売店)。
・東日本大震災以降建設部材等の物資調達が難しい状況にあったが、入荷の見通しが立ち始めたことに伴い、販売量も増加している(住宅販売会社)。
・例年より雨が多く、気温も低かったことで、夏物の季節商材の出足が悪く、売上に影響を与えた(スーパー)。
・福島第一原子力発電所事故の風評被害により、依然として県外からの客が落ち込んでいる(観光型ホテル)。

■先行き
・年内は復興景気が続くと期待している。ただし、電力不足や福島第一原子力発電所の問題の進展いかんよっては、思わぬ方向へ変わっていく恐れもある(商店街)。
・自粛ムードも徐々に緩和され、商品供給体制が震災前に戻っている(コンビニ)。
・今後も低温や悪天候が続かない限り、景気は回復基調で推移する(百貨店)。
・予約保有は6-9月は個人客中心に予約が戻っており、今後の間際予約がどの程度確保されるかが課題である(観光型旅館)。
・節電を背景としたクール関連商品が今のところ好調な動きだが、そう長続きはしない。節約志向も根強く、消費が改善する要因は見当たらない(百貨店)。
・節電と共に節約意識が働くので、無駄な出費を控える消費が続く(スーパー)・地上デジタル放送移行への買換需要とエアコン需要がなくなる(家電量販店)
などとなっている。プラス面は主にLEDや省エネ型家電をはじめとした節電特需、間もなく全面切り替えとなる地デジに関連する言及、そして復興絡みの需要が主な要素となっている。一方でマイナス面では「特需」が短期間で終わってしまうこと、節電のマイナス影響、生産コストの上昇などが足かせとなっているのが確認できる。

また先月も強調した点であるが、全般的にインフラという観点では流通に加え、電力に対して神経質になっているのが分かる。これは生産面に加え、消費者のマインドを大きく下げる要因であること、さらに自社自身は影響が無くとも原材料を生産する過程のどこかで電力不足による影響を受けると、周り回って自分まで影響を受けてしまうのが再認識できる。例えば「受注量は増えたが節電環境下で生産をこなせるのか不安」という意見が、その状況を端的に表している。



金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
再び回復の兆しは見られたが
東日本大地震で再び状況は悪化。
戻しは見せたがその後は不透明
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に東日本大地震前までは、2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはなかった。

同時にアノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況も確認されており、「震災前における」今後の動向は不確定要素が大きい中で「基準値50を天井とするもみ合い」が続くのではないかとする予想だった。とりわけ原油をはじめとする資源価格の高騰がじわじわと市民生活に影響を及ぼしはじめており、(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)、景気回復基調を打ち消すほどのものになりうる可能性すら秘めていた。

しかしながら今回の東日本大地震に伴う大幅下落からも分かるように、東日本大地震の影響は物理的な面だけでなく、心理的においても大きな衝撃となって現れている。直接的な被害、つまり地震のゆれとそれに伴う津波による物理的な被害だけでなく、原発周り、そしてそれらから生じている間接的な不安要素の重なり(生産不調、流通不安定、現在の政治体制への不信の加速化、電力不安)が、人々の心と行動を「殻に閉じ込める」ような雰囲気を覚えさせる。一言で表現すれば「マインドの保守化」というところか。

今回は「現状」「先行き」共に雇用関連指数が安心できる域にまで回復し、「不景気」特有の傾向「雇用指数が他の指数を大きく下回る」気配からは脱したところが救われる。とはいえこれも上記で触れているように、今後の動向次第では、震災による中期的な不景気が発生しうる可能性は否定できない(例えば帝国データバンクでは7月8日付で【「被害甚大地域」の4割、2070社が営業不能状態- 東北3県判明の「震災倒産」(31社)の約70倍 -】というレポートを出しており、主要被災地の状況が世間一般に報じられている状態とはケタ違いに困難な状態であることが推し量れるものとなっている)。

まずは余震の動向を見極め鎮静化を祈ると共に、数理的かつ理知的、理性的で適切な判断と正しい情報開示により原発周りの状況を安定化し、これ以上の悪化を防ぐ「前向きの」努力を、各自が最大限行う事が求められよう。

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