独自性・企画の新しさで「アニメディア」「PASH!」などの健闘が目立つ…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向(2011年1月-3月)

2011/05/19 07:04

【社団法人日本雑誌協会】は2011年5月11日、2011年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各誌が自ら発表している「公称」部数よりはるかに高精度、精密な値といえる。今回は「ゲーム・エンタメ系」のデータをグラフ化し、前回掲載記事からの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

掲載されているデータはいずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたものであり、雑誌社側の公称(自称)部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情(人気連載が終了した、話題のゲームの情報が集中掲載されたなど)があり、そのまま比較すると問題が生じる場合もあるが、その際は個別で説明する。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2011年の1-3月期と2010年10-12月期における印刷実績を見ることにする。

2010年の10-12月期と2011年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
↑ 2010年の10-12月期と2011年1-3月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

今回も幸いに対象雑誌そのものの増減は無し。状況については、やはり大勢として「Vジャンプがずば抜けた売上」「週刊アスキーの健闘」「アニメ系ではニュータイプがトップ」などの傾向は3か月前と変わらない。この傾向は2年以上継続したものであり、このジャンルにおける「鉄板トップ3」といえる。中でも「Vジャンプ」は本家のジャンプが少年向けコミック誌ではばく進しているのと似たような状態。ジャンプ二冠王体制は今もなお継続中。

また今期は「季節特性」(冬休み・春休みが対象期間に入り、「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減る可能性がある)が生じたことに加え、後述するように東日本大地震の影響も多少あり、値が減少した雑誌が多い。

次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年1-3月期、前期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌)(2011年1-3月期、前期比)

3か月単位の変動値であり、季節特性だけでなく「取り上げている作品の人気」「新作映画やゲームとの関連」「付録」「前回期の動向」など、イレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いことをあらかじめ書き記しておく。しかしながらホビー系の雑誌は多かれ少なかれその変動・特異性が宿命で、「イレギュラー性」を乗り越え、販売冊数を重ねていかねばならない。たとえばゲームソフト自身に大ヒット作が出なくとも「ソフトが売れないのでゲーム専門誌も売れませんでした」では経営陣も首を縦にふらない。

東日本大地震による影響で薄くなったファミ通突発性要素による「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%とやや甘めに見て区分わけすると、ネガティブが4誌、ポジティブが0誌となる。前期がネガティブ1・ポジティブ1だから、状況は悪化したように推測できる。前期は「冬休み」が入るものの期間は短く、それと比べて今期は春休みを前提とした印刷数の調整が行われるため、多少の減少は致し方ない。さらに東日本大地震による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の可能性・影響もあるが、今件は「期間中に発行された冊子すべての印刷部数総計」では無く、「期間内の1号あたりの平均印刷部数」のため、影響は最小限に留まっているものと想定できる(影響が生じるとしても3月12日-3月31日までの間に限られる)。むしろ次期、つまり4月-6月の方が、東日本大地震による影響は大きなものとなるだろう。

今回特に目立つのは、前期比でマイナス3割を超えた「ファミ通DS+Wii」。前回の記事で取り上げているが、同誌は前期でプラス2割超えという大きな伸びを見せており、その反動によるところとする解釈も出来る。ただし「2割増の後の3割減」は単純計算で1割強の減。状況としては厳しいことに違いは無い。

さて定点観測を続けているおかげで都合一年分以上のデータが蓄積でき、中期的な視点からデータの推移が確認可能となった。そこで今回も前年同期比の変化率をグラフ化する。これならいわゆる「季節特性」による影響は考慮することなく、純粋にその雑誌の動向を年ベースで確認できる。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)(2011年1-3月期、前年同期比)

「アニメディア」「PASH!」などの健闘ぶりは前期と変わらず。独自性・企画の面白さや新しさが雑誌の売上における牽引力となっているようだ。また今期に限れば「けいおん!!」や「戦国BASARA」の劇場版関連の情報、さらにはクリアファイルなどの付録が人気を博し、部数をかさ上げしたと思われる動きを見せている。

一方で10%超えのマイナス値を示す雑誌もあまり変わらない顔ぶれだが、上記に挙げた「ファミ通DS+Wii」が気になる動きを見せている。さらに1年前にさかのぼった「2年前同期比」で試算すると、「ハイパーホビー」が約3割減、「アスキー・ドット・ピーシー」が約2割減で留まっているのに対し、「ファミ通DS+Wii」は5割を超える減少ぶりが確認できる。ソフトやハードの展開による上下幅が大きいものの、ここまでの減退ぶりは頭痛もの。前回の記事では「ニンテンドー3DSの発売で盛り上がりを見せる」と評したが、その効果が表れていないことが分かる。



前回記事同様、印刷部数が漸減している雑誌がずらりと並んでおり、市場全体の不安程感は否定できない。一方で上位、前期比・前年同期比でプラスを見せる、あるいは堅実な動きをしている雑誌には「他誌には無い、自誌のオリジナリティ・コンテンツ(記事、付録、対象となる商品)や工夫」「時節に連動したニーズを適切につかみ、それに応えるコンテンツの提供」が際立つ傾向があり、それが読者に受けいれられ、印刷数(販売数)を伸ばしている。

不景気で可処分所得が減少し、さらに携帯電話や携帯ゲーム機に「読者になるかもしれない人たち」の時間を奪われる。その上ささいな情報なら即時にインターネット経由で手に入る環境が浸透し、雑誌に対する興味関心も薄れているのが現在のエンタメ界隈の現状。お金や時間を割いても「手にとって読みたい」と思わせるだけの魅力を出すには、そして紙媒体ならではのメリットを読者に実感させるには、「ひと山何百円」に見える同じようなものでは無く「他には無い特別な一品」に見える個性的な雑誌を、創り手側は送りださねばならない。

もちろん同人誌やサークル誌と違い、一定数量を販売する商業誌であることを忘れてはならない。つまり「適度」で「良識・常識の範囲内」での個性で留める必要がある。あまりにも個性が強過ぎると、かえって読者を減らしかねない。印刷部数上でプラスを見せている雑誌たちは、そのさじ加減を会得し、さらに試行錯誤を繰り返しながらも、プラスへの歩みを続けているに違いない。


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