「余震」は「あとから来る地震」…分かりやすい日本語で外国の人にも意思疎通・「やさしい日本語」集

2011/04/20 12:10

やさしい日本語余震や原発事故も合わせ、今だ直接の震災そのものが覚めやらぬ東日本大地震。今件地震では日本人だけでなく、日本に留学・就業している多数の外国人・他言語の人も被災している。地震の多い日本のことをよく知り、理解している人ならともかく、地震そのものがほとんど無い他国文化圏の人たちにとっては、日本人以上の不安を抱えているに違いない。そして被災後においても、少なからぬ人が十分な日本語への理解を持たないため、不便さ、そしてさらなる不安(状況を把握しきれない、理解できない、対応できない)を持ち続けることになる。そのような災害時にはとかく難しい表現になりがちな日本語を、外国の人でも理解しやすいような配慮をしようとの視点から、弘前大学人文学部社会言語学研究室の佐藤和之教授は阪神・淡路大震災を機会に【やさしい日本語】の研究・開発を推し進めている。今回の東日本大地震ではさらに災害用の語彙を集約した【「『やさしい日本語』版災害基礎語彙100」】の提供も開始している。

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↑ 暖房設備があることを知らせるポスターのサンプル
↑ 暖房設備があることを知らせるポスターのサンプル

同ページのパンフレットには「やさしい日本語」で災害時の情報提供をする理由について、次のように説明している。

・外国人のすべてが英語圏の人というわけではない。外国人向けの情報は英語がメインだが英語の情報伝達では限界がある。
・しかし災害情報を多言語に翻訳している時間は無い。
・言葉が分からない外国人はいわゆる「情報弱者」となり、災害に巻き込まれる可能性が高くなる(阪神淡路大震災では統計データでもそのような結果が出ている)
・だからこそ、誰もが素早く、そして正確に、簡単に伝えられ、理解できる「やさしい日本語」での情報提供が必要。

これは逆の立場で考えれば容易に理解できる。たどたどしい英語の読み書きしか出来ない状態で英語圏の国に旅行に出かけたとする。その旅行先でたまたま地震などの災害に遭遇したら、どのような不安をいだくだろうか。ホテルの人は早口で何かをまくしたてているが、よく聞き取れない。逃げ惑う人々の言葉もなまりがキツくて理解できない。ただでさえ不安な状態に拍車がかかるのは必至。しかもこの事例では「地震のことをよく知っている日本人」が他国を来訪したパターンなのでまだ心構えが出来るが、今件地震の場合は「地震」という災害を経験したことが無い外国人がほとんどなのだ。

パンフレットでは「やさしい日本語」に言い換えるためのルールとして、次の5項目を挙げている。

1.重要度が高い情報だけに絞り込む
2.あいまいな表現は避ける
3.難解な語彙を言い換える
4.地震語彙には「やさしい日本語」を添える
5.複雑でわかりにくい表現は、文の構造を簡単にする

例えば「気象庁では今後もしばらく余震が続くうえ、やや規模の大きな余震が起きるおそれもあるとして、地震の揺れで亀裂が入ったりしている建物には近づかないようにするなど、余震に対して十分に注意してほしいと呼びかけています」は「余震(後で来る地震)に注意して下さい。地震でこわれた建物に注意して下さい。この後も注意して下さい」となる。

研究室のページでは上記概要を説明したパンフレット以外に、【「やさしい日本語」版 災害基礎語彙100】、ポスターやイラスト集、ラジオや広報車向けの放送用案文、「やさしい日本語」の作成ルールや語彙集、『災害が起こったときに外国人を助けるためのマニュアル』やプリント用の画像集、さらには昨今の状況に対応するため、計画停電や避難指示、原発関連情報についてのまとめ、そして東日本大地震向けに新たに作られた各種ポスターが記されている。また、【携帯用サイト】もあるので、手持ちの携帯やスマートフォンにブックマークをしておくと、何かと役立つ機会もあるかもしれない。



今件は直接ではなく間接的にだが、2つの別の観点でも注目したい。一つは【くすりの適正使用協議会、「くすりの絵文字」普及のため下敷きを配布へ】などでも紹介した「ピクトグラム」という考え方。要は分かりやすい絵文字・デザインアイコンで周知を確実にするというものだが(非常口の看板が好例)、この考え方がそのまま今件には活かされている。

↑ サンプルのイラストの一例。ピクトグラムそのもの
↑ サンプルのイラストの一例。ピクトグラムそのもの

難しい語彙が使えない状態での意志伝達という点でも、考え方は一致している。

そしてもう一つ、こちらはイラストでは無く言葉の言い回しの点について。英語の文章を創る時に直接書き起こせる技術が無い人(例:当方)は、「日本語で原文を創る」「自動翻訳サービスで英語(など)に変換する」「分かる範囲で修正する」というプロセスを踏むことになる。この「自動翻訳で翻訳」する前の日本語作成時に、普段の日本語をそのまま使うのではなく、今回紹介した「やさしい日本語」を用いることで、かなりその後の手間が楽になる。妙な言い回しや難しい文法を使わないので、翻訳の精度も上がるからだ。

「やさしい日本語」には他にもメリットがあるかもしれない。興味がある人は、是非一度目を通してみてほしい。


■関連記事:
【薬の用法を分かりやすくする絵文字「ピクトグラム」、ほぼ倍増の51個へ】

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