不況の影響、それともグループ化の加速か…デビュー歌手数動向(2011年発表)

2011/04/13 07:04

日本レコード協会は2011年4月5日、「日本のレコード産業2011」を発表した(【発表リリース】)。同協会調査による2010年のレコード・音楽産業の概要を網羅した資料であり、音楽業界の動向を多方面から確認できる、貴重な資料といえる。今回はこの資料のデータの中から、デビュー歌手数の推移の確認と過去の同義記事の更新を行うことにする。

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「初音ミク」のようないわゆる『ボーカロイド』(ヤマハが開発した音声合成による歌声生成システム)なら話は別だが、音楽業界・市場にはコンテンツ(曲)を歌う歌手が欠かせない。一方、歌手一人一人が永遠に生き続け、次々と新曲を出し続けるのは無理な話。毎年多くの歌手予備群がさまざまな困難に立ち向かいながらプロデビューを目指し、音楽マーケットは常に新陳代謝が起きている。多くは何とかデビューを果たしてもなかなかメジャーにはなれず、いつの間にか引退したり、あるいは地方巡業などで、さらなる修行と実力の積み重ねを行うことになる。

新陳代謝の活性化は、その業界のすう勢を推し量る一つのバロメーターでもある(もちろん「粗製乱造」という相反する要素と背中合わせでもある。また、それとは別に「ベテラン」の域に達する匠的な歌手も多数いるのも事実)。それでは音楽業界のデビュー歌手数は、一体どのような推移を見せているのか。今資料では1998年以降において、日本レコード協会の会員社関係に限定された数だが、デビュー・再デビュー数が公開されている。それをグラフ化したのが次の図。

↑ デビュー歌手数推移
↑ デビュー歌手数推移

少なくともデータ範囲内ではもっとも少ない値をつけた2001年を境に大きな変化が起き、「デビュー数合計の増加」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の増加」という二つの傾向が確認できた。特に後者においては、全デビュー数の2割前後が再デビューという状態が維持されており、これが一種のトレンドであるかのようにも見えた。

ところが2009年以降は「デビュー合計数の減少」「再デビュー数の絶対数・全体に占める割合の減少」という、ここ数年来の動きとはまったく逆の流れを見せ、特に2010年においては両傾向が著しく現れている。なおこのデータでは、複数人数によるグループの場合は1人として勘定している。そこから推測するに、単純に「新規・再デビュー双方における新人数の減少」だけでなく、「ユニットデビュー率の増加」も推定される。



音楽CD関係絡みの記事で繰り返し述べているように、今世紀に入ってから「デジタル音楽端末や携帯電話など配信メディアの多角化と購入実行までのハードルの低下(いわゆる「手元ですぐにお気軽購入」が可能)」「情報取得の容易さの進歩と情報そのものの増加による趣味趣向の多様分散化」で、購入される音楽が分散化し、ミリオンセラーが生まれ難い状況が生じている(これは特に、分散化と入手の容易化が著しいインターネット上の音楽配信で顕著である)。一方で、歌手数が多ければそれだけ多くの曲が世に出回ることになる。

”歌手が増えたから曲が増えて視聴者の「好みの曲」が分散化した”のか、”視聴者の趣味趣向が分散化したので、市場がそれにマッチすべく歌手が増加している”のか。いわば「卵が先かニワトリが先か」の話になるが、どちらなのかは判断がつきにくい。あるいは双方が同時進行をしている可能性もある。

しかし恐らくメインは後者、しかも元々存在していた細かい区分が、媒体の進化で明確化したことによるものだろう。例えるなら「ラーメンとカレーライスしか無い飲食店」なら選べるのはラーメンかカレーライスしかない。常連客はどちらかを選ぶことになる。しかし「ラーメンはしょう油以外にスープとしてみそ、塩も。具にチャーシューと野菜大盛りを用意」「カレーは辛口と甘口を別途調達。サイドメニューにコーンとソーセージとコロッケを新たに選択可能」となれば、注文されるメニューは細分化され(例えばみそラーメンチャーシュー入り、コーンカレーのコロッケ乗せ)、一つひとつのメニューの注文数はかつての数より減ることになる。「ミリオンセラー」が生まれにくくなっているのも、市場そのものの縮小以外に、この細分化が要因の一つと考えてよい。

2010年に見せた大きな変化が、単純に不景気によるものなのか、それとも業界の構造変化によるものなのか、今のところ判断はできない。来年以降の各種データの動きで、ある程度は判断できる材料が揃うだろう。もっとも2011年に限れば、別の事由で新人歌手数は減少しそうではあるが。

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