シングル1本、アルバム3本、手堅い作品が並ぶ…CDやネット配信の「ミリオン”認定”」動向(2011年発表)

2011/04/12 06:45

日本レコード協会は2011年4月5日、「日本のレコード産業2011」を発表した(【発表リリース】)。同協会調査による2010年のレコード・音楽産業の概要を網羅した資料であり、音楽業界の動向を多方面から確認できる、貴重な資料といえる。今回はこの資料のデータの中から、過去の「ミリオンセラー」をグラフ化して内容を精査した記事を元に、「ミリオン認定」のグラフを生成することにした。

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雑誌やゲームソフト市場でも使われている言い回しでもあり、作家・出版元にとっては目標の一つでもある「ミリオンセラー」(100万本以上売れることを意味する)。先の記事では1989年以降 2009年までのデータをグラフ化したが、今世紀に入ってからミリオンセラーは急減し、2009年にいたってはシングル0・アルバム5・ダブルミリオン(200万枚以上)は1本という物悲しい結果となっていた。2009年までにおける動向は次の通り。

↑ 音楽CD・ミリオンセラーの推移(1989年-)など(作品数)
↑ 音楽CD・ミリオンセラーの推移(1989年-2009年)など(作品数)

一方、今回発表された「日本のレコード産業2011」からは「ミリオンセラー」という文言は一切消え、代わりに「ミリオン認定」という言葉が用いられている。これは販売数ではなく、「発売日からの累計正味出荷枚数が100万枚を超えた場合」かつ「会員各社からの申請に基づき」行われるもの(【説明ページ】)。当然「ミリオンセラー」と比べれば作品数は増加する。実際、「2011」には2001年以降のデータが記載されているが、去年の「2010」の「ミリオンセラー」一覧と比べると、多数の年で数が増加しているのが確認できる。

そこで今回は「ミリオンセラー」と「ミリオン認定」との間にはデータの連続性は無いものと見なし、掲載されている2001年以降のデータのみを使い、「ミリオン認定推移」をグラフ化する。

↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移など(作品数)
↑ 音楽CD・ミリオン認定の推移(2001年-2010年)など(作品数)

なお2010年は残念ながらダブルミリオンを記録する曲は登場しなかった。そしてシングルのミリオンは1本・アルバムは3本のみ。具体的には

●シングル
・Beginner(AKB48)

●アルバム
・VOCALIST(徳永英明)
・僕の見ている風景(嵐)
・いきものばかり-メンバーズBESTセレクション-(いきものがかり)

という次第。昨年同様大御所的な立ち位置の歌手・グループによる「手堅い」作品が多い。また「Beginner」(AKB48)は「選挙」との絡みをはじめとする様々な仕組みもあり、2007年8月に発売された「千の風になって」(秋川雅史)以来3年強ぶりのシングルミリオンとして認定されている。

他方有料音楽配信のミリオン認定は2010年分認定分は10本。購入までの手間的なハードルが低く価格も安く、場合によっては一人が何度も購入する場合もあること、さらには「着うた」「着うたフル」の双方でランクインしている曲名も複数(「Butterfly」「会いたくて 会いたくて」)確認できる。金額的な問題や端末上の仕様、利用用途など、多彩な条件下で好きなタイプを選べる点では、物理的なCD・DVDのような媒体より自由度は高く、その点でも門戸は広い。

なお詳しくは別所ですでに解説しているが、配信回数そのものはやや減少傾向にある(前年比マイナス7%)。携帯電話配信周りも安定期を迎えたということか、あるいは飛躍的に市場を活性化させる勢いを持たせる個人・グループが登場していないのかもしれない。一方インターネットダウンロードは配信回数を前年比で6%ほど上乗せしており、これからの動きに期待がかかる(もっとも配信種類数が多いので特定のタイトルがミリオンになる気配は無く、精々【初音ミクのアルバム「supercell」がゴールドディスク認定】で紹介したようにゴールド=10万回あたりに留まっている)。



2010年はアルバムのミリオン認定が減少、シングルは「Beginner」(AKB48)の1本のみという結果に終わっている。大勢としては変化は無く、すなわち1990年後半にピークを迎えたシングル、そしてアルバムCDのヒットセールスは漸減し、さらに21世紀に入ると趣味趣向の多様化や音楽配信メディアの多角化などが原因で、ミリオンセラー数は減少の一途をたどっている次第(「セラー」と「認定」間の連続性は無いので確定は出来ないが、確証度の高い推測としての話)。

かつて宇多田ヒカルの初アルバム『First Love』は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットを記録した。このような「超ヒットセラー」は、よほどのことが起きない限り二度と起きない(AKB48のようにさまざまな仕組みを凝らしても、ダブルミリオンには届かない)。エントロピーは得てして増大する方向に進むのであり、それを後押しする環境(情報伝達スピードの向上や情報検索・習得・蓄積手段の個人ベースへの拡散)が整備されつつある以上、趣味趣向もまた拡散するのが世の常だからだ。インターネットダウンロードタイトルが、種類が山ほどあるのと同時に、同一作品でまとまった数のセールスがなかなか出てこないのが好例といえる。

音楽供給の媒体がデジタルへの移行を続け、それと共に購入までのハードルが低くなり、「”ちょっと”気になったらすぐダウンロードで買おう」という行動が可能となった。皆が同じ曲に振り向き、我も彼も同じ曲を買い求めるという状況は、それこそ「銀河の歌姫」でも登場しない限り(映画も盛況だし、この表現はまだまだ有効、のはず)、いにしえの出来事として語り伝えられる昔話となってしまうのかもしれない。

なお、データの継続性という観点では2011年発行版から「ミリオンセラー」のデータ公開を止め、過去にさかのぼる形で「ミリオン認定」に差し替えた件については、疑問符を投げかけざるを得ない。出荷枚数は市場動向や予約など需要を基に判断されるため、需要数(=セールス)と大きな差異が生じることは考えにくいが、現実問題として2001年から2009年までのデータにおいては、「ミリオンセラー<<ミリオン認定」という年が複数年確認されている。なぜこのタイミングで表現方法を変えたのか、気になるところではある。

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