製造業消費が多い中部電力…東北・東京・中部電力需要推移(2011年5月31日まで)

2011/06/03 12:00

先に2011年5月12日まで状況を反映した版として、東北・東京・中部電力の一日単位の最大電力需要推移をグラフ化して精査した記事を展開して以降、最低でも今年度(今冬含む、という意味)までは定期的(現状では月一)に東北・東京・中部電力管轄における、一日単位での最大電力需要推移を確認すると共に、その動向を精査することにしている。今回はその2011年5月31日までを反映した版である。

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データ取得元は電力系統利用協議会の【系統情報サービス】。「需要実績」では過去直近の電力会社別の「日単位」での最大需要電力と一日の電力量が、そして「その他の情報」では過去数年間に渡る「日単位」での需要実績が月ごとにファイル化され収録されている。今回もこれを基にグラフを生成する。今回は先の記事でコメントした、欠落していた「中部電力の5月頭部分のデータ」も無事に「月単位の需要実績」が公開されたことで補完できたので、完全版としてのグラフ生成が可能となった。

まずは純粋に3月1日以降、収録最新データの5月31日までの推移を東北・東京・中部で並列表記したものを生成する。

↑ 東北・東京・中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東北・東京・中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

中部電力の欠損データはすでに補正済み。細かいギザギサを刻んでいるのは、曜日特性によるもの(土日は多くの企業が休むため、全体としての電力需要が減る)。東北・東京電力は本震の3月11日の翌日12日に大きく値を落とし、その後はそれ以前と比べて低水準で推移しているのが分かる。

一方中部電力は、東北・東京電力と比べれば本震直後の減少が少ない一方で、全体的に少しずつ減退していく様子が確認できる。これは季節的なものもあるが、製造業中心の中部電力管轄において、それらの電力消費が減っていることも要因として考えられる。中部電力が製造業中心云々というのは、後述する「販売電力量、電灯・電力需要実績」や、ゴールデンウィーク時期における平坦さが東北・東京両電力管轄と比べて極端であることでも確認できる。

続いてもう少し分かりやすい形で、それぞれの電力会社別にグラフを再構築する。昨年の同月同日と併記する形で生成したのが次のグラフ。曜日調整はしていないが、大体の状況は把握できる。

↑ 東北電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東北電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

↑ 東京電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 東京電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

↑ 中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)
↑ 中部電力の最大電力推移(日ベース、万kW)

去年は夏こそ豪暑(「猛暑」より暑い、という意味。「豪暑」そのものは気象用語としては存在せず、当方による造語)だったものの、それまでは平年なみかやや低め(日照時間が少なかった)の気温を維持していたため、今回の収録期間中では気温による調整は考慮しなくて良い。6月以降は誤解を生む可能性があるのでデータの修正そのものはしないものの、「非常に暑かった去年と比較した値」ということを念頭に置いておく必要があろう。

両グラフの縦軸の区切りの違い、そして縦軸最下層がゼロでないことに注意する必要があるが、東北電力管轄内での電力需要の落ち込み具合の大きさ(=本震による影響の大きさ)が、あらためて実感できる。

また中部電力のグラフだが、東北・東京電力と比べると、異様なまでに小刻みな変動がひと目で分かる(縦軸の区分が異なるのも一因だが)。これは【中部電力の各種データをグラフ化してみる】でも解説したように、中部電力管轄では他の管轄と比べて工業(製造業)による電力消費の割合が大きく、土日の工場停止時には全体の電力消費の減退率も大きくなるため。

それを確認するため、「でんきの情報広場」内の【電力需給実績】で、年ベースの直近データ2010年度分を用い、3電力管轄における販売電力量実績を基に、販売電力(需要電力)の構成比をグラフ化する。問題視されているのは「需要ピーク時における電力」であり「電力量」ではない。しかし電力と電力量には相関関係があるため、比率把握のグラフ用データとしては有益なものと判断した。

↑ 販売電力量、電灯・電力需要実績(比率、2010年度分)
↑ 販売電力量、電灯・電力需要実績(比率、2010年度分)

「電灯」は一般家庭や小規模商店、「電力」は業務用の電力(三相200V)。「特定規模(業務用)」「特定規模(産業用)」は、高圧受電・特別高圧受電のもので、それぞれオフィスビルや商業施設、中・大規模工場向けのもの。中部電力管轄は工場需要が大きく、平日と休日の差異が出やすいことがあらためて確認できる。

最後に2010年と2011年での電力需要の差異を、比率でグラフ化したものを展開する。電力需要は曜日による属性変化が大きいことは先に触れた通りだが、2010年と2011年では同じ月日だと曜日が一日ずれる計算になるので、それを修正した上でのもの。なお中部電力の値はプラスマイナスゼロを行き来しているので、分かりやすいように赤の点線をゼロ部分に追加した。

↑ 東北電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 東北電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

↑ 東京電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 東京電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

↑ 中部電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)
↑ 中部電力の最大電力推移・2011年における前年同日比(日ベース、曜日修正済み)

現在確認できるのは5月31日までのデータ。グラフ中吹き出しでも示したように、ゴールデンウィーク中の祝祭日前後でやや特異な動きを見せているが、全般的に電力供給不足、そしてそれによる節電が叫ばれている東北・東京両管轄内では本震後マイナス圏を推移している。東京電力管轄では前年比マイナス10%前後を維持しているが、東北電力管轄ではマイナス10%強の水準がほぼ保たれている。ただし直接被災地が少しずつ復旧を見せ始めていることもあってか、ほんのわずかずつではあるものの、マイナス値が減る動きも確認できる。

一方で中部電力では直近まで電力需給の問題は無かった、むしろ東京電力に対して応援融通(応援送受電)までしていたこともあり、電力推移はプラスマイナスゼロの領域を行き来していた。しかし【中部電力の需給計画を見て】でも触れているが、超法規的要請により浜岡原発が停止。供給予備力が非常に危ういレベルに達したことで、それ以降は節電対策が求められている。

しかし現状ではそれを反映した動きは確認できない。【中部電力、夏季の電力不足を予想し節電協力を公知】にもあるようにイレギュラー的な事象が発生しなければ、ギリギリ需給関係のバランスは保てる状況まで供給力をかさ上げできている。しかし「安定的なインフラの提供」という観点では合格の域には無く、今後さらなる節電対策(「賢い節電」)が必要なのは疑う余地が無い。



前回の記事で懸念された「ゴールデンウィーク以降、通常利用スタイルに戻る5月中旬以降に、電力需要がさらに伸び、(東北・東京両電力管轄で)マイナス幅が縮まるのではないか」とする懸念は、今のところ杞憂の領域に留まっている。むしろ中部電力管轄で、大きな動きが見られないのが気になるところ。

「来年の事を語ると鬼が笑う」ではないが、今夏を無事に乗り越えても、今冬、そして来年以降も、電力需給がひっ迫しうる夏と冬は必ずやってくる。今夏に向けて応急処置的に増設されている電力供給源のうち、少なからずのものは「期間限定」「コストパフォーマンスが非常に悪い」ものであり、常用・中長期の利用は困難(事実上不可能)。応急処置的な展開だけでなく、同時に中長期の戦略にのっとった、国全体にとってプラスとなる計画の策定が設実に求めらているのは言うまでも無い。

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