【更新】戦国ものの三紙の躍進が目に留まる…少年・男性向けコミック誌部数動向(2011年1月-3月)

2011/05/18 12:00

【社団法人日本雑誌協会】は2011年5月11日、2011年1月から3月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、業界の動向を示す正確さでは、各紙・各出版社が発表している「公称」部数よりはるかに精度が高い。今回は当サイトの読者層を考慮し、もっとも読者にとって興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回発表分データからの推移を眺めてみることにする。

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データの取得場所の解説、及び「印刷証明付部数」などの用語説明については、一連の記事まとめ【定期更新記事:雑誌印刷証明付部数動向(日本雑誌協会)】で説明されている。そちらで確認をしてほしい。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いはない。

2010年10-12月期と最新データ(2011年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績
2010年10-12月期と最新データ(2011年1-3月期)による少年向けコミック誌の印刷実績

「ジャンプ」は直近データで296万5000部。販売実数はこれよりも少なくなるので、前回と同じく250万部前後だろう。いずれにしても雑誌不況の中、驚異的な値であることに違いは無い。王者ジャンプの威厳は維持されている。もっとも、最盛期である1995年時点の635万部と比べれば半分以下であることも違いは無いが。

今回は前回に引き続き、計測対象の中で休刊などの理由からデータが失われたものは無い。逆に該当カテゴリーで創刊されてデータが加わった雑誌は一誌、小学館の「ゲッサン」。2009年5月から創刊されている月刊誌だが、ようやく今期からデータが反映されることになった。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2010年10-12月期と最新データ(2011年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2010年10-12月期と最新データ(2011年1-3月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

【コミックバンチ、正式に休刊表明・年内に新創刊】でお伝えしているように、週刊コミックバンチは休刊、枝分かれするようにゼノンとバンチがそれぞれ月刊誌として発売されたが、両誌とも未だにデータの登録は無し。コンビニや本屋などでその姿を見かけることも出来、そろそろデータの開示を望みたいところではある。

さて、これで最新期とその前の期の印刷部数を棒グラフ化できたわけだが、続いてこのデータを元に各誌の(前・今期間の)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。季節変動などを無視することになるが、短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すもの。当然ながら、今回データが非開示となった雑誌、今回はじめてデータが公開された雑誌はこのグラフには登場しない。今回は直上にあるように、「ゲッサン」が初登場のため、前年同期比のデータが存在せず、今グラフには不参加。

まずは少年向けコミック誌。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年1-3月期、前期比)

前期は「冬休み」が入るものの期間は短く、それと比べて今期は春休みを前提とした印刷数の調整が行われるため、多少の減少は致し方ない。東日本大地震による流通の混乱や紙・インク不足による印刷部数低下の可能性も否定できないが、今件は「期間中に発行された冊子すべての印刷部数総計」では無く、「期間内の1号あたりの平均印刷部数」のため、影響は最小限に留まっているものと想定できる(影響が生じるとしても3月12日-3月31日までの間に限られる)。

まず「別冊コロコロコミックススペシャル」の下落が目立つが、これは絶対数がさほど大きくないのと、前回大きく伸びたことの反動。中期的に見れば17万部を底とし、それに特集や世間の流行りなどに合わせて数万部を足していく出版体制を維持している。むしろ前回との比較で分かるように、確実に部数が漸減している「月刊少年ライバル」の方が気がかり。

一方、部数としては小さめだが今期においては大きな伸び率を見せたのが「ドラゴンエイジ」。これは該当する期に発売された各号で確認すると、『ドラゴンエイジ 2011年03月号』に代表される、テレビアニメ化された「これはゾンビですか?」の特集や特製フィギュアなどがかさ上げの要因となったように見える。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック)(2011年1-3月期、前期比)

今回もプラスを記録したものは3誌。前回と同じだが、5%以上の下げを見せたものが3誌確認でき、状況の改善とは言い難い動き。その3誌の中期的な流れを見ると、「モーニング2」は一様に、「ヤングアニマル」「ガンダムエース」は上下を繰り返しながら少しずつ部数が減退しており、持ち直しのための施策が求められる。

一方変動率ではプラス域でトップの「コミック乱ツインズ戦国武将列伝」をはじめ、いわゆる「コミック乱」三兄弟は中期的な動向でも横ばい、あるいは微減に留まっている。中堅層以上の固定ファンの根強さがあらためて確認できる。

さて一連の定点観測を続けているおかげで、過去のデータを用いて「前年同期比」のデータを算出することができるようになった。今回もいわゆる「季節属性」を考慮しなくても済む「前年同期比」のグラフも掲載する(例えば今回なら、2011年1-3月と、その1年前の2010年1-3月分の比較というわけだ)。純粋な雑誌の販売数における、年ベースでの伸縮率が把握できる。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)(2011年1-3月期、前期比)

1年単位での変移を見ると、先に前期比でも上位に来た「ドラゴンエイジ」がトップ。直近期での印刷証明部数は3.1万部だが、記録が残っている限りでは一時落ち込んだものの、2007年度レベルの水準にまで回復している。上記の「これはゾンビですか?」の例にもあるように、アニメ化などで話題となった作品への注力を推し進め、地道に立て直しを図っている雰囲気がある。また、前回の記事同様、発行部数が他誌と比べて言葉通り「ケタ違い」にも関わらず、プラスを出した「週刊少年ジャンプ」は驚き。

マイナス域では「コロコロコミックス」の存在が気になる。しかし同誌は期単位では掲載作品や付録、取り扱うタイトルなどで10万部単位の調整を行っており、通常変動域の範囲内での動きといえる。一方で「月刊少年ライバル」「月刊少年シリウス」両誌は数万単位なのでぶれが生じやすいこともあるが、印刷証明部数は一様に減少を続けており、先が非常に不安視される。

そしてほぼすべての雑誌で苦戦を強いられているのも前回から変わらない。特に週中発売の二大週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」のうち、後者の現状が気になる。年1割超の売上減少は、容易ならざる事態……と、ここ数回にわたり同じ言い回しを使わねばならない状況なのが、かなり切ない気持ち。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌、前年同期比)
雑誌印刷実績変化率(男性向けコミック誌)(2011年1-3月期、前年同期比)

前回の記事では唯一「ヤングアニマル」がプラス圏に居たが、今回はすべてマイナス圏。しかも半数以上が5%を超える下げ率。10ポイント以上は雑誌は2誌と、前回4誌よりは改善されたように見える。しかしながら下げ幅上位陣の雑誌の多くが、「2年前同期比では、前年同期比の2倍前後、あるいはそれ以上の下げ幅が算出される」状態にある。つまり今回算出した値は一過性のものでなく、少なくとも過去2年間は継続して印刷部数減少が、ほぼこのペースで続いているということになる。



今回参照したデータのうち「単純前期比」においては季節変動、そして幾分ながら東日本大地震の影響が加味されており、マイナス値が出てしまうのは仕方ない部分もある。しかしそれを差し引いても、雑誌の売上そのものの減少傾向が継続していると断じざるを得ない。

特に(単純に印刷冊数≒販売冊数という観点で)男性向けコミック誌が相当危険な状態なのは一目瞭然。損益分岐点などを考えれば、「前年同期比で印刷部数がマイナス10%超え」を繰り返していたのでは、そう遠くないうちに立ち行かなくなるのは明らか。

【週刊誌や雑誌、書籍の支出額をグラフ化してみる(拡大版)…(下)購入世帯率や購入頻度の移り変わり】で触れているが、総務省統計局のデータによれば、雑誌・週刊誌では書籍同様に「購入する人がいる世帯の減少」「購入者の購入冊数の減少」と多元的に雑誌離れが起きている。言い換えれば「家族誰一人として雑誌を買わなくなった」「買っている人も買う冊数を減らしている」という事態が進行している。今データを見る限りではサラリーマンにおいて、その傾向が顕著なものと考えられる。

逆に堅調さを続けている一部雑誌のように、適切な読者ニーズをとらえることで、少年・男性向けコミック誌にもまだまだ復権の芽が無いわけではない。さらに紙媒体では無いため今データには直接は反映されなくなるが、【「ジャンプSQ.19」創刊号、丸ごとiPadで無料配信・最新号とのセットも450円で提供へ】で紹介した事例のように、デジタルメディアへの積極的なアプローチ、そしてデジタルとアナログ(リアル、紙媒体)との相乗効果を狙った企画の展開も検証課題として挙げられよう。

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