天候の回復で外出による買い物機会が増加…2011年2月景気動向指数は2か月ぶりの上昇、先行きは横ばいで推移

2011/03/09 12:00

内閣府は2011年3月8日、2011年2月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、現状は2か月ぶりに上昇した。先行き指数は先月から変わらず横ばいで推移した。基調判断は先月と変わらず「景気は、このところ持ち直しの動きがみられる」となった(【発表ページ】)。

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「良くなっている」「やや良くなっている」が増加
文中・グラフ中にある調査要件やDI値については今調査の記事一覧【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で説明している。そちらで確認のこと。

2011年2月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比プラス4.1ポイントの48.4。
 →2か月ぶりの増加。「良くなっている」「やや良くなっている」が増加、「悪くなっている」「やや悪くなっている」が減少。
 →家計においては天候の回復で外出による買い物機会が増えたことや、各種制度変更、終了による販売の落ち込みが収束しつつあることを受けて上昇。企業は原材料価格高騰などのマイナス要因はある一方、海外からの受注増を受けて上昇。雇用は増員に伴う求人の増加傾向があり、上昇した。
・先行き判断DIは先月比で変わらずの47.2。
 →年度末のエコポイント制度終了前における駆け込み需要への期待、求人の増加などで上昇。しかし原材料価格高騰への懸念が強く、企業でマイナス。
天候の回復による小売業の持ち直しや、制度終了に向けての駆け込み需要への期待が高まる一方、原材料価格高騰の状況がかなり厳しいレベルで影響しているのが分かる。

2003年パターンの再来か
それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
↑ 景気の現状判断DI

今回発表月分では全部門がプラスという、綺麗な動きを見せている。先月大きなマイナスを見せた「飲食関連」も今月はプラスとなり、天候の善し悪しが大きく影響することを改めて感じさせる。また、今回も雇用関係は標準値50を超えている状況。正規雇用ではなく非正規雇用でも満足してしまう割合が増えている感は否めない。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。主要指数の動向のうち、もっとも下ぶれしやすい雇用関連の指数の下がり方が分かりやすいよう、前回の下げの最下層時点の部分に赤線を追加している。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
↑ 2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

グラフを見ればお分かりのように、2008年後半以降いわゆる「リーマン・ショック」をきっかけに、各指標は直近過去における不景気時代(ITバブル崩壊)の水準を超えて下落。2008年12月前後で下落傾向が落ち着く状態となった。しかし2009年1月には横ばいに移行。その後多少の上昇を見せ、2月以降はもみ合いながら上昇が続いていた。今月は先月から転じ、大きな上昇が確認できる。この一、二年の「合計」の値を見ると、リーマンショック以降は本来の値の中間にあたる「50.0」を天井として、その下側の領域でもみ合いを続けているようだ。

雇用関係の数字は今回も大きくプラス。間もなく60に届きそうな勢い。他の値では小売関係が昨年7月に唯一50を超したのみだったが、今月「住宅関連」がぴったり50.0に達し、この部門での動きの良さを反映した形となった。雇用関連の動きの良さを見るにつけ、「もう少し身の回りの実体的な雇用情勢が改善されていてもいいのだが」と思わずにはいられない。

・2010年に入り、
下落から反転の傾向へ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
確認ずみ。
・合計のDIは現状においては
02-03年の不景気時代の
最悪期よりは良い状態。
・やや日差しが射してきた感。
・パターン的に
2003年後半以降の再来?
「前回(2001年-2002年)の景気後退による急落時には、家計や企業、雇用動向DIの下落にずれがあった。それに対し、今回の大幅な下落期(2007年後半-2008年中)では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」状態だったことはグラフの形から明確に判断できる。そしてその現象が「世界規模で一斉にフルスピードで景気が悪化した」状況で、互いの数字の下落度合いにズレる余裕すら与えられなかったことを表しているのは、これまでに説明した通り。連鎖反応的に襲い掛かった数々のマイナス要素が、多種多様な方面においていちどきに、連鎖的に悪影響を与えた状況が数字、そしてグラフにも表れている。その後の様子は直前で説明しているように、「水準値50にすら届かない下方圏でのもみ合い」が続いている状態。

また、雇用指数とその他の指数の差が大きくなる様子は、2003年後半以降の傾向をなぞっているようでもある。このパターンを踏襲するとなると、「現時点の」景気がしばらく継続することもありうる。

景気の先行き判断DIについては、先月と変わらない値で推移した。

景気の先行き判断DI
↑ 景気の先行き判断DI

現状指数がプラスで占められていたのに対し、先行きは家計の大部分がプラス、企業はマイナスとなり、企業のマイナス要因の大きな部分を占める「資源高」の影響が、感覚的には消費者にまだ浸透していない様子がうかがえる。ただし年度末のエコポイント絡みでの駆け込み需要を期待している割には、小売関係の上昇値が小さめなのが気になるところ。

2000年以降の先行き判断DIの推移
↑ 2000年以降の先行き判断DIの推移(前回不景気時の雇用関連の最下層に位置する赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに2008年後半の時点で、2001年後半時期(前回の不景気時期)における最下方と同等、あるいは下値に達していた。これはそれだけ先行きに対する不透明感が強かった、前例のない不安感を多くの人が実感していたことを示している(同時に株価同様に「半年-1年先を見通している」という先行指数そのものの意味をも裏付けている)。それ以降は横ばいか少しだけの上げで推移していたが、2008年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。株安や景気の悪化(「リーマン・ショック」)が、大きな不安感の中にある人々の心境を叩き落とし、家計や企業の先行き心理にマイナス影響を与えた状況が読みとれる。

今月は合計値は横ばい。雇用や家計と企業との間における、今後の思惑への違いが明確化される形となった。

「高安まちまち」
発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)(先行き・全国)に関して事例を挙げてみると、

■現状
・新車販売はエコカー購入補助金終了後の低迷から持ち直してきている。新型車投入の効果もあり、客の来店数及び成約数は増えている(乗用車販売店)。
・3か月前に比べると販売量は少ないものの、3月のエコポイント制度終了を前に、地デジ対応テレビへの購入意欲が高まり、動きが活発化している(家電量販店)。
・前月の大雪で客足は低迷したものの、天候も春らしくなってきて、春夏物ファッション、バレンタインギフトなどに動きが出ている(商店街)。
・中旬以降では天候が良くなり、雪解けとともに来客数が伸びている(百貨店)。
・来客数、客単価共に、食料品を中心に前年同月比で回復基調が続いており、底打ち感はある(スーパー)。
・必要な物しか買わないという買い控え傾向がまだ鮮明に出ている(スーパー)。
・住宅展示場への来場者数は、総じて回復した(住宅販売会社)。
・年度末を控えて携帯電話各社が顧客獲得に動いているほか、スマートフォンによって市場が刺激されている。ただし、在庫不足で販売機会を逃す場面も多い(通信会社)。
・今月は客の動きが悪く、特に夜間の動きが悪くなっている(タクシー運転手)。
・口蹄疫の発生以降、鳥インフルエンザ、そして火山の噴火と相まって、中心街への客の流入が非常に減っている(百貨店)。

■先行き
・エコカー購入補助金終了から5か月余り経ち、反動の影響は縮小していく(乗用車販売店)。
・天候に左右されるなど安定感はないものの、右肩上がりになりつつあるため、先行きはやや良くなる(百貨店)。
・3月末のエコポイント終了前の駆け込み需要が期待できる(家電量販店)。
・身の回り品については、消費マインドが確実に上向いている(百貨店)。
・今後、コーヒーや小麦粉、油等の原材料価格の上昇が予想され、一時的な特需はあっても、その後は客の買上点数が減るなど影響が出てくる(スーパー)。
・中東情勢悪化やニュージーランド南部地震の影響、また、航空燃油サーチャージの上昇の影響により、海外行きを控える傾向になる恐れがある(旅行代理店)。
などとなっている。一部で回復の兆しを見せる、あるいは底打ち感的な動きがある一方、消費者の買い控え傾向が継続していることへの懸念、先が見える回復であることへの指摘、資源高や世界情勢を懸念する動きなど、本格的な回復と判断するには材料がまだ不足している状況であることが見て取れる。株価動向で例えれば「高安まちまち」というところか。




金融危機による市況悪化で
景気感は一挙に急降下。
耐久消費財の値上げや雇用喪失など
実体経済への傷も深い。
海外の不景気化も影響し、
外需中心の企業も大きな痛手。
内需中心の企業にも波及する。
「底打ち感」による「回復の兆し」も
見られたが、国内外に多発する
不安要素がまん延、拡散。
デフレ感は継続中。
景気底上げ対策も
次々打ち切られ・縮小。
再び回復の兆しは見られるが…。
一連の「景気ウォッチャー調査」に関する記事中でも繰り返し指摘しているが、今回の景気悪化(と復調)は、2001年から2003年にわたった「景気悪化」と「その後の回復・横ばい」パターンを踏襲するように見えていた。基本的に現在も2003年中盤以降のパターン「雇用指数がやや上側に位置し、その下に企業・家計指数がもみ合いながら展開する」を踏襲する予想に変わりはない。特に現状指数において、雇用関連と他の値に明らかな「かい離」が見え始め、2003年後半以降と似たような状況になりつつある。

だが同時にこの数か月言及しているように、アノマリー(パターン・経験則)的な動向を形成する「見えない力」(いわゆる「神の見えざる手」)を打ち消すほどの「マイナス」の力が働く状況を、現実として認める必要がある。かろうじて今回分では「現状の住宅関連」も50に達したが、全体的な数字の回復力が足りない。全体値が50に届くには今一つの雰囲気。

よって2003年以降の「企業・家計指数が50前後を行き来する」パターンではなく、そこから全数値がやや下に下がった状態、すなわち本来「平均値」を示す50を天井・上限とし、マイナス圏でのもみ合い、あるいはさらなる下落の動きが継続する可能性は高い。円高は続き、原油価格の高騰で灯油価格の値上げも気になり始め(しかも現状ですら、円高に救われている)、効果のある景気抑揚策は確認できない。

とりわけ原油をはじめとする資源価格の高騰は、じわじわと市民生活に影響を及ぼしはじめている(ガソリン価格の上昇は個人ベースでの自動車運転のランニングコストを跳ねあげるだけでなく、輸送費の上昇で物流コストのアップ、そして小売商品の価格値上げにもつながる)。

これから年度末にかけての駆け込みラッシュが過ぎた後、来年度の動向が気になるところだ。

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