各国のエネルギー自給率をグラフ化してみる(エネルギー白書2010版)

2011/06/24 06:37

ソーシャルメディア先日から【世界のエネルギー供給量の推移をグラフ化してみる】で世界全体の一次エネルギー(自然界に存在するそのままの形を用いてエネルギー源として使われているもの)の推移を眺めた際に利用した、経済産業省・資源エネルギー庁から公開されている【エネルギー白書2010】を元に、さまざまなエネルギー関連のデータのうち、今後役に立ちそうな項目・データを再構築し、まとめる作業を続けている。今回は主要国のエネルギー自給率を眺めてみることにする。【主要国のエネルギー輸入依存度をグラフ化してみる(「2010-2011」対応版)】などと合わせ読むと、さらに理解が深まるはずだ。

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参照した具体的な場所は「第1部 エネルギーをめぐる課題と今後の政策 第1章 各国のエネルギー安全保障の定量評価による国際比較 第3節 主要国エネルギー安全保障政策の変遷」。食料や水などと共に人々が社会的・文化的生活を営むには欠かせないエネルギーだが、自国内で生産しきれない分は当然輸入することになる。「他に取られたって欲しくなったらお金を出して買えばいい」とは、どこぞの経済観念のネジが数本外れている著名人の台詞だが、金銭だけで解決するほど世の中は甘くない(そしてインフラたるエネルギーは往々にしてコストパフォーマンスが重要な要素の一つとなる)。同白書では国内でエネルギーを自活しえない部分が多くなる、つまりエネルギー自給率が低くなることで生じるリスク(これをエネルギー安全保障に対するリスクと呼ぶ)の事例として、次のような項目を挙げている。

●地政学的リスク
・各国(産資源国及び近隣国+輸送経路近隣国)の政治・軍事情勢(戦争、内戦、禁輸等)
・国際関係
・外交ツールとしての利用(原油禁輸、パイプラインの送ガス停止等)
・資源ナショナリズム(接収・国有化、課税引上げ、輸出規制等)
・消費国間の資源争奪(資源権益獲得競争、領土紛争等)
・その他の地政学的リスク
※近年、テロ、海賊等のリスクが顕在化

●地質学的リスク
・埋蔵量の減少
・資源の偏在

●国内供給体制リスク
・設備投資減退(設備老朽化)
・技術開発停滞

●需給逼迫リスク

●市場価格リスク(需給ファンダメンタルズ+投機プレミアム)

●天災・事故・ストライキ・パンデミック等のリスク

例えば先日のレアメタル(希少鉱物)周りの問題は主に地政学的リスク。数年前、そして昨今の資源高は市場価格リスクや、天災リスク。石油は慢性的な地政学的リスクによるところが大きい。

さてまずは日本。

↑ 日本のエネルギー自給率推移
↑ 日本のエネルギー自給率推移

高度経済成長でエネルギーの需要が急増すると共に、国際価格との競争に打ち負ける形で石炭の自給率は大きく低下。天然ガスは需要量の増加に供給量がついていかず、こちらも低下。石油は太平洋戦争のトリガーでもあったように、戦後でも主要な輸入資源(つまり国内産出での原油では全然まかないきれない。【国産原油の産出量をグラフ化してみる】を参照)であったが、二度のオイルショックで大きな経済的ダメージを受けてしまう。

そこでエネルギーリスク、エネルギー安全保障に対する意識が高まりを見せ、使用エネルギーの分散による石油への依存度の減退が突き進められているのが現状。

↑ 日本の一次エネルギー消費推移(全体比)(個別折れ線グラフ)。オイルショックの1970年代をピークに、石油消費比率が落ちているのが確認できる(再録)
【天然ガスが伸びてます…日本の一次エネルギー消費推移をグラフ化してみる(「2010-2011」対応版)】から。日本の一次エネルギー消費推移(全体比)(個別折れ線グラフ)。オイルショックの1970年代をピークに、石油消費比率が落ちているのが確認できる(再録)

しかしながら最新のデータにおいても、全体で2割足らず、石炭・石油では1%にすら達していないことからも分かるように、日本は相変わらずエネルギーのほとんどを輸入に頼っていることに違いは無い。輸入ルートである海運の大切さ、そして上記に挙げたリスクを少しでも減らすための外交戦略が重要であることを改めて認識させてくれる。

一方他の先進諸国では個々のお国柄がエネルギー自給率にも現れている。

↑ 2007年における各国のエネルギー自給率推移
↑ 2007年における各国のエネルギー自給率推移

まず一番妙な形をしているのがフランス。日本同様に石油や石炭自給率がほぼゼロに等しいのに、全体の自給率が5割を超えている。これはひとえに原子力発電によるもの。石油依存率を低めるため、意図的に、強力に導入を進めていた。また、石油や石炭、天然ガスなどのエネルギーに関連する国際企業を国が育て上げ、フランスのエネルギー安全保障をそれら企業にもサポートしてもらうという政策も、安定性に寄与している。

石炭は地域分散性が高いので各国とも自給率が比較的高め。また石油では特にイギリスの高さが目立つが、これは1980年代以降に開発された北海油田によるところが大きい。自給率の高まり・供給への不安が後退したことで、イギリスではエネルギー市場の自由化が促進されることにもつながった。逆説的にいえば、エネルギー市場の健全な自由化は、安定的な、可能ならば自給率が高い状態において実現しうる。日本のような供給不安が高い状態で「イギリスやアメリカが自由化云々」とばかりに、同じことが出来ると考えると、痛いしっぺ返しを食らいかねない。

アメリカや中国は国土の広さ、天然資源の豊富さから(地域偏在性の高い石油をのぞき)比較的高い値を示している。しかし景気低迷を続けるアメリカはともかく、工業生産力が上昇を続けている中国では、恐らく現状においてはこの値は大きく減じられているはずだ(生産力は増加しているが、それ以上に消費量が増えている)。



今後は先の記事でも何度か挙げているように、今件で挙げた主要3資源においては、比較的広い範囲で採掘が可能な石炭と天然ガスに、これまで以上の注目が集まると考えて間違いない。出来得る限りの手を尽くしてエネルギー自給率を高めることが、経済や外交、その他さまざまな点において選択肢を増やし、国を豊かにしていく確実な手であることを考えれば、極めて合理性のある話といえよう。

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