全般的に軟調、震災特集も今期は影響せず…ビジネス・マネー系雑誌部数動向(2011年1月-3月)

2011/05/21 08:07

【社団法人日本雑誌協会】は2010年5月11日、2011年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確度が高く、各雑誌の現状を「正確に」把握できるデータといえる。今回は当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」についてデータをグラフ化し、前回からの推移を眺めることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

それではまず、2011年の1-3月期とその前期、2010年10-12月期における印刷実績を見てみることにする。

2011年の1-3月期とその前期、2010年10-12月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績
↑ 2011年の1-3月期とその前期、2010年10-12月期におけるビジネス・金融・マネー誌の印刷実績

【少年・男性向けコミック誌の部数変化をグラフ化してみる(2011年1月-3月データ)】の週刊少年ジャンプの「郡を抜く売れ行き」のように、雑誌名通り「プレジデント」が断トツで印刷部数が多い状況に変化はない。また、いわゆる「季節特性」(今期は冬休みと春休みを含み、前期と比べて数が減る可能性が高い)、さらに地震による影響も否定できないが、1誌をのぞく全誌で前期比マイナスを示している。

続いて各誌の前期・後期の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化する。要は約3か月の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。よほどの「イベント」が発生するか、あるいはたまたま定期的な印刷部数見直し時期に当たらない限り、3か月間で大きな変化は見られないはず。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年1-3月、前期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年1-3月、前期比)

前期では大きく躍進した「週刊ダイヤモンド」「週刊東洋経済」は、共に今回はマイナス。該当週ではギリギリになるが、東日本大地震関連の特集を経済に絡めて組んだり、それ以前ではFacebookの話題を取り上げたりと、積極的にさまざまな社会情勢を経済と結び付けて、解説していく姿勢が見受けられた。以前指摘したように、資料性の高さで購入を決意させる、業界誌・専門誌の王道を貫いている感はある。それだけに、季節特性や地震の影響(東日本大地震による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の可能性。今件は「期間中に発行された冊子すべての印刷部数総計」では無く、「期間内の1号あたりの平均印刷部数」のため、影響は最小限に留まっている、はず)というマイナス要因が積み重なったこともあるが、部数が減退してしまったのは残念なところ。

なお今期では1誌、「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」誌がプラスの値を示している。しかし直近期でも2.3万部、前期との差異は500部足らずであり、誤差の範囲と見て問題は無い(プラスであること自体は称えられる価値のあるものだが)。

さて一連の定点観測を続けたことでデータ蓄積量も一年分を超え、「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回も「季節属性」を考慮せずに年ベースでの動向をつかみとれる「前年同期比」のグラフも生成し、掲載する。

雑誌印刷実績変化率(ビジネス・マネー系、前年同期比)
↑ 雑誌印刷実績変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2011年1-3月、前年同期比)

今期では前期と比べ、状況はわずかながらポジティブに動いているように見える。しかし唯一プラスを示している「\en SPA!」にしても1000部足らずの差異で、中長期的には緩やかな減少カーブを描いていることに変わりは無い。不景気な昨今において経済誌は「情報武装をするために欠かせない『武具』」としての立ち位置を持っている。マイナス値が継続しているのは、その「武具」を「武具」として見てもらえていないのか、それともサビついていると判断されたのか、あるいは単に「紙媒体」という事であるがためだけの動きなのか。



2008年秋のいわゆる「リーマンショック」で多くの人が経済情報に注目した時期を直近における天井とする形で、それ以降は金融・経済系のウェブサイトにおける(確証度・知名度・権威度の高い新聞社・法人系サイトを中心にした)アクセスの増加傾向は速度をゆるめ、あるいは減少に転じている。しかしパソコンや携帯電話、スマートフォンなど各種モバイル端末からアクセスできるインターネットメディアへの、紙媒体からの読者移行の流れは加速を続けている。これに電子書籍の普及、さらには日本では今般の東日本大地震による流通網の混乱や用紙・インクなどの供給不足が、デジタル化に拍車をかけた形となった。

特に日々情勢が変化する経済系ジャンルにおいては、記事の作成と読者への展開の間に時間差が生じる雑誌の不利さは他のジャンル(漫画や趣味系の雑誌)の比では無い。経済の流れが加速化する昨今においては、今ジャンルのインターネット上での情報展開はますますその重要度を増しつつある。

頑なに古い体制ばかりのみを固持することなく、現状を正しく認識し、「紙媒体・雑誌ならではの内容、雑誌にしかできない情報提供・読者へのサービスとは、そしてその仕組みとは何だろうか」という基本原理に立ち返り、同時に「新しいメディアと相乗効果を生み出せる仕組み、アイディアは無いだろうか」といった模索をすること。さらにそれらの答えを見つけ出して躊躇することなく実践し、読者に受け入れられるように自らの姿かたちを変えていくこと。ビジネス・金融・マネー誌にはその「進化のための努力」が求められている。環境の変化に対応・進化できない生物が種としてどのような結末を迎えるかは、これまでの歴史が十分すぎるほどに語っているはずであり、彼ら自身こそが一番よく知っているはずだ。

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