不景気にはデジタル化も勝てず…音楽CDと有料音楽配信の売上動向(2011年発表)

2011/04/06 06:57

日本レコード協会は2011年4月5日、「日本のレコード産業2011」を発表した(【発表リリース】)。同協会調査による2010年のレコード産業の概要を網羅した資料で、音楽業界の動向を多彩な面から確認できる、貴重な資料として注目すべきものといえる。今回はこの資料中のデータを元に、以前、音楽CDなどの売れ行きと有料音楽配信の売上をグラフ化し精査した記事で掲載した各種データを更新すると共に、2010年時点の動向を中心に再分析を行うことにする。

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まずは一番気になる「有料音楽配信」の2010年における結果だが、金額としては859億9000万円、前年比で-5.5%の減退を示した。データの公開を始めた2005年から今回の2010年目で6年目となるが、今年ではじめてマイナスの伸び率を示してしまうこととなった。周辺環境の状況(不景気・若年層の消費抑制傾向の加速化)などを考慮すれば、むしろわずかながらもプラスを見せた前年2009年分が奇跡だったと見た方が妥当。

さてこれを、音楽ソフト(CDなどの音楽レコード媒体にDVDなどの音楽ビデオを加えたもの)と有料音楽配信(ケータイとパソコンなど)の双方を合算した売上推移について見てみたのが次のグラフ。後者は2005年以降分のみデータが公開されていない(本格的に普及し始めたのがこの年からなので)ので、2005年から2010年までのデータを用いている。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(2005年-2010年)

2007年までは「音楽ソフトの売上減を有料音楽配信がカバーして余るほどだった」、言い換えれば「音楽業界そのものの売上は成長を続けており、CDなどの音楽ソフトの売上減は有料音楽配信にそのシェアを食われているからだ」と説明することができた。

ところが2008年に至り、有料音楽配信の成長は続いているものの、それ以上に音楽ソフトの売上減が急速に進んでおり、市場全体の売上も落ち込む結果となってしまった。2010年は有望株とされていた有料音楽配信ですら前年比でマイナスとなり、音楽業界全体が深刻な不調にあることをうかがわせる。ただし、有料音楽配信と比べ、音楽ソフトの縮退スピードが急な事に違いは無い(音楽ソフトの前年比は2010年でマイナス10.4%・有料音楽配信はマイナス5.5%)。市場全体の飽和感、不景気による可処分所得の減少を起因とする買い控え、音楽ソフトの購入層そのものの規模縮小など複数の要因が考えられるが、このデータからだけでは確定付けることは難しい。

ただし、音楽ソフトの中でも俗に言う「シングルCD(12センチCD)」は金額前年比で+10%の伸びを見せている。これは注目すべき動きと言えよう(もっとも、その分12センチCDアルバムは前年比-13%のため、CD全体、さらには音楽ソフト全体の売り上げを押し下げている)

「メディア移行期における変移」。この推測をある程度裏付けるのが次のグラフ。上記のグラフを1990年までさかのぼって再構築したもの。さらに有料音楽配信がデータ上に登場した2005年以降において、有料音楽配信と音楽ソフトの売上合計における両者の比率推移をグラフ化した。

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(1990年-)
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(1990年-)

↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の総計売上に対する比率推移
↑ 音楽ソフト・有料音楽配信の総計売上に対する比率推移

有料音楽配信のデータは2005年からなのでそれまでは音楽ソフトのみだが、2004年以前は有料音楽配信そのものが無きに等しい状態だったので、グラフ形成上問題は無い。【「最近ミリオンセラーって減ってない?」の「ミリオンセラー作品数」を仕切り直してみる】など過去のCD売上に関する記事でも述べているが、1990年代後半に音楽業界はピークを迎えており、それ以降は売上の面で漸減する傾向にあった。

携帯電話上の着メロがスタートしたのは1996年。ただし2004年以前は計測対象とならないほど売り上げが小さかったことや音質の問題から、1996年-2004年の間の音楽ソフトの減少が、デジタル有料音楽配信のみに起因するとは考えにくい。2005年からは計測上無視できないほど有料音楽配信が成長を見せ、音楽業界に救いの手を差し伸べた形になっているのが分かる。

また、音楽業界の金額ベースでの縮小の中でも、有料音楽配信が確実にその比率を高めているのも確認できる。2010年時点ですでに1/4近くがソフト部門において音楽配信で占められている。今後ぶれによる一時的な上下があったとしても、中期的に見れば有料音楽配信の比率がさらに漸増していくことは間違いない。



音楽ソフトの売上減少は著しいものがある。売上データの推移を見る限り、「音楽CD」から、「聴くだけならばiPodや携帯電話などによるデジタルメディアへ」「PV(プロモーションビデオ)のようなビジュアル付の音楽を楽しむならば音楽DVDへ」と、音楽の愉しみ方は二極化する傾向がある。

↑ 音楽ソフトの売り上げ推移(前年比)
↑ 音楽ソフトの売り上げ推移(前年比)

現在は移行先メディアへの乗り換えの遅延(旧来体制の縮小のスピードの速さと、それに代替する新体制の普及の遅さはどの業界・市場でも変わらない)、さらに不景気や主な購入層である若年層の節約性向の高まりのため、市場全体が縮小しているように見える。しかしその中で全体的な流れとして、音楽CDの減少分を有料音楽配信が少しでも支えようと奮戦する状況に変化は無い。

しかしながら前世紀末から見られた、少子化などによる「人口レベルでの市場縮小」は避けることが出来ない。【CD シングル・アルバムの購入枚数をグラフ化してみる】【着うたフル、中高生は50曲も保存中】などでも分かるように、購入枚数が少なめな中堅-高齢者にも受け入れられるようなマーケティングが業界に求められているのは言うまでも無い。

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