シンプルなAR(拡張現実)に「ナルホド」な雑誌広告

2011/05/01 19:30

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口パク携帯電話の高性能化やスマートフォンの浸透で、高度の表現力を持つ端末を多数の人が操作できる状況になった昨今。【誌上で試乗ができるARアプリ】などのように現実の五感を拡張して疑似体験をさせる「拡張現実(AR:Augmented Reality)」の手法が注目を集めつつある。しかしながら世間一般には「AR」「仮想現実」という言葉を使っても、頭にハテマのマークを浮かべられてしまうのが現実。そのような中、ジャーナリストで構成されるNGO【国境なき記者団(Reporters Without Borders)】が展開した「ARを使った雑誌広告」が興味深く、そしてシンプルに理解できるものとして注目を集めている(【ADS of the world】)。


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↑ Reporters without borders - The voice。
↑ Reporters without borders - The voice。

見開きの雑誌広告の片方には対象となった人物(要人)に関するニュースと写真、語られた言葉、そしてもう片面には対象人物のバストアップの写真が掲載されている。写真を良く見ると端にモバイル端末で読みこめるQRコード、そして人物の口の部分にはiPhoneを置く指定が破線で示されている。

↑ 顔の部分にはiPhoneセットの場所指定、右下にはiPhoneで読みこむためのQRコードが
↑ 顔の部分にはiPhoneセットの場所指定、右下にはiPhoneで読みこむためのQRコードが

利用者は指定されている通りにiPhoneを使ってQRコードを読みこませる。すると、該当する人物の「おしゃべりアプリ」が読みこまれ、作動する※。口の部分に置かれたiPhoneは、要人のセリフをその本人が話した言語(フランスの人ならフランス人、ロシアの人ならロシア語)で、実際のセリフを語っている際の口の動きと共に、セリフを発する仕組み。iPhoneが置かれた肖像写真を少し離れた場所から見れば、その人物本人が語っているかのような疑似体験、すなわち「拡張現実」が体験できるという次第。

※動画上はそのような挙動をしているが、実際にはQRコードで読みこめるのはサイト上のURL。そのURLから該当人物の「口パクアプリ」をダウンロードするようだ。また、動画上で表示されているQRコードはダミーであり、今件アプリはダウンロードできない。

↑ 本人の口では無く、本人の肉声では無いけれど、それなりの臨場感が体験できる
↑ 本人の口では無く、本人の肉声では無いけれど、それなりの臨場感が体験できる

口の動きはともかく、(動画を見れば分かるが)本人自身の口元ではない。声も本人の肉声では無く、別の人によるもの。しかしながら臨場感は十分に味わえる。

元々要人の語りは大きく身ぶり手ぶりで動きまわることはさほどない。口元だけを動かして話すことが多い。ならば口の部分さえ動けば「それらしい」臨場感を疑似体験できるのではないか。そのようなアイディアによって今件企画は生み出された。そしてもう一つ、「独裁者の”口”からは決して真実は語られることは無い」という実態に対する皮肉も込められているそうだ。

単に写真の肖像画を喋らせるようなアプリだけなら「広告の臨場感アップ」だけで済んでしまうが、このアプリには最後に「国境なき記者団」の資金源である写真集の宣伝や寄付のお願いが表示され、サイトへの誘導が行われる。紙媒体で「拡張現実」を楽しませた上で、バナー広告的な機能も果たしていることになる。

「口パクアプリを読みこませて、新聞の人物に喋らせる」という切り口は、非常にシンプルで分かりやすい。今件は「独裁者の”口”からは決して真実は語られることは無い」という皮肉も込められているので一層深い意味合いを持つものとなっているが、純粋に声優やタレント、アニメキャラにしゃべらせるだけでも、それなりに面白い「拡張現実」を楽しめる。

理屈・説明が簡単なのもよい。「iPhoneをかざして置くと、写真がしゃべりだす」。この説明で広告の読者は理解できてしまう。まだスマートフォンの普及率は低いので大きな宣伝効果は望めないが、近い将来似たようなスタイルの広告なり記事企画が登場するに違いない。


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