【更新】世界各国の石炭採掘量や輸出量などをグラフ化してみる(エネルギー白書2010版)
2011/06/19 12:00

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参照した具体的な場所は【第1部 エネルギーをめぐる課題と今後の政策 第1章 各国のエネルギー安全保障の定量評価による国際比較 第2節 世界のエネルギー供給構造の変遷】。なお主要項目で「褐炭(brown coal and lignite)」が除かれているものがあるが、これは褐炭が水分や化合物が多く、発熱量も低い特徴から、市場取引はあまり行われないため。採掘現場のそばに利用建造物(火力発電所など)を建築し、そのまま燃料として使われることが多い。また、いわゆる「環境負荷」が大きいことでも知られている。
まずは主要国の可採埋蔵量と可採年数。それぞれ「現行技術でどれほどの量の石炭が自国で掘れるのか」「直近の年における年間採掘量で掘り続けたら、あと何年持つのか(の概算)」を表している。

↑ 石炭生産主要国別可採埋蔵量と可採年数
例えばアメリカと比べてロシアは埋蔵量が少ないが、可採年数は長い。これは(輸出用にせよ自国内で消費するにせよ)一年間に採掘される量(=生産量)が少ないから。一方中国は埋蔵量では世界第三位だが、可採年数はわずか41年。同国がいかに大量の石炭を毎年採掘しているかが分かる(次のグラフでそれが確認できる)。
もちろん今後新たな炭田が発見されたり、これまで採掘不可能だった炭田を使えるようにする技術が開発されれば、埋蔵量は増加する。一方で工業化が進んだり輸出が盛んになり、採掘量が増えれば、それだけ可採年数は減ることになる。
埋蔵量と生産量(=採掘量)の関係がよく分かるのが次のグラフ。これは埋蔵量と生産量を、世界全体に占めるシェアの観点で算出したもの。埋蔵量の項目は各国とも上のグラフのとほぼ同じ相対関係にあるが、生産量のシェアが埋蔵量とは大きく異なっているのが見て取れる。

↑ 石炭生産主要国別可採埋蔵量と2008年採掘量(シェア)
単純にシェアだけで比較することに難があるかもしれないが、中国とインドネシアでは自国内の石炭をフル回転で採掘しているのが理解できる。それだけ急速に工業化をはじめとした開発が進み、あるいは輸出需要が伸び、採掘のピッチが上がっている。
採掘された石炭は製鉄用の原料として、あるいは発電用、ボイラー用の燃料として使われる。国内で使う分はそのまま消費されるが、輸出商品として海外に持ち出されることも少なくない。世界における石炭の貿易量(国家間)の推移を示したのが次のグラフだが、石炭資源を自国に持たない、あるいは自国の分だけでは足りない国のニーズに応える形で、資源国での生産・輸出が増加。結果として貿易量も増えている。

↑ 世界の石炭貿易量の推移(褐炭を除く)
もっとも、「貿易量÷生産量」の比率、つまり「各国で生産(=採掘)された量のうち、どれだけの量が他国に売られたのか」を占める割合は今世紀に入ってから横ばい、むしろ最近では漸減する傾向にある。貿易量そのものは増えているので、消費国の需要に合わせ生産輸出国がその生産量を増やしているが、同時に生産国内でも消費が増加していることを意味する。これは【産油国が「石油輸入国」になる日】で解説した、石油の事例と大きな違いは無い。
最後に主要国の石炭輸出量の推移を示したグラフ。

↑ 国別石炭輸出量の推移(褐炭を除く)

一方中国は上のグラフからも分かるように採掘量が多いにも関わらず、今世紀に入ってから輸出量は減退している。「世界各国の石炭埋蔵・採掘・輸出入量などをグラフ化してみる(2011年3月作成・EIAデータ版)」でも説明しているように、工業化の進展で国内需要が伸びて、これまで輸出用に回していた分も国内で消費し始めているのが要因。消費量の増加に、生産量の増加が追いつかないわけだ。
元々石炭は天然ガスと共に、電力発電用の燃料としての歴史は長い一方、環境負荷対策や採掘技術の進歩、効率的な使用方法の開発などを受けて、少しずつ需要を拡大しつつある。また、利用方法が簡便なため、多くの国で利用されることから、引きあいも高いものとなっている。
今後はエネルギーを取り囲む諸事情もあわせ、今まで以上に注目を集めることは間違いあるまい。
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